こよい はるかさんのリレー小説、第六話!⚠︎七話を執筆される方しか読まないでください⚠︎
カフェオレ
第六話
その後、私は
今までの全てが壊れるのが怖かった。そして二人を忘れたかった。だから私は星夜に逃げた。
遊ばれていてもいい。そう思っていた。しかし、私たちは会って談笑する以上の関係になることはなかった。もし星夜から今以上の関係を迫られても私は決して応じないだろう。
越えてはいけない一線。それを越えるのが怖かった。
幼馴染の関係が壊れるのも怖い。しかし、まるきりそれから逃げて変わってしまうことも出来ない。
星夜にとって私は数いる女の一人だから、さして興味はないのか今以上の関係を迫られることはない。
いや、きっと彼も怖いんだ。人気者ゆえの重圧、しがらみ。それから逃れるために私や私のような女の子に声をかけるのだろう。でも、それで今の人気を失うなんてことも考えられないのだ。
怖がりの意気地なし同士がみっともなく慰め合っている。私たちの密会にはそんな不健全な居心地の良さがあった。
そして気付いたら一学期の中間テストが終わり、夏の到来を感じる季節になっていた。依然として私たち幼馴染は自然と距離を取り、私は星夜との密会に時間を割いていた。
これでいい、今はこうしていたい、そう思っていた。あの真実を知るまでは。
*
その日の放課後、私はいつもとは違い教室で一人窓の外を眺めていた。
加奈と海とはギクシャクしたままで、最近は星夜にも会えていない。だからといって家で一人悶々としているのも嫌だった。
ボーッと外を眺めていると、向かい側の校舎の図書室に二人の人影を見つけた。加奈と海だ。
二人で勉強でもしているのか、向かい合う席でひたすらノートに目を落としていた。なんて健全な光景だろう、そう思った。
海を見つめている私。でも海が考えているのは
ふと、加奈の方を見る。ああ、加奈も海を見ている。
「二人と一緒じゃなくていいのかい?」
突然背後からそう声をかけられた。
「
いつから居たのだろうか。そこには
「どうしてここに?」
「いや、なんとなく校舎内をぶらぶらしてたら、
図星だった。今この瞬間、私にはあの二人が羨ましくて堪らなかった。
「お、
「私には無理です。あんな眩しい光景私には似合わない」
自嘲気味に私は言った。
「須川さんらしくないな。津布楽さん程とは言わないまでも、君はもっと明るい人だろ?」
「明るくなんてないです。私ふしだらな女なんです」
「そうかな? ふしだらというには君は潔癖過ぎるくらいだと思うけど」
悪戯っぽい、やや馬鹿にしたような笑い方。しかしどこか違和感を覚えるような言い方。
やっぱりこの人、私と星夜のことを知っている。当然といえば当然だ。だって——
「先輩……私たちのこと知ってるんですか?」
矢崎先輩はこくり、と頷く。
「あの時、見てたんですね」
公園のベンチで目覚めた朝、星夜の隣で微睡みながら見た人影。あれは矢崎先輩だったのだ。
そうなると星夜とのあのドラマチックな出会いにも疑いが出てくる。出来過ぎた演出。そして——
「教えて下さい。星夜が私を見つけたのは偶然なんですか?」
矢崎先輩は少し考える様子を見せたが観念したように答えた。
「いや、違うよ。俺はあいつが心配だったから探してただけなんだ。ライブ終わりは結構メンタルに来るらしいからさ。そしたら君と一緒にいるとこを見てしまったわけさ。だから君と星夜の出会いは本当に偶然だよ。俺に君を騙す道理はない」
何も仕組まれた出会いではなかった。私は少し安堵したと同時にやや落胆した。
「そうですか。なんだ、本当にこんな出会いあるんだ。騙されてたなら私、気味悪くてあの二人の元にしれっと戻れたのに」
「まだ遅くはないよ。まあそれは君次第だけど」
矢崎先輩の口調がやや厳しくなる。
「言わせてもらうけど、あいつはいいやつかもしれない。でも君は何も知らないだろ? 星夜のこと」
「ええ確かに。私は星夜のこと全然知りません。彼の表面上の言葉や何気ない仕草で馬鹿みたいにはしゃいでる」
私はもう一度窓の外を向く。加奈と海は相変わらず向かい合い、目も合わせずノートと参考書に目を落としている。
「ただ一つ。私は知っていることがあります」
「へえ」
白々しい先輩の返事。
そう私は知っている。この真実があったから私は星夜との出会いに疑問を抱いた。でも、それは違った。私たちの出会いは運命的なものだった。
「
こよい はるかさんのリレー小説、第六話!⚠︎七話を執筆される方しか読まないでください⚠︎ カフェオレ @cafe443
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