第2話『雑貨屋さん』
僕が泣き止むと時計は16時25分。
「そろそろお母さんも帰ってくる頃かな」
「うん、僕帰るね。ジュースご馳走様でした。」
「また明日、気を付けてお帰り。」
僕は扉を開けて家に向かう。夕方でもまだ陽は高くアスファルトを熱している。
曲がり角曲がると家が見えてくる、勘のいい犬のチョロがクーンと甘えた声を玄関越しに聞かせてくれる。
僕にとっては嬉しくもあり、寂しくさせて申し訳ないって気持ちが入り混じった感情を抱く。
玄関を開けると取れるんじゃいかと思うほど尻尾を振って出迎えてくれる。
「ただいま、チョロ」
足に纏わりついてくれるチョロを愛おしく感じながら重たい黒い鞄を定位置へ降ろす。宿題を取り出し学習机の上に置く、母が読む学校からのお便りはダイニングテーブルに置いて、うがいと手洗いを済ませる。
戸棚に入った今日のおやつとコップに牛乳を注いでダイニングテーブルに置く。
「いただきます」
今日のおやつはカステラだった、甘すぎるからチョロには一口だけおすそ分けして。
ダイニングテーブルの上にはハンバーグ。僕の夕飯だ。それにサラダと鍋にはスープが入っているようだ。炊飯器のお米は19時に炊き上がるらしい。
そう置手紙に書かれている。
「まだ、短い針が5だからまだご飯は炊けないか」
宿題をするために学習机に向かう、今日は国語に算数もある。
「算数難しい・・・10-4は・・・」指折り数え答えを導く。
算数のプリントを終え国語のプリントを出す。まだ上手に描けないが一生懸命、丁寧に書きプリントが終わる。
「明日の準備もしなきゃ、明日の時間割は・・・」
時間割表を見ながら必要な教科書を鞄に詰める。
宿題と明日の準備を終え、リビングに行きテレビを点ける。
内容は面白い訳ではないが、静まり返ったリビングに一人でいると無性に寂しさを感じる時がある。内容よりも音が家の中に響くことで寂しさが和らぐ。
テレビを見ている隣で寄り添うチョロの耳がピクッと動き顔を上げる。
玄関の方角に顔を向け立ち上がり尻尾を振り回す。
リビングの扉が開く。
「ただいまー」
母親が帰ってきたようでチョロが勢いよく駆け寄る。
「おかえりー」
僕も駆け寄ると母は僕を抱き寄せる。
この時間がたまらなく好きで、愛されている事を確認できる。
その後は母がご飯の炊きあがりを待って食事の準備をする。
ご飯が炊けたころ父が帰ってきた。
父に宿題を終えた事を伝えると僕を抱きかかえ偉いぞと褒めてくれる。
父の着替えが終わり皆で食事をとる。
学校はどうだった、友達と何をして遊んだのか、授業はどうか等、聞かれた事に素直に答えることが出来ず僕は嘘をつく。
同級生がやっていた遊びを自分も参加していたかのように話す。
同級生が話していた内容を自分も参加していたかのように話す。
同級生がしていた発言を自分がした発言かのように話す。
こうして僕は親に心配させないように笑顔を作る。
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