同級生の双子の姉は俺の元カノ
四ノ崎ゆーう
第一章 双子の姉妹と俺の立ち位置
プロローグ
「瀬尾君。私は君が好きです。付き合って下さい!」
その彼女の言葉が、俺にとって人生初めて受けた告白になる。
それは遡ること数週間前のこと。俺はラブレターを受け取った。いや、入っていたと言ったほうがいいかもしれない。だって、そのラブレターは下駄箱に入っていたのだから。
今どき、下駄箱にラブレターが入っている、なんて青春ドラマかラブコメでしか見ない、と思っていたけど、現実に起こった。
まさかと思い、宛先人を二度、三度と確認した程。
しっかり俺宛ということがわかり、内容を見る。
そこには“放課後、屋上に来てください”の一文のみ。しかも宛先人は不明だったのだ。
でも、大体予想はついていた。何故なら、始業式から俺と喋った女子は二人しかいないからだ。一年生の時は?と言ってもラブレターを受け取るほど深く関わった女子はいない。
放課後。ラブレター通りに屋上へ行くと、俺の予想通りの人物が。
彼女とはクラスが同じ。でも、出会って数週間しか関わっていないのだ。
だけど、彼女が本気で俺を想ってくれているならば、その気持ちに答えたい。これから君を知っていきたい。そう思って俺はオッケーを出した。
俺に人生初の彼女が出来た。だが、今となってはそれも過去形。
俺が彼女を作るなんてまだ早かった話だったのだろうか。
彼女とは二ヶ月も付き合わなかった。別れた理由もはっきりしていない。
一体どうしたと言うのだろうか――。
そんな俺と彼女の出会いは高校二年生の始業式。
四月の上旬。俺、
クラスは中の下と言ったところだろうか。悪くはないが良くもない。仲の良かった友達は全員離れた。
これがクラス替え……。
でも、速攻友達が出来た。しかも女子の。
「やぁ。君とは初めましてだね。私は君を全く知らないよ」
隣の席の
確かに神崎さんと同じクラスになるのは初めてだし、去年関わった記憶もない。それは神崎さんもわかってるはず、なのに、何故そんな当たり前のことを聞いてくるのだろうと思いつつ、俺は会話が成立するように返事を返す。
「そうだな。俺も神崎さんとは初めましてだ」
「お、早速名字で呼んでくれるとはー」
「どこに感心してるんだよ……」
「だってー、去年も同じように隣の席の男子に話しかけたらさー『そりゃな。今日入学してきたばっかだし。お前とは初対面だ』って返されてさ。名字なんて呼んでもらえなかったんだよ」
「あ、そうですか……」
これは神崎さんにとって毎年恒例みたいなところがあるのか? 初対面の人に話しかけれる精神があるのはいいことだけどもうちょい普通に話かけた方がいいんじゃないかなと思った。
「それじゃっ! これから一年間よろしくね。瀬尾君!」
「ああ、よろしく」
神崎さんは明るくて喋りやすい人だった。
誰にでも明るく接するその態度はまさに天使とクラスの男子が言っていたが、よくわからん。そんな感じの神崎さんだ、すぐにクラスの人気者になるだろうな。
「じゃあ、今日はこれで終わりだ。明日は委員会とか係をさくっと決めちゃうからな」
「委員会かー……何に入ろうかな……」
そんな神崎さんの独り言が左隣から聞こえてくる。
終礼が終わると、カバンに二年生の教科書類やプリントをしまい、カバンを閉める。
「じゃねっ。瀬尾君」
俺より少し早く準備し終わった神崎さんが別れの挨拶をしてくれる。
「また明日な」
そう返すと神崎さんはニコッと笑って教室を出て行った。
これで、二年生初日は終了した。
翌日。今日もまた午前授業である。授業も本格的に始まらない二年生二日目は二時間目から四時間目まで学級活動で埋まっていた。昨日言っていた通り、委員会と係決めだ。
「よし。早速決めていくぞー。まずは学代からだ。学代決まったら後は任せる!」
結構投げやりなところがあるのかも知れないな、この先生。ちなみに、ここの高校にある委員会は、学級代表、環境、風紀、図書、広報の5つだ。
そして、俺は委員会に入ろうなんぞ一切思っていない。
入るとしても絶対学級代表以外だな。なぜなら、めんどくさいから。それ以外に理由などないだろう。それに、さっき先生が言ってたみたいに全て学級代表に任されてしまう。そんなめんどくさいことはしたくない。入っても図書委員だ。
というわけで、委員会に入りたくない俺は気配を消すため静かに読書に勤しもうかな。
「はい!」
「お、神崎やってくれるのか。他にやるやついないか?」
なんと、神崎さんはそういうめんどくさい委員会でも入ってしまう人だった。さすがは神崎さんと言ったところだろうか。
「男子からも一人出てほしいんだが……。この調子じゃ出なさそうだな。よし、推薦で行こう。相応しいと思うやつの名前上げてけー」
最悪の事態だ。推薦……。何故そんな下手すれば俺も当たる可能性がある選び方をするんだ。
「え、推薦でも出ないの……?」
推薦でも誰も出ないことに先生も戸惑い始めた。
「先生、私が推薦してもいいですか?」
「ああ。別にいいぞ」
神崎さんの声。自分のパートナーになる相手なんだし自分で選ぶのが一番か。
「じゃあー、瀬尾君で!」
お、瀬尾かー。推薦されるなんて気の毒に。頑張れよ〜。
……。あれ? 瀬尾って、俺じゃね……?
「瀬尾か。いいじゃないか。やってくれるか?」
「え、あ……はい……」
ちょっと周りの視線と圧が感じられたから断り切れなかった……。
「じゃあ、瀬尾も前へ来てくれ」
「はい……」
前に出ていくと神崎さんがニッコニコだった。それはもうわかりやすい程に……。
「よろしくねっ!」
「あ、うん……。よろしく」
「じゃあ次に環境委員会を決めていきまーす。やる人挙手してください――」
その後は各委員を決め、係を決めた。やっぱりなかなか挙手してくれないものだな、こういうのは。
“キーンコーンカーンコーン”
「とりあえず全て決まったな。学代の二人、ありがとな」
委員会決めは二時間で終わってしまった。まぁ、これは計画通りということで、このあとの二時間は進級したことにより資料を新しく書き直さないといけないやつがあるらしい。それを書くんだとか。
「なー、神崎さん?」
「ん? どしたの?」
「何で俺を学代に推薦したんだよ」
俺を学代に推薦した理由が気になったので神崎さんに聞いてみた。
「んっとねぇー。このクラスで喋ったことのある男子が君しかいなかったから」
「推薦理由結構雑かった……」
「あのまま誰かが推薦してくれるの待っても良かったんだけどね。早く決めたかったからさ。私が推薦しようと思ってー」
つまり適当というわけか。特に深い理由もないと。そりゃ、昨日出会ったばっかの俺がどんな奴かとか知らないか。
「でもね、よくよく考えたら推薦できるような男子、瀬尾君しかいなかったからー。瀬尾君を推薦したの」
「まぁ、委員会決めってそういうもんか」
自らやりたいって言う人と選ばれて入る人がいる。
「ということで、頑張ろうね瀬尾君」
「ああ。しっかりやらせてもらうよ」
そして始まった俺と神崎さんの関係。たぶん何もしなければ絶対に関わることのない美少女。
俺は、今後絶対に何かあると、直感でそう感じた。
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