第13話・圭くん

転校生、関 圭(かん けい)は、その明るく気さくな性格で、あっという間にクラスの人気者になっていた。


男子生徒1「圭、放課後、俺んち来いよ」

圭「必ず行くよ」

男子生徒2「俺達も行くよ、皆でゲームやろうぜ」


男子生徒達は、毎日圭を誘って遊んだ。


女子生徒1「圭くん、これ家庭科で、わたし達が作ったのよ」

女子生徒2「食べてよ」

圭「ありがとう」


女子生徒も、家庭科の授業で作ったケーキなどを圭に持って来た。


男子生徒3「圭!俺の愛を受け取ってくれ!」

圭「い…いや…それは……アハハハ…」

男子生徒4「圭、宿題やった?」

圭「実は、まだなんだよ」

男子生徒5「じゃあ、俺のを見せてあげるよ」


廊下を歩いていても、常に誰かと一緒にいた。


津奈「中川さん!ちょっと!中川さん!!」


圭がクラスメイト達と、仲良く戯れる光景を見つめる律子を、圭の双子の姉である同じく転校生の福座 津奈(ふくざ つな)が話しかけた。


律子「え?なに?福座さん??」

津奈「ずっと呼んでるのに、圭のほうばかり見て…好きなの?」

律子「べ…別に…好きとか嫌いとかじゃなくて…圭くんは転校したてなのに友達が多いなって……」

津奈「アイツは、取り入るのが上手なだけ、いつも天然で女子にもスカした事を言うし、間に受けちゃダメよ」


津奈は、双子の弟に対して辛辣な評価をしていた。


律子「じゃあ、福座さんも友達多いの?圭くんのお姉さんでしょう?」

津奈「わたしは、そう言うのパス、わずらわしいだけだしね」

律子「転校したてなのに、寂しくないの?」

津奈「今は隣に、中川さんがいるから充分よ」


律子は思った…。


律子(そ…それって…友達は…わたし一人で充分って事?」


律子の顔はみるみる赤くなった。


津奈「ちょっと!?顔が真っ赤!!大丈夫!!??」

律子「だ…大丈夫……」


そして、その日の放課後……。

珍しく一人で帰る律子を、校門で圭が呼び止めた。


圭「あっ!?丁度良かった。一緒に帰ろうよ?」

律子「え?圭くん??」


圭は一人で勝手にペラペラと喋りつつも、自分はさりげなく車道側を歩き、律子への気遣いも見せていたので、律子は思った。


律子(圭くん、意外と紳士的じゃない?)


圭「ところで、いつもの二人はどうしたの?」

律子「ミナは委員会で、安田さんは部活だよ」

律子「わたしなんかより、福座さんと帰ればいいのに」

圭「それがさ~聞いてよ、津奈ったら酷いんだよ」

律子「なにが?」

圭「ぼくが一緒だとウザいし、面倒くさいし、顔が似てるのが恥ずかしいから、一人で帰れって言うんだよ!!」

律子「ま…まあ、双子だもん似てるよね…」


圭は、落ち込んだ。


圭「血を分けた姉弟なのに、寂し過ぎるよ……」

律子「え…えっと…つまり…」

圭「僕には、この寂しさを埋める存在が必要なんだよ」

律子「な…なんですって!?」


律子は憤慨した。自分が寂しさを埋める為の道具だと思われたからだ…。


律子「わたしは、圭くんの寂しさを埋めるだけの存在!!??」


律子の叫びに、周囲の下校中の女生徒達が注目した。


下校中女生徒1「ねえ…あの二人の会話、ヤバくない?」

下校中女生徒2「あの子、利用されてるのね……」

下校中女生徒3「修羅場よ!修羅場!!」


その律子の問いに、圭は答えた。


圭「いや~可愛いね、ぼく大好きだよ」

律子(え??可愛い??大好きって…わたしの事??)


律子の顔はみるみる赤くなったが、次の瞬間冷めた。


猫「ニャ~」

圭「アハハ、猫って可愛いよね?ぼく大好きなんだよ」


圭は、塀の上にいる猫を撫で始めた。


律子「そっちね…でも圭くん…福座さんは、きっと…圭くんのそう言うところが、嫌なんじゃない?…」


律子は、猫に夢中な圭を置いて静かに下校した……。

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