第4話 神様への贈り物

ーーー“コキュートス”ーーー

「すっごーい!海が全部凍ったよ!」

「凍ったというより固まったんだよ」

「これって滑れる??」

「ちょっと待って、スケート靴出すね」


かつて全世界を恐怖に陥れた技で、私たちは海を固めて遊んでいた

明日はショッピングモールの開店日

だから今日はその前祝い!

「きゃぁっ」

「ココちゃん!大丈夫?」

「うぅ、やっぱり上手く滑れないや

ラファちゃんはよく滑れるね、それも神様の力?」

「うーん、日頃から空飛んでるからバランス感覚が鍛えられてるのかも!いえーい!」

「あぁーー待って!ラファちゃん!」

ついはしゃいじゃって遠くに行った私を、ココちゃんはむくっとした顔で待っていた

「ごめんなさい……」

「もー!ラファちゃん今日の目的忘れたの?」

「えっと、そうだよね!

力の調節の練習をしなきゃ、、」

「じゃあ私遊んでくるね!!」


力の調節の練習が終わると、もうココちゃんはスケートができるようになっていた

「ココちゃん運動神経いいね」

「そうかな、昔よく家族の手伝いしてたからかな」

「そっか……」

「そんなに悲しまないでよ、今はラファちゃんが私の家族だよ!」

「ココちゃん、、」

「もうしっかりしてよ!ラファお姉ちゃん!」

「だから私の方が年下だってば!」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

神の誕生による大災害

巨大地震や大津波、火山の噴火によって世界人口は70億人から10億人まで減少した

私の力でそれらの自然現象を食い止めたとしても、人口減少の影響は計り知れない


「では最後に我らが神、ラファエル様からの御言葉です!」

超大型ショッピングモールの開店記念セレモニー

人々の生命線となるこの施設には、一日数万人の人が来店する

それだけ多くの人が生活に困っている


「本日はセレモニーに来ていただき、ありがとうございます。

…私はまだまだ未熟な神様です。でも、、それでも私は皆さんを幸せにしたい!それが私の夢です!

このショッピングモールが多くの人の助けになればいいなと思います。」

食べ物に困ってる人、住む家に困ってる人

それらの人を全部助けたい、それが私の夢


「しばらくの間、、人類が復興するまでは私がこのショッピングモールの全商品を補充します。

在庫切れはありません!だから自分の欲しいものを好きなだけ選んでください!それが私からみんなへのお詫びです。」

人口が増えるまでは働く人が足りず、食糧や工業製品の生産が難しい

私がやるのは人口が増えるまでの繋ぎ



観客席にて……

「ふぅ、よかった〜終わったよ〜」

「みんな拍手してくれてるよ!ラファちゃん!」

「うん!」

「じゃあお店の中入ろう!わたし早く入りたい!」

「あ、待って!ココちゃん!」

ステージに上がっていた私の幻が退場すると、ショッピングモールの入り口が開かれた

順番に入っていく人々、そんな人達を横目に私と私の親友は一直線にショッピングモールの中に入った

私達はお忍びで遊びに来ている


「本当にみんなわたし達に気づいてないんだ

うわぁ、壁も通り抜けられるよ!これすごいね!」

「よかった、喜んでくれて!」

私の力は世界を司る力

物体の位相をずらして透明にしたり、透過させたりもできる

まぁこれもココちゃんが思い付いたんだけど…


「ココちゃんどこ行きたい?」

「うーん、お洋服が見たいなぁ」

「じゃあ2階に行こ!」


2階の服売り場に来ると、開店直後なのにもう多くの人が集まっていた

これまで食べ物ばっか支援してきたけど、住む場所、着る服、全部欠けてはいけないものなんだ

「ここ子供用の服あるって!入ろう!!」

「うん!」

「ここランドセルも売ってるんだね」

「そういえば、ココちゃんもうすぐ6歳になるね」

「あ、そっか…ねぇ!見てラファちゃん!

このお洋服とか可愛くない??」


今年で5歳になったココちゃんは体も大きくなり、着れる服の種類も多くなっていた

いろんな色の服を見た後、気に入った服は私が創造してココちゃんにプレゼントした

「ラファちゃんの服も選んでいい?」

「え!?でも…私似合うかな…」

「似合うよ!ちょっと待って!これとかどうかな」

ココちゃんはすぐに白いワンピースを持ってきた

最初から私にプレゼントするつもりだったらしい…

「ラファちゃん黒髪だし、肌も白いし

絶対この服似合うよ!着てみて!!」

「え!ここで着るの!?恥ずかしいよーーー」

「なんでよ…自分の力で見えなくしてるんじゃ…」

「そうだけど!でも〜〜」

無理矢理ココちゃんに着せられて、私達はそのまま店を出た

「それこの前の誕生日のお返しね」

「うぅ、ありがとう 似合ってるかな?」

「うん!すっごく可愛いよ!!」

その後、映画館や本屋さんを回り、私達は屋上へと向かった

今日下界…ここに来た一番の目的は…

「できるかな……」

「大丈夫だよ、いっぱい練習したでしょ」

「でもミスしたらまたみんなに迷惑を……」

「ラファちゃんがやらないとたくさんの人が死ぬよ

それに今度はわたしがついてる!!平気だよ!」

いつも明るく励ましてくれるココちゃんはとても眩しくて、もしあの日ココちゃんと出会わなかったら私はきっと全部諦めていた

ココちゃんは私にとっての道標

だから頑張れる!できる!

もう一度、、世界を固定する!


ーーー“コキュートス”ーーー


それはかつて世界を恐怖させた技

あの時は全人類を不死身にして、みんなを怖がらせて、いっぱい迷惑をかけて、たくさん傷つけた

でも今度は…ちがう

これからはもう誰も傷つけさせない!


「ふぅ……このまま固定させるよ」

「がんばれ!ラファちゃん!」

「うん、、絶対死なせない、、」

私はなんでも作れるけど、人間だけは作れない

医者がいなければ、たとえ病院や医療機器がいくらあったとしても無意味

だから医療体制が整うまでは、私がみんなを守る

病気の進行のみを“現在”の状態で固定する

外傷やすでに意識不明の人達に効果ないけど、少しでもみんなの助けになれば!!


「よし!できた!できたよ!!ココちゃん!!」

「やったーーイェーイ」

「イェーイ!」

私達はハイタッチをした後、そのまま帰路についた





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから数ヶ月後

「新しい国?」

「ラファエル様がお作りになった町には現在多くの人が集まり、経済も少しずつ発展してきています」

「うん、お医者さんの方はまだまだだけどね…」

「はい、そのためヨーロッパやアフリカ各国が一つとなって、新しい国を作ろうという計画があるのです。そしてその長として、、」

「え?もしかして………」

「ラファエル様の想いが皆に伝わったのですよ

ヨーロッパとアフリカの全ての国をまとめ上げれるのはラファエル様だけです」

国境がなくなれば、人の移動はもっと自由になる

もっと効率よく、もっと多くの人が病院を利用できるようになる


そうして世界は二つの大国に分けられた

私を頂点とする「神の国」

今もなお、私の力を拒否し続けているアメリカ

通称「人の国」




「すごい、ラファちゃん国のトップになっちゃった

でもこれでお医者さんの問題も解決だね!」

「うん!……次は学校だね」

「学校か、、わたしも行くのかな」

「行きたくないの?」

「ラファちゃんは行きたい?」

「うーん、私はちょっと興味あるかな…」

私とココちゃんは2歳差

つまり2年間は離ればなれになってしまう…


「じゃあ一緒に行こうよ!」

「え!?」

「ダメ…かな…?」

珍しく不安そうな目でココちゃんは私を見つめた

いいのかな、ううん、いいよね

これぐらいの嘘ならいいよね……

「ダメじゃないよ、私も一緒に行きたい!」

「ほんとに!!」

「うん!じゃあ最初に作るのは孤児専用の学校だね

ココちゃんと一緒に行くの楽しみだなぁ」

「やったーー!あ、あとね!ラファちゃん!

お誕生日おめでとう!!はいプレゼント!」

「えぇぇ!?!?」

綺麗な花で作られた小さな髪飾り

私の知らない所でこんなの作ってたなんて、、

「ありがとう、、うぅぅ」

「ラファちゃん!?」

「もう、、嬉しいこといっぱいありすぎて、、」

「ふふっ、喜んでくれてよかった!!

じゃあ明日のわたしの誕生日はよろしくね」

「うん!もちろん!」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私が作った国、「神の国」

その首都はイギリスにあった

そしてそこに建てられた大きな建物

私が作った小中高一貫の学校だ

今日はこの学校に入学する孤児を選定する日

生活環境が悪く、今すぐ保護しなければならない子

近くの大人に頼れずに孤立してしまった子

優先的に入学させるべき子どもを選んでいく

選ばれなかった人も、近いうちに作る2校目の学校に入学させる予定だ


「いかがでしょうか、ラファエル様!」

「うーん(私達の名前がない…)」

「一応まだ数人のスペースはありますが」

「じゃあ……この2人を入れましょう」

「ラファとココ…確かにまだ幼いので優先的に入学させるべきですが、、身分が、、」

応募者の中にはいたずらや重複応募、酷いとスパイもいるかもしれない

入学してくる子どもの安全を考えれば、身分の確認はとても大切だ

「身分は今確認しました(というか私だし)」

「は!ではそのようにしておきます!」

「あ、あとその2人姉妹みたいだから、同じクラスにあげて」

「はっ!」

本来ならココちゃんはともかく、私は入学できない

だって私は神様だし、、別に困ってないから、、

私の席はもっと困っている子どもに渡すべきだ


「これでいいんだよね…」


今まで頑張ってきたから、これは私自身への贈り物

ちょっとぐらい…いいよね…

私は神様だからバチなんて当たらないよね……







そして物語は大きく動き出す

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神々が紡ぐ物語 あいな @amano-aina

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