究極の選択でした。
お休みも終わり、文化祭の余韻もありつつ。今週末に開催されるアンサンブルコンテストの校内審査に心がすっかり向いている長女。楽器を持ち帰ってきて、一生懸命にお手入れしていました。
子どもの切り替え能力は半端ない! 先週末。文化祭で盛り上がっていた娘たちですが、吹奏楽界隈では、全国大会が開催され、XなどのSNSは大盛り上がりです。全国大会はレベル高すぎて。票割れするらしく、素晴らしい演奏でも金がもらえなかった学校もいたようですね。かなり色々な意見が飛び交っていました。
音楽は難しいよう。数値化できない部分もあって、審査員の方々も頭痛いことでしょう。毎年、文化祭と全国大会が被るんです。来年、もし、もし全国に行けたら。文化祭は欠席になるんでしょうね。ああ、どうなるんだろう。
そんな週末でしたけれども、金曜日の朝。訃報が飛び込んできました。20年以上、一緒に歌ってきた仲間、Oさんが亡くなった——というものでした。
木曜日は仕事でシンポジウムのシンポジニストを引き受けていたもので、今週は本当に頭が疲弊していた一週間。シンポジウムの資料を事務局に送ったつもりが職場に送っていたり、違う資料を送ってみたり。自分でも「どうした、どうした」案件が続いていた一週間でしたから。突然の訃報を聞いて、一瞬頭がフリーズしてしまったようです。
実は、私が所属している合唱団。ご高齢化しておりまして、新型コロナウイルス感染症が始まってから、活動が休止状態でした。しかし、今年。指揮者の先生がお母さん合唱団も指導していまして、そちらの団体が50周年記念演奏会をするとのこと。そこに、助っ人で参加することになり、女性だけ練習再開ということになりました。
半年前、練習再開した日。嬉しい気持ちで足を運びますと、Oさんがいたんです。男性なのにね。間違ってきちゃったのかなって思いました。Oさんは腰から尿のパックを下げていました。「ああ、大病したのかしら」と思いましたが、なんだか面倒な気持ちが先だって、ご挨拶もせずに練習に入りました。
Oさんは、私よりも30歳以上年上の男性でした。指揮者の先生の教え子らしく、楽譜もあまり読めない方でしたが、練習には休まず来ているおじさんでした。独身でね、少々乱暴なところもあり、キーボードなんかを雑に扱うので、女性陣からはあまり好かれていなかったようです。
当時20歳くらいだった私は、そのおじさんによく話しかけられて、なんだか面倒だなって思っていました。今だったらなんとも思いませんけど。まだ私だってかわいらしい女子だったんですから。50歳を超えたおっさんに、いろいろと話かけられると、ちょっと迷惑だなって思うのは当然だったかもしれません。
歌があんまり上手じゃなくてね。先生も苦笑い。けれども、誰よりも早くきて会場を開けてくれて。誰よりも遅く帰って、会場を閉めてくれる。そんな方でしたね。
20年以上所属していますけれども、途中、結婚出産などでお休みになったことも。でも、久しぶりに顔を出せは「おう」と声をかけてくれたOさんでした。そのOさんが亡くなったというのです。しかも通夜はメールがきたその夜だし。告別式は娘の文化祭の日ときた! ——なんてこった!
すごく迷いました。行かなかったら絶対に後悔するって。けれど、必死に練習をしてきた娘のこともわかっています。私が「ごめん」したら、絶対にがっかりするだろうなって思いました。
——喪服を着て文化祭行くか? いや。ダメだろ。それ。しかもダッシュで駆けつけても、告別式遅刻だ。告別式に遅刻するなんて、失礼なことするんだったら、行かないほうがいいのか。
本当に悩みます。しかも心に引っかかるのは半年前にお見掛けしたときに、声をかけなかったこと。あの時、なんで声をかけなかったんでしょうか。久しぶりに会って、「どうしました。お元気ですか」って声かければよかったんです。それなのに。
なんだか後ろめたい気持ちで、お悔やみの言葉も出てきません。ああ、なんてことだ。結局。生きている娘たちを取りました。でもやっぱり、こうやってエッセイに書こうって思うんだから、心残りなのでしょう。
うちの合唱団では、団員が亡くなると、告別式にみんなで集まって歌を歌います。友を弔う歌です。その歌をみんなと歌えなかった後悔といったらないですね。
本当嫌になっちゃいました。こういう時、旦那がいたらよかったなって思います。娘の文化祭。お父さんだったらよかったですもん。シングルの悲しいところ。私のからだは一つしかないわけで、なにを優先するべきかは自分で決めないといけません。
これでよかったんだ。そう思うことにします。あーあ。年取りたくないですね。知り合い、何人か見送りました。あの世にいったら、あの人たちが待っているのかって思うと怖くない。「いつ死んでもいいんだ」って人の気持ち、なんだかちょっぴりわかる気がします。
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