第14話 幕間~一方のグズーラ王国①~

 一方で、グズーラ王国では和正の件が引き金となり、召喚されたクラスメイトは勢力が分断した。

 和正を消してくれた自称『陽キャ』グループは、サロメ王女やグズタフ国王の指示の下でダンジョンで訓練を重ねている。

 もう一つは、和正の事情を知りつつも友人として接してくれた二組の男女カップル。

 彼らは、自称陽キャグループの後でダンジョンに潜り、訓練をしているのは同じだが、彼らはいつかこの城を脱出する予定である。

 もう一つはそれ以外のグループで、主に無理やり召喚されたショックでモチベーションが上がらない生徒たちだ。

 仕方がなくやってる感が強いのか、兵士たちからは常に怒られているが、それによって余計にテンションが下がり、引きこもることが多くなった。


「今日は全員でこの国の地下にあるもう一つのダンジョンを探索する」


 業を煮やした国王が、兵士を使ってやる気のないクラスメイトを無理やり王の間に召集させて自称陽キャグループと二人の男女カップルと共に全員でグズーラ王国の地下にあるもう一つのダンジョンを探索すると宣言した。


「国王様、こいつらを連れて行ったところで足手まといですよ。 俺らだけで充分ですよ」


「むしろ、何でこいつらまで一緒にダンジョンを潜る必要があるんです?」


(よく言うよ……。 一番優秀だからっていい気になりやがって)


 自称陽キャグループの数人が、国王の発言に批判を繰り返した。

 彼らにとっては、引きこもりがちのクラスメイトとダンジョンに潜るのは大反対のようで、優秀な自分達だけで十分じゃないかと常々言っていた。

 それを聞いていた男女カップルの一人の草薙くさなぎ あきらは、悪態をついていた。

 晃の彼女の初芝はつしば 彩菜あやなも無言ながら、自称陽キャグループをゴミを見る目で見ていた。


「我らが戦うのは強力な魔王軍なのだ。 それ故に召喚した諸君全員が力を合わせる必要があるのだ。 勢力が三分割されたままではこれから挑むダンジョンを攻略も探索も出来ぬ」


「俺らは反対します」


「俺もです。 流石の国王様の命令でもこれだけは拒否させてもらいます」


「そなたたちに拒否権はない! これは命令だ」


「それでも拒否します! 俺らだけでも攻略できるダンジョンだって調べがついてますからね」


(何だと……!?)


(まさか昨日の奴らの怪しい動きは……!? 先生は止めなかったの!?)


(多分、先生も自称陽キャグループのメンバーですから、率先したんでしょうね)


(最悪だな……)


 先ほどの陽キャグループの発言に驚きを隠せない晃に、昨日の怪しい動きを思い出した彩菜。

 先生はどうしたのかというと、もう一つの男女カップルの片割れの女子、樋口ひぐち 美咲みさきが担任の先生も自称陽キャグループのメンバーだから率先して行動したんだと予測した。

 そんな美咲の予測に大貫おおぬき 正幸まさゆきも悪態をつく。

 その傍らで渦中の先生が前に出て、国王にこう言ったのだ。


「そういうわけですから、我々第一班のみで今回のダンジョンを潜らせてもらいます。 他の班のメンバーの動向は禁止とさせていただきます」


 先生がそう言った後で、陽キャグループのメンバーと共にダンジョンに向かった。

 国王とサロメ王女は震えが止まらなかった。


(これは完全に分断されたな。 あいつらがなまじチートじみた能力を得ているせいで、調子に乗ってやがる)


(そうね。 そろそろ私達はこの城から出るべきなのかもね。 あいつら、調子に乗るのも納得がいくほどの強さになってる。 このままいたら私達もあいつらに好き放題にされるよ)


 晃と彩菜は、アイコンタクトで潮時だと判断したようだ。

 正幸と美咲も同調するように無言で頷いた。


(何とか呆然としている子たちに声を掛けて脱出を勧めないとな)


 正幸はそう心の中で嘆きながら、呆然と立ち尽くす残りのクラスメイトを見たのだった。


 この分断が、グズーラ王国の崩壊の引き金でもあった。


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