サワーミーツ

プロローグ

　それ（プレデター）はすごく古い映画なのだという。去年亡くなったおじいちゃんが子どものころに見て好きになった映画で、内容はよく知らないけど、筋肉ムキムキでとっても強いおじさんが宇宙人と戦う話……らしい。前に見せてもらったおじいちゃんの若いときの写真もマッチョマンだったけど、その映画のおじさんはそれ以上にムキムキでテカテカだったそうだ。

　ムキムキはわかるけど、『テカテカ』ってなに？　筋肉を鍛えると体が光るの？

　おじいちゃんがときどきマッチョマンなポーズをしていたときは暑苦しいことはあっても流石に光ってはいなかったと思うけど……。

　わたしは小さいころに両親を亡くしていて、おじいちゃんと2人暮らしだった。筋肉について語るおじいちゃんはうっとうしく感じることもあったけど、すごく優しくしてくれたし、わたしにとっては実の親のような存在だった。

　そういうわけだから、おじいちゃんに育てられたわたしの知識というものは同級生と比べると少し偏っているらしく、しばしば友達と話が噛みあわないことがあるのだった。

　では、昔の映画をよく見ているのかと言われると、なんとも答えにくいもので。周りの子よりはそりゃあ詳しいのだろうけれど……、たとえばおじいちゃんがコレクションしていた録画ディスクはまだまだ視聴していないものが山のようにあるし、きっとわたしがすべてを消化することもないだろう。

　だから、わたしは〝プレデター〟という言葉が指す生き物がどんな姿形をしているのかを知らなかったし――それ故に、わたしは〝それ〟に相対（あいたい）したときに尋ねたのだ。

「Are you "Predator"?（あなたが『プレデター』なの？）」と。