お月さまの裏側
によ
お月さまの裏側
「お母さん。今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」
「今日はね、お母さんがお婆ちゃんから聞いて、お婆ちゃんはそのまたお婆ちゃんから聞いたお話をしてあげましょう」
涼しい秋の風が吹く夜。母は子どもに昔話を聞かせています。
「題名は、お月さまの裏側」
「お月さまに裏側なんて無いよ〜」
子どもは足をバタバタさせながら、母の話を聞いています。
「昔々、お月さまにはうさぎが住んでおりました。
うさぎは毎日、お餅つきをしなければいけませんでした。
なんでかって?
うさぎはお餅を作るのが、お仕事だからです。もち米を作るために、稲を植えて、それから精米して、そしてよっこいしょ、よっこいしょってお餅をついて。
そして出来上がったお餅は、お月さまの裏側にあるお城に運び込まれます。
お城には、綺麗な天女たちが沢山住んでいました。
天女の世界には辛いことなどありません。楽しいことしかありません。男も女もありません。みんなが笑って過ごしています。だからずっと平和。
うさぎたちはそんな天女たちが食べる、不思議なお餅を作っているのでした。
ある時、一匹のうさぎは思いました。天女さまたちは、悲しくなったりしないのかなあ、と。
そのうさぎは大天女様に聞きに行きました。
「大天女様。天女様たちは、なぜ悲しくなったり、怒ったりしないのですか?」
大天女様は「ここは極楽に近き土地。鳴り止まぬ綺麗な音楽に、美味しい食べ物。綺麗なものばかりがあり、そんな醜くて汚い感情を持つことは無くなるのです。自然にね」と言いました。
うさぎは、なるほどなあと納得して、お城を後にしました。
それから数ヶ月後。そのうさぎはある噂を聞きました。
その噂は、どうやら一人の天女様が、罰を受けるというものでした。
罰を受ける天女様がいるなど、聞いたこともありませんし、どういう罰なのか?何をしてしまったのか、疑問は募るばかりでした。
それからまた数ヶ月後。うさぎは噂の続きを耳にします。
どうやらその天女様は地球に憧れを持ってしまったらしいということでした。
罰というのは、地球に人間として生を受けること。
うさぎは、餅をつきながら地球ってどんなところかなあと考えるのでした」
さあ、皆様はお気づきになられたでしょうか?
お月さまの裏側 によ @niyo
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