ハムを食む

泡沫の桜

ハムを食む

「ねえ、ママ、ハムっておいちいねー」

キッチンのカウンターの向こうのテーブルに座る3歳の娘が声を上げる。娘はフォークに半分に折り畳まれたハムをぶっ刺して、大きな口に運びこむ。

「あーん、あむあむあむ、うーん!おいちい!」

まだ「し」と「ち」が舌足らずな娘に妻は微笑む。

「そうね。今日はいつもよりちょっと高いハムが買えたからね。だからおいしいのかもね」

「高いハム!(娘)ちゃん、これからこれ、毎日、食べたい!」

そうやって無邪気にはしゃぐ娘に、私は野菜を炒めながら、正直、げんなりしていた。


娘も妻も、何も知らない。


なんて無邪気で、なんて無思考なのだろうか、、


それもそうだ。全ては政府の管理下にあり、何も、誰も、口外しないのだから。





そう、この動物のいない世界で、どうして肉を食べることができるのか。

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