過去と未来と愛する人と

によ

過去と未来と愛する人と

あの日、私たちは誓いながら死んだ。『きっと来世は、二人結ばれよう』と。


レイラは貴族の令嬢として育ち、カムイはスラム出身。

ある日カムイは、レイラの家に、金目の物を盗みに入ったが、レイラは偶然、カムイを見つけてしまう。

「俺を捕まえたきゃ捕まえな。こんな世界で生きるより、死んだほうがマシだ」

そう言うカムイに「生きることを諦めてはダメ。私は何も見ていないわ」とレイラは言って、盗みを見逃すのだった。

それから数年後、カムイはあの時盗んだものを元手に事業を始め成功をおさめる。

お金持ちになったカムイは、あの時のお礼を言いにレイラの元に向かう。

レイラは美しく成長していて、カムイも男前になっていた為、二人が恋に落ちるのに時間はかからなかった。

しかしレイラの父は、カムイのことを調べさせ、スラム出身の成金だと言うことを知り、カムイを毛嫌いするようになる。

「もう、あいつと会うな。次に会ったら、あいつが盗人だと警察に突き出す」

レイラは泣く泣く、やって来るカムイを突き返した。

しかしカムイは諦めなかった。

ある夜、レイラの部屋の窓ガラスがコンコンと鳴った。カーテンを開けると、ベランダにカムイが。

「レイラ、一緒に逃げよう。会社も信用できるやつに託して来た。金も少しだが持って来た。静かな場所で二人で暮らそう」

レイラは即答した。

二人は、走って逃げたが、レイラの父はこのことをすぐに知り激怒した。

「あの男を撃ち殺せ」

馬車もなく走る二人は、敵うわけも無く崖に追い詰められてしまう。

「レイラ。その男は殺す。こっちへ来るんだ」レイラの父は言った。

「嫌よ。私はカムイが好き」

レイラとカムイは手を繋いだまま、崖に二人で飛び降りたのだった。

「きっと来世は…」


そんな記憶を取り戻したつい先ほど。

ホームセンターのペットショップでのことだった。

お祖父さんにも先立たれ、可愛い犬を見ていた時、一匹の犬と目があった。

もう二歳で、大きくなってしまったレトリバーだった。

「カムイ…。あんた、犬になったのかい」私は笑いながら言った。

前世の記憶がサーっと蘇り、涙が溢れた。老い先短い私かもしれないが、家に連れて帰らずにはいられなかった。

カムイも前世の記憶が蘇ったのかは分からない。

「ワンワン」としか言わないから。

「こうやって、平和な世界で二人。一つの家で暮らすことが出来て私は幸せだよ」

私はカムイを撫でながら言った。

カムイはいつも私の顔を舐めた。

・・・・・・・・

カムイのおかげか、私は百歳を超えるまで生きた。

カムイも先に天国へ行ってしまい、私もとうとう天国へ行くときがきたようだった。

「俺、犬になっちまったよ」

カムイが笑いながら言う。

「犬のあなたも可愛かったわよ」

私はカムイの頭をわしゃわしゃと撫でる。

今度は、二人で幸せに。

私たちは手を繋いで、階段を登って行く。

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