第8話
「お兄さん! 基地までもう少しだよ! 何止まってるの!?」
「――ちょ、ちょっと待て、あれって・・・」
「――へ? あれ? ・・・だからあれは帝国軍の爆撃機・・・」
「ち、違う、そっちじゃない! あの黒い機体だ! あの機体は他の飛び回ってる爆撃機のように推進力と広範囲への無差別爆撃を売りにしたものじゃない、明らかに『個体』に対処するための機体だ。でも、あれだけの武装を搭載した機体が、ただ上空で待機しているなんてどういうことだ・・・何かを・・・待っている?」
「お、お兄さん! 何ぶつぶついってんの! とにかく早くいかないと! ここも危ないって言ったのはお兄さんだよ!」
「――ッ、それは、そうだな。すまん、先を急ごう」
「よそ見しながら走って転んでも、助けられないんだからね!」
「ああ、分かってる。自分のケツは自分で拭くさ。――走ろう」
「――ああもう! あの人と同じようなこと言ってる! ――なんでパイロットって皆そんな感じなの!」
「・・・そういや、基地にもパイロットが何人もいるんだっけか」
「たくさんは居ないよ、5,6人くらい。私たちは武装集団じゃなくて、あくまで中立組織、団体だからね」
「なるほど、そうなると必然的に用心棒の質は高くならざる得ないか。さっきからちょこちょこ目にする不思議な機体は彼らってことだな」
「うん、そうだよ・・・でもまだ、あの人は出てないみたいだね」
「・・・あの人?」
「お兄さんの命の恩人だよ、まだ面識ないんだっけ?」
「――白銀の狂戦機、か」
「それは機体の呼称でしかなくて、あの人は――きゃあっ!」
「――ッ! 大丈夫か!」
「だ、大丈夫、すごい風が・・・」
「・・・・・・・あれか」
「お、お兄さん? どうしたの?」
「――ようやくお出ましみたいだぜ。救世主さんが」
***
「――X-αの機体には多少整備不良が残ってるみたいだ、あんまり無理しちゃいかんぞ。とりあえず前回の出撃で故障した肩部バルカン砲の再調と、高周波ブレードの整備は終わらせてある。機体のスペックを最大限に発揮するのは些か厳しい気もするが、まあアンタなら大丈夫だろう、ってことだな。ガハハハッ」
「――無理を言って済まない。恩に着る」
「なあに。ワシら技巧者に出来ることはパイロットを信じて送り出してやることだけじゃ。無責任な期待をただおしつけるなんてこたあ、烏滸がましいとは分かってるが、アンタしかいないんじゃ、頼む」
「――ああ、じゃあ、行ってくる」
「あぁ、そうじゃ、以前から打診されてた新武装の件じゃが、仮組みしたものを背部に搭載しておいた、うまく動く保証はないが、万が一の時は使ってくれ」
「了解した。――
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