蛙化現象

によ

蛙化現象

「好きです」

私は半年の片思いをやっと実らすことができた。

私は格好良くて、運動も出来る先輩のことが大好きだった。

大好きだったはずなのに、なんだか最近彼が蛙に見えるのだ。

ゲコゲコ言うわけではないけれど、人間の体に蛙の頭がついている。

付き合って3ヶ月頃、彼が蛙に見え始めた。

最初は目の錯覚かなって思ったけれど、キスをされそうになって近づいてくる彼の顔がずっと蛙のままだったから、流石に現実だと理解した。

それから彼とは、登下校をするだけの関係になってしまった。

彼に、顔が蛙に見えるなんて言えないし、友達に言ってもバカにされるに決まっている。

眼科に行ったが、問題は全くなかった。

思い当たる節と言えば、彼のだらしなさを知ったこと。それから、彼とエッチをしたことだ。

凄く、凄く痛かったけれど、好きだから我慢した。

こんな経験誰でもあるし、なんで私だけが大好きな彼の顔が蛙に見えているのだろうか。

帰り道、蛙の顔の彼は「俺たち、別れない?」と言った。

私は「え!なんでですか?」と言った。

「だって、ゆうきちゃん、いつも、はい、とか、いいです、とか自分の意見聞かしてくれないし、他人まかせだし…」蛙は言った。

そんな風に思われているとは心外だった。

初めての彼氏だから、嫌われないようにしていただけなのに。

「じゃあ言わしてもらいますけど!オレうまいから、気持ちいいだろ。とずっと言ってたエッチはめちゃくちゃ痛かったし、デートの時毎回遅刻してくるし、言い訳もダサいし、たまに私に奢ってとか言ってくるの本当あり得ないですから!」

私は早口で蛙の顔に向かって言った。

そうしたら、あら不思議。蛙の顔は、彼に戻った。

格好いいと思っていたが、よく見るとそうでも無い気がした。

彼はバツが悪そうに「早く言えよな」と言って、帰っていった。


私は笑いながら「ゲコッ」と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蛙化現象 によ @niyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る