第97話

「私としたことが……ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」


冒険者ギルドの職員さんを呼んだ方が良いかなって思ったけど。ガネーシャ様のせいで呼んできた職員も気絶するんじゃ無かろうか?

と思ったけど、呼ばないでこの状態を見られた場合俺がシエラさんを気絶させたと勘違いされる可能性が大いにあるなと思って、悪いけど職員さんに犠牲になってもらおうとガネーシャ様を放置して職員さんに事情を説明してシエラさんのことを任せた。

その間俺はガネーシャ様に持たせる『私は空気が読めない神様です』と書かれた木の板を作成して待っていた。


今その木の板はガネーシャ様が正座をしながら持っている。割のノリが良くて助かる。


シエラさんを含み冒険者ギルドの職員はそんな象の頭部を模したマスクを被った神様に対して、笑わない様に必死に目を逸らしている。

ちなみに私もやるんだからヒロキくんもやるべきだと言って『ハンセイシテイマース』と書かれた木の板を持って正座している。

やってくれないならこれからことある事に大声で自己紹介をするなんて脅かし方をされてしまったら従うしかない。


「いや〜ホントにすまない。ヒロキくんはこんな感じだから。普通の人からしたら神が降臨するなんて凄い大事だってこと忘れてたよ。お詫びと言ってはなんだけど。私の試練受けてみる?ギルドマスターならダンジョン産のアイテムを見る機会多そうだし」


ガネーシャ様からしたら謝罪のつもりだったろうけど。突然試練を受けてみるなんて言われたらまた気絶するんじゃないの?

と思ったけどシエラさんはそこまで弱い人では無かったらしい。


やる気満々でやりますと答えた。


「そう来なくっちゃ!」


そう言ってガネーシャ様が指パッチンをするとテーブルの上にダンジョンで手に入るアイテムが複数現れる。


「ガネーシャ様……」


当たり前のように死霊王シリーズがハズレ枠として置いてあるんだけど。

死霊王シリーズなんてなんで人間が持ってるんだろうって思ったけど。もしかしなくても流出経路ガネーシャ様?


まぁ、神様だしな。善人にだけ手を差し伸べる訳じゃないか…


そんなことより俺の時よりラインナップが全体的にグレードが上がっている気がする。

当たりだけじゃなくてハズレ枠のグレードも上がってるけど。


「そこら辺は私の気分次第だからね。この後レインボートラウトが食べれるから気分が良いし。その分いいアイテムが置いてあるよ」


そんな理由なんだ。


ガネーシャ様と雑談をしている間、シエラさんはテーブルのアイテムを1つづつ丁寧に観察している。


まぁ、ハズレは引きたくないだろうし当然だね。

ちなみにこの試練は1人専用なので、今シエラさんには俺らの話し声は何も聞こえない様になっている。


たぶん俺らが同じ空間に居ること自体忘れてるんじゃないかな?ガネーシャ様の力によって。


どれにしようか真剣な顔で悩んでいたシエラさんだが、覚悟を決めた顔をして蔦のようなものが絡まった木製の指輪を手に取った。



「これにします」


「じゃあ、1万マネーだけ払って貰おう。説明は…私がしても良いけどそれじゃつまらないからヒロキくんにしてもらおう」


俺が知っていること前提か。まぁ知ってるけど。


「俺の知識が間違いなければ、それはドライアドの指輪。あらゆる状態異常に対する耐性と陽の光を浴びるだけで傷の治りが早くなったり、魔力の回復速度が上昇したり中々優秀な装備品だ」


「さすがヒロキくんバッチリだよ。説明してくれたお礼に死霊王の王冠をあげよう」


「そんな呪いのアイテムいりません」


なんで神様連中は俺に死霊王シリーズを持たせたがるんだ。

いやまぁ、大天使シリーズをコンプリートさせたいのかもしれないけど。

ってなるとなんで俺に大天使シリーズをコンプリートさせたいのかって疑問が出てくるんだよな。


「ヒロキくんのストレージに入れといたから。早めに呪いを解く方法探してね」


流石、神様ことわったら俺のストレージに無理やりねじ込んできやがった。



これで死霊王シリーズは王笏と王冠で2つ

コンプリートまで、後ローブの1つだけになってしまった。


大天使シリーズに反転させる方法も探すけど。

ガネーシャ様は早めにって言ってるけど、俺の中では優先度低めだしそのうちって感じかな。

神様の早めって数百年単位でも早めって思ってるかもしれないし。焦る必要もないだろう。


「それにしても、知っているアイテムじゃなくて自分の知らないアイテムを選ぶなんて中々ギャンブラーだね。シエラちゃん」


選んだ時の緊張した顔からしてそうだろうなと思ってたけど、やっぱりそうだったか。


「私が知っている程度のアイテムを選ぶなんて勿体ないですからね」


「良いね〜シエラちゃん。リスクを取らなければいい物は手に入らない。君には珍しい物がちょっと集まり安くなる私の加護をあげよう」


なんか俺にもっとリスクをとれよと言われてない気もしないけど。

死にたくないし出来るだけ堅実に行くつもりですよ?

魔物と戦ったりしない訳じゃないけど、しっかり対策してから戦うつもりだ。


まぁ何よりシエラさんが気に入られたようで良かった。

加護なんてそうそう貰えるもんじゃないし。


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読んでいただきありがとうございます。

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