第60話

「今のは瞬雷かい?」


瞬雷自体は雷魔法Lv4で覚えられる魔法だから知っていておかしくない。


「そうだけど何かおかしなところでも?」


「瞬雷って制御できる速さじゃ無いから直線的な動きしか出来ないはず。なのに瞬雷を解除せずに行って戻ってきたでしょ?」


「俺の動き見えてたの?ジュリアナさん」


「見えるわけないじゃん。ただ、解除すればヒロキくんの動きが見えるようになる。それがなかったってことは瞬雷を維持したまま行って戻って来たってことでしょ」


そうやって予想したってことか。


「俺も瞬雷単体だったら制御なんてとてもできませんよ。同時に思考加速を使用して制御してたんです」


「それじゃ、雷魔法使いには使えないね」


思考加速のスキルは魔法使い系のジョブじゃ覚えないしな。


色んなスキルを制限なしに覚えられる男の特権とも言える。


「試したいことも試せましたし早くダンジョンから出ましょう」


その後は特に魔物と遭遇することなく、魔法陣までたどり着いてダンジョンの外に出ることができた。

入口の周りはミスリル鉱脈が見つかったということで凄い賑やかだ。


巻き込まれる前に家に戻ろう。


「なんでアディルさんがまだ家にいるんですか?」


家に帰ると、何故かアディルさんがまだ家に残っていた。

冒険者ギルドに話し合いに行ったあとは領主の館に帰るんじゃないの?


「だって、ミスリルを手に入れようと商人達が領主館に押し寄せて来て大変なんだもん。しばらく隠れ蓑としてこの家を使わせて」


商人たちは確かに手に入れようと必死になるかもな。


「それは商人たちが押し寄せてくる場所が変わるだけじゃ?」


「カエデの家に無理やり押し入ろうとする自殺志願者はいないよ」


カエデさんの威光でどうとでもなると…

実力も問題なんだろうけど。

カエデさんから嫌われたらカエデさんが魔物を討伐して手に入れたレアな素材を下ろして貰えなくなったり。

自分もそうなりたくないって商人仲間からハブられるぐらいはありそうだよな。


カエデさんじゃないと手に入れられない魔物素材とかいっぱいありそうだし。


「出ていけとは言いませんけど。その間領主の仕事とかどうなるんですか?」


仕事が溜まりに溜まって大変なことになるんじゃ?


「部下たちに毎日書類をここに運んでもらう」


そこまでして館に戻りたくないのか。

と言うかそこまで商人たちが酷いなら無礼討ちとかしちゃうのも有りなんじゃ?


「そこまで酷いなら領主特権で無礼討ちとかにできないんですか?」


「自国であるリアウタン王国の商人だったら直ぐにそうしてるよ。別の国から来た商人たちが煩いんだ。今、国同士で揉め事を起こすとそこをついて人間の国が嬉々として戦争を仕掛けてくるから。国同士で揉め事を起こさないために自分たちは無礼討ちにできないとわかっててるから余計にたちが悪い」


それはご愁傷さまです。

というか、いくら表立って無礼討ちにできないって言ってもそんなことしたらどうなるか分からないのかね。その商人たちは。

逆に言うと、秘密裏に消されても国同士で揉め事を起こしたくない商人たちの自国は追求したりしないだろう。


「綺麗に掃除するまでここに居たいってことで良いですか?」


「一気に居なくなると、あからさますぎるから時間をかけて対処しないと行けないから

1~2ヶ月ぐらいお世話になることになると思うからよろしく」


たしかにあからさま過ぎると国は動かざる負えないか。


その間和食を我慢するとか無理なんだけど。

アディルさんに秘密を守って貰うしかないか。


「色々他人に知られたくないスキルとか有るんですけど。ちゃんと黙っててくれます?」


「神獣の加護持ちを敵対なんて絶対したくないからね。王族に命令されたって喋らないよ」


やっぱり部下を使って鑑定で覗かれてたか。

称号欄の神獣九尾の狐加護をバッチリ確認したってことね。


今後、偽装スキルとか手に入れても神獣九尾の狐の加護はあえて隠さない方が面倒事減るかも。


「神獣の加護持ちの人間の秘密を喋れと?って言えば王族も無理に聞いてくることは無くなる。誰だって神獣を怒らせたくないから当然だね」


「なら気が済むまでこの家で生活して行ってください。俺はちょっと鍛冶場に行ってきます」


サテツにヒヒイロカネについて意見を聞いてみたい。


「私も鍛冶場について行く。サテツちゃんにミスリルインゴットを渡さないといけないから」


ミスリルを手に入れられるように交渉していいとは言ったなそう言えば。

ジュリアナさんはミスリル鉱石から抽出機を使って作ったミスリルインゴットを持ってきてくれたらしい。


パニーはお風呂に入りに行くということで、俺とジュリアナさん2人で地下の鍛冶場に向かった。


「サテツちゃん。ミスリル持ってきたよ〜」


「ありがとうございます。ジュリアナさま」


鍛冶場にいたサテツは坩堝の確認をしていたようだ。よっぽどコバルトとミスリルの合金を作るのが楽しみだったみたいだ。


「まさかその日のうちに用意していただけるとは思っていませんでした」


「それじゃあ今から合金作れるの?」


「いいえヒロキ様。ミスリル溶かすための火力がまだ用意できてません」


合金にするには当然、完璧に混ざるようにミスリルを液体状に溶かさないといけない。

それには相当高い温度が必要みたいで、まだそれを用意できていないようだ。


「それなら火力は俺が用意しよう」


やったことないけど妖術使えば何とかなるだろう。


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読んでいただきありがとうございます。




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