第29話

「でも、隷属の首輪は専用の鍵を使わないと外せない。まずは人間の国にある奴隷商の

お店に行ってジャスの奴隷の首輪を外さないと」


やっぱりそう言う首輪なのねそれ。

こう言う話ではよく出てくるし。正規の方法以外で外すと装着者が死ぬという設定とセットで。


だからと言ってフラフラ人間の国に行くつもりはない。

だって絶対面倒事が起きるもん。


「『効果破棄』」


奴隷の首輪に効果を無効化する妖術を使って破壊する。

あんまりグレードの高い物には効かないけど、人間が作った物だろうし。

このぐらいなら問題なく効果を無効化できる筈だ。


奴隷の首輪が勝手に外れて地面に落ちてゴトっと音を立てる。


「これで解除完了。じゃあイリスさん人間以外の種族が治める国に案内してもらおう」


イリスさんは地面に落ちた奴隷の首輪を眺めながらフリーズしている。


「失敗したらどうするつもりだったの?」


イリスさんがそう聞いてくる。


「どうもしないけど?ダメだったねって思うだけだね」


「ジェスが死んでもおかしくなかった!」


どうやら俺が何も相談せずに勝手に奴隷の首輪に手を加えたことに怒っているようだ。


「俺のことを勘違いしているみたいだから、ハッキリ言っておくけど。出会って数分の人のために命の危険に晒される行動をするほど聖人じゃ無い」


男が人間の国に行ったら問題になるのは目に見えている。


「俺のことが気にくわないなら此処でさようならだ」


時間はかかるだろうけど、自分たちだけでも人間以外が統治する国を見つけることも可能だろう。


「ちゃんと案内はする」


ムスッとした顔をしたままジャスと呼ばれる男の子の方に向かっていった。


まぁ、しっかり案内してくれるなら良いや。


2人の準備が終わるまで適当におやつでも食べながらゆっくり休憩する。

最初は無かったけど、最近になってMP交換にお菓子が大量に追加されたんだよね。


サテツ達にはみたらし団子がお気に入りだ。

次いでに男物の洋服も交換してジェスに向かって放り投げておいた。

着てたものボロボロだったし今度は服を買いに行くとか言われると面倒だったからね。


「待たせて悪かった。今から移動をする」


イリスさんが先頭、その後ろにジェス 、俺、サテツ達という順番で1列になって森の中を歩く。


ちらっとマップを確認するとチュートリアルの森とディアランドふたつのマップを選択できるようになっていた。


今、チュートリアルの森の地図はいらないので、ディアランドの方を選択する。


当然チュートリアルの森の時と同じように自分が歩いた周辺以外は全部白紙だ。


「今から向かう国はプルーム王国。私たちエルフが治めていて、1都市しかないけど海と山に四方を固められ人間も迂闊に攻めることは出来ない」


鎌倉みたいな地形をしているって考えて良いのかな?

敵が攻めにくいってのは良いね。人間なんかよりスキルの宝珠を落とす魔物と戦いたいし。


「ってなるとこれから山越え?それとも海に出て船でプルームに向かうの?」


船を使うってなると港町に向かう必要が出てきそうだし。

出来れば山登りの方が良いな。


「船なんて目立つもの用意できない。だから当然山越えルート。ただ、どの山も高度8000mを超える巨大な山だから生半可な覚悟じゃ越えることなんて出来ない」



まじかよ。


プルームを囲う山々はどれもアルプス級ってことか。

確かにそれは生半可な覚悟では山越えをすることは出来ないだろう。

と言ってもLvの概念があるお陰で、そこまで苦労はしないかもしれない。

ただ、ジェスには相当きついんじゃないの?


それに8000m級の山なのに全く見えないってことはここはプルームからそれなりに離れた場所だろう。



「イリスさん正直に答えて欲しいんですが。ここから1番近い人間以外の種族が治める国はどこですか?」


「心配しなくても直接プルームに向かうわけじゃない。途中にある国を幾つか中継して最終目的地がプルーム。だから山越えの準備もちゃんとできる」


本当にそのつもりだったのか?

顔が笑ってないぞ?

男は貴重だからほかの国に寄った結果その国を気に入っちゃって永住するって事になるのを避けたいのか?

それとも1番の敵は人間なんだろうけど。ほかの種族とも言うほど仲良くないとか?


「ちなみに人間以外が安全に利用出来る港町はないの?」


「あったら山越えなんて提案しない。人間は港の重要性を理解している」


結局 、海路は難しいか…


「龍種か亜龍種をテイムして空路を目指すってのはどう?」


近くにいるなら可能性はある。

正直、龍種は無理だろうから、亜龍種のワイバーンが最有力かな?


「出来るの?」


「勿論、この子達だって俺がテイムしたんだよ?レッサードレイクだって倒したことあるし」


テイムのスキルを所持していることはサテツ達で証明できるし。

レッサードレイクの鱗をとか牙なんかを見せれば龍種を倒せる実力があるって納得してくれるだろう。


まぁ、普通テイムするには倒さないように痛めつける必要があるから普通に倒すより難しいけど。


「ここから2日歩いたところに鬼人の里が有る、そこを中継して獣人達がくらすリアウタン王国そこの人間の国と隣接する城塞都市アストに向かう。そこにはダンジョンもあって龍種が出現する」


それはそれは中々楽しそうな道程だな。



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読んでいただきありがとうございます。






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