1-2

喧騒で目が覚めた。イアが女の子の髪を梳かしてやっている。アワは欠伸をしながらちびっ子達に指示を出した、昨日と一緒になるように布団を丸めてね……。


「ミラ、寝坊」

「うるせぇよ」


俺も着替え……って、


「お前見るなよ」

「ボクが見ようとしてるんじゃなくてミラが脱ごうとしてるんだよ」

「俺は布団の中で着替えたよ」


至極真っ当なご意見を幼馴染二人から頂戴する。


「お前らなんで怒ってんの?」

「ミラのせいで、早起きして様子見に抜け出そうとしてたのに見に行けなかった」

「行こうとしてたのかよ……」




 その時だった。


「ミラ」


 扉を開け放ったのは、アワの父親。


「出てこれるか」

「え?あ、うん」

「アワ、イアちゃん、昼にまた来るから、それまでよろしくな」

「うん、了解」「はい」

「ミラだけ外に出るの!?ずるいー!」


 ちびっ子が騒ぐ。と言っても俺は何かの用で呼ばれただけだろう。


「ミラはなんか悪いことしたんだよ」

「うるせぇぞアワ」


 笑いながらアワに反抗して、あれ、俺ほんとに何かやらかしたっけ、なんて思いながら外へ出た。


 そう、外に。


「え?」


 俺、外に出ていいの?


 思ったときにはもうアワの父親は集会所の中に入ってしまっていた。

 というか俺、どうすればいいの?

 外に人気はない。うっすらと朝靄がかかる村の風景は、音を除けばだいたいいつも通りだった。今はことりとも音がしない。子供たちは集会所、大人達は家の中でじっとしているんだろう。でも、普段はある音、生活の音がない村はとても静かで、異常に思えた。


 どこからか足音が近づいてくる。


「……ミラです」


 村長と、白い服の、はっきり言ってしまえば不気味な、軍人みたいな奴らが現れた。軍人らしい服装だけど、襟が極端に長くて、その口元と鼻を覆っている。兜で頭も覆われているから、俺からは目元しか見えない。軍人の1人、リーダーみたいな男が村長に頷く。


「……おはよう、ミラ」

「おはよう、ございます……あの、村長これは」

「ご無礼のないように」

「え?」


 村長はもう何も言わず踵を返した。儀式用の服の、長く伸びた背中の生地が翻る。


「ミラ」

「はいっ」

「行くぞ」


 何がなにやらわからない。白い男達に半ば連行されるように、俺はもうひとつの村の集会所……ここにはステンドグラスがあって、結婚式や葬式のときによく使われる……に、着いた。途中、白い男達の右肘の部分に皇国旗が付いているのを見つけた。やっぱりこいつらは皇国の使者で、多分この集会所の中に占い師という奴がいるんだろうとは思ったけど、乱暴すぎて信じられなかった。ほんとに俺、なにか悪いことしたっけ。


「ミラ」


 集会所の前で、やっとまたリーダー格の男が俺に話しかけた。


「そこに立て」

「え」


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