第三十三章 猫の好奇心と人殺しの本質

「動物の患者ってのはいいね」


 寝台に乗せた黒猫に予防接種を行いつつ、白衣を着た痩身の男はそう呟いた。


 白衣こそ清潔感に溢れているが、伸びた無精髭と痩せこけた頬、そして隈に縁取られた垂れ目の眼光は不摂生を体現したような風体であった。


 名を、中村忠敏。職業は闇属性の医者である。


「そうなのか?」


 そんな彼の手元、注射針をいれた毛玉から疑問の声が上がる。アズライトだ。今日は定期検診と称して諸々の予防接種を受けに来ていた。


 中村は黒猫のベルベット素材のように触り心地の良い毛並みを撫ぜながら口を開く。


「痛い、怖い、不安。本能に直結したことぐらいしか言わないから。小動物なら暴れても人間より酷くはない。―――人間の患者ほど面倒な生き物はないよ。大の大人になってもぎゃぁぎゃぁやかましいわ偉そうだわ暴れたら手がつけられないわだからってちょっと強めに縛り付けたりすると人権が何だと外野の方が煩いわ。時々、だったらそのまま死ねばいいのにと思う。そうしたら今度は医療ミスだとか医者が殺したがどうのと叫ぶんだろうけど」


 ま、これは私が根っからの人嫌いだからだけどね、と中村は嘯く。


「闇医者、と言うのは資格を持っていない医者なのだろう?何故、そんな職についているのだ?資格を取れば良いのでは?」

「僕に限って言えば医師免許はあるよ。単に、開業するにあたって行政に届け出を出していないだけで」

「それはまずいのでは?」

「だから闇医者なんじゃないか」


 へらへら笑う、病み属性も抱えている医者にアズライトは疑問符を浮かべる。


「分からない。何故、闇医者なのだ?」

「えー。自分語りをするようで嫌だなぁ」


 渋る医者に興味を覚えたアズライトは、最近覚えた言葉を駆使して交渉を試みる。


「人なら恥ずかしいかもしれないが、吾輩は猫だ。動物に話しかけているだけなら―――そう、寂しい人間で済むだろう」

「それ全世界の動物愛好家を敵に回すと思うよ?」


 どこかで姫の侍従がくしゃみをしていることだろう。


 中村は諦めたように肩を竦めて人差し指を立てる。


「私が元々愛着障害っていうのもあるけれどね。人の命を救うことに疑問を覚えてしまったのさ」

「疑問」

「そ。例えば―――そうだな、君は人間の平均寿命って、幾つか知ってる?」

「現在は七十から八十ぐらいなのでは?」

「大凡正解。でもその寿命って、適性だと思う?」


 いや分からない、とアズライトが首を振ると医者はこう続けた。


「正解は不適正。人間の寿命は自然に生きると38歳が適性なんだって。まぁ、運よく生きて50が良いんだろうね。敦盛は結構的を得ているわけだ」


 人間五十年、という医学がまだ学問ではなく民間療法の類だったころから、人々はその辺りが大往生だと見定めていたのだろう。実際、最速で当時の人生のチャートを組むと、十五歳で元服し早ければそのまま結婚、翌年には出産して、とそのサイクルを守っていると三十過ぎには孫ができている計算だ。50まで生きれば曾孫が居てもおかしくない。現代の感覚に当てはめてみれば大体80~90代。ならば確かに大往生と言える。


 現代で三十過ぎはまだまだ働き盛りではあるが、その歳で次代どころか次次代まで出来ていれば確かに人生のイベントをあらかた終えた計算になるだろう。


「で、翻って現代だ。何時死んでもおかしくない時代に比べると、確かに寿命は伸びた。だけど、寿命が倍になるっていうことは、その分だけ種としての新陳代謝が遅れる。遅れるだけならともかく、その細胞が長生きする分だけ、若い細胞にリソースが行き渡らなくなって、最終的に生命全体が先細っていく。私が生まれる前、旧世紀では将来超高齢化社会になるだろうと言われていたらしいよ。まぁ、総人口が六分の一にまで落ちたから一旦はリセットされたんだけども」


 それでも生き残った人類は再び人口を増やし始め、特に障壁に囲まれた圏域という安全地帯が生まれてからは一般市民の死傷率はぐっと下がった。


 それは取りも直さず、人類の平均年齢を再び上げる結果となり、半世紀も過ぎるとやはりまた高齢化社会の兆しが見え始めているという。


「私が昔働いていた病院に限らず、大抵の病院は年寄りが幅を利かせている。医者にしろ患者にしろね。そりゃそうだ。医者だって飯を食っていくために効率性を求めて給料の良い職についたのが大半だ。世のため人のために、なんて謳ってはいるが、もし本当にそうならば私財を削って無償で診療するべきだし、なんなら寝たきりの死にたいと宣う非生産的な人間に安楽死でも勧めてやれば良い。ま、中には本当に人を救いたいからという理由で戦い続ける医者もいるけれど、大抵は擦り切れて一日一日をやりきるのに精一杯さ。本当激務だからね、医療従事者って」


 闇医者は何か嫌なことを思い出したのか、顔をしかめて病みオーラを放出しながら少々早口でそう言い切る。


「別に拝金主義を否定するわけじゃないよ。私だって生きるために高額な料金を取っているからね。まぁ、無届け診療だから健康保険が効かないってのもあるけれど」

「吾輩の受診料は大丈夫なのだろうか………」

「ああ、それは安心して。この仕事を始める時に色々と灰村に世話になってね。今も続けていられるのも彼のおかげだ。だから彼の紹介なら、大抵は無料で請け負うことにしている。―――たまに立場の分かってない馬鹿からは死なない程度に毟り取るけど」


 何しろ行政の許可を得ていない営業である。皆保険の負担分を国に求められるはずもない。逆を言えば言い値を設定できるのだが。


 中村は小さく吐息して、昔のことを話す。


「まぁ、よくある話だよ。どんな仕事にもあることなんだけれど、時々、どうしようもなく忙しさが重なる時があるんだ。元々の手術予定と一般外来と救急と―――ま、要はオペ室の取り合いになったんだよね」


 医者の繁忙期は担当している科でも違うようだが、中村が所属していた病院はある日、その冬一番の忙しさの中にあったそうだ。


 冬場の気温で体調を崩す人間も多く、その歳はインフルエンザが猛威を振るっていた。その上、年末年の瀬で色々なトラブルが各地で起こり、喧嘩や乱闘沙汰から来る外来患者、師走特有のサンデードライバーの出現からの交通渋滞とコンボのように引き起こされる交通事故患者等々、中村自身数日寝ていない状況が連日続いていたらしい。


 そんな中、一人の女の子が交通事故で緊急搬送されてきた。飲酒運転の車の事故に巻き込まれ、跳ね飛ばされた。それだけでも命に関わるが、間の悪いことに跳ね飛ばされた先に木製の看板があり、それを破壊。更に折れた看板の一部が少女を背中から貫いていた。心臓こそ外れていたが片肺を貫通しており、抜くのは危険と判断した現場がそのまま応急処置をして運んできたのだ。


 中村は即座に緊急オペの判断を下し、輸血と刺さった木材を引き抜くための準備を行っていた。そんな時だった。


「普通、そういう時って現場が仕切ってトリアージするんだけど、横紙破りが入っちゃったんだよね」


 同じタイミングで、年寄りも運び込まれてきた。何でも、忘年会の飲み会でぶっ倒れたそうだ。調べてみればくも膜下出血で、こちらも確かに危うい状況ではあった。だが、まだ意識はあった。初期症状ならばまだ少し耐えられたはずだ。少なくとも肺に木片が突き刺さっている幼い命が先―――中村はそう判断したのだが、その中年の付添の男性がこんな事を宣った。


 このお人は統境議会の先生だ、と。だから優先しろと。そしてあろうことか、その場にすっ飛んできた院長まで賛同した。


 結果、中村が押さえていた手術室は奪われた。途方に暮れる彼を前にして、同僚が直ぐにタイミング良く空いた手術室を用意してくれたのだが―――少女は救われなかった。


 揉めたのは僅か数分。だが、その僅か数分が明暗を分けたと中村は言う。実際には分からない。だが、彼は邪魔さえ入らなければきっと救えたはずだ、と心の底から思っていた。


「で、結局適性寿命をブッちぎってる老い先短いヒヒジジィが生き残って、これから何十年と生きれたはずの小さな女の子が死んだんだ。まるで効率の悪い吸血鬼みたいな存在だと思わない?年寄りってさ。若い人間の血を吸って仮に長生きできても若返るわけじゃないのに。自分達だけが逃げ切れればいいと思ってる」


 命は平等だが、そこに他人が介在すれば途端に不平等になる。中村が身の振り方を決定的に決めたのはその一件だが、医療に従事していて常々思っていたそうだ。


 どうせ不平等なら、いっそ振り切って始めから救う命を選別したほうが良いのではと。


 無論、そんな傲慢な選択を一般病院で出来るはずもない。胸に秘めた思想は自由であるが、個人的感情や主観で医者が人命の行く末を決めて良いはずがない。単なる開業医も同様だ。だからこそ、中村は無届けの開業医という茨の道を選んだのだと言う。


「全員が全員、そうでは無いのでは?」

「そりゃそうさ。中には後進に道を譲るまともな老人だっている。世の中の年寄り全員が軒並み狂ってたら、それこそ社会が率先して殺処分しているでしょ。ジジババに限った話じゃないけれど、世の中は実際はそうじゃない。玉石混交ってやつで、一見して他人がまともかそうじゃないかだなんて分からない。でもだったら君はそれを一目で見抜くことはできるかい?って話だ。すれ違っただけで、一言二言言葉を交わしただけでその人間の本性をちゃんと看破できる?出来たとして、そんなキチガイを社会から排除して正しさしか通らない安心な世の中を作れる?そういう証明をするためのデータを集めるとして、目の前に差し迫った状況の時間が止まるとでも?」


 いや、とアズライトは首を振る。


 本性を暴き、統制し、管理する。それが叶うならばきっとクリーンな世界だろうが、人はそれをディストピアと呼ぶ。人と共に在ることを望むA.Iたるアズライトにとって、自らが管理支配する人間社会等は到底許容できる世界ではない。


「勿論私も理解している。これは所詮、決め打ち。レッテル貼りでしか無い。けどね、結局はそうやって一度は決めつけて距離を取って観察しないことには何を考えているか分からないのさ、他人―――人間なんて特に。最初から声高に拒絶しないで胸に秘めて表向き普通に接しておけば、評価の上方修正はこっそり後からでも出来る。そういう安全策を取らない無軌道な人間に限って後々になってこう言うんだ。『そんな人間だとは思わなかった』ってね。勝手だよね。よく知りもしないで他人に期待したくせに、そんな浅い考えの自分の事は棚上げして正義ヅラで他人を批判するんだよ」

「観察か」

「そ。普通の人間は、口には出さないだけでそうやって他人に線引を設定するものだよ」

「それは所謂差別というやつなのでは?」

「悪し様に言えばそう。良く言えば違う。例えばアイツはオタクだ、アイツはヤンキーだ、アイツはオッサンオバサンだあるいは男のくせに女のくせに。あんな車乗っているからきっとそんな運転するんだろう、この職業についているからきっと金持ちなんだろうあるいは貧乏なんだろう―――他にも色々あるけどね、見てくれやそれまでの経験、あるいは全体の傾向で第一印象を決めて大凡の仮定をする。原始人でもあるまいし、人間社会に生きているなら誰だってやっていることさ。レッテル貼りと言えば悪く聞こえるけど、どっちかというと区別、ラベリングだね。良し悪しはともかくとして、それはそれで統計で考えているから正答率が高いやり方なんだ。何を考えているか分からない初見の他人から、自分を守る一番手軽で手堅い方法。表立って口に出さなきゃ批判されることもないしね」


 ふぅ、と幾分スッキリした表情をした病み医者は話を戻す。 


「話が逸れたね。ともかく、私はそういうバ患者と金満病院に嫌気が差してそこを辞めたよ」

「その病院は?」

「潰れた。―――まぁ、私がその女の子が死んだ件とその他諸々の不祥事をマスコミに匿名で暴露したんだけども。ついでに政治家も辞任に追い込んでやったよ。議会中に居眠りするだけのゴミとか税金の無駄でしょ?」


 ざまぁみろ、と闇属性の医者はどす黒いオーラを噴出させながら哄笑する。


「以来、そういう面倒くさいのが嫌だから気ままな闇医者をしているのさ。気に入らないバ患者は中指立てて追い出せるし、自由診療だから好きに値段設定も出来て食いっぱぐれない。そうして気楽になった分、本当に困っている、救われるべきなのに救われない患者に手を差し伸べれるから」

「ちゃんと届け出を出した開業医では駄目なのか?」

「それこそバ患者に訴えられるわ経営しんどいわ従業員の管理もしなかんわ何だかんだ医学会に入らないとやっていけないわで大変だよ?身体は1つしか無いのに、医者の他に社長と管理職と営業マネージャーの仕事までやってられないって。きっとこうして君と話してられないぐらいには忙しくて、常にカリカリしているだろうね、私」


 自由人万歳、と中村は皮肉げな笑みを浮かべてアズライトの頭にペタペタと電極を貼り付けて、それを何かしらの機材とパソコンへと繋いでいく。


「幸い。私には灰村という後ろ盾があるのでね。こうして堂々と闇医者を気取れるんだよ。さっきの適性寿命を考えれば、どうせ長くもない命だし、愛着障害なだけあってそもそも自分にすらそんな興味がない。―――さて、次は頭の検査ね」


 雑談はおしまい、と彼は話を一方的に打ち切りパソコンのコンソールへと手伸ばした。


 アズライトはそれを興味深げに眺めていると、不意に視界のインジケーターに不正接続の文字が浮かぶ。即座に自動でブロックされる。やはり駄目か、と中村が呟いたのを聞いて、彼が検査のために仕掛けハックしようとしたのを理解した。おそらく、最初にアズライトが運び込まれた時にも何度か試したのだろう。だが、アズライトは仮にも政府機関の実験体。当然、脳内チップの暗号強度は非常に高い。


(あ)


 その上、不正アクセスを検知すると自動でカウンターを仕掛ける。


 思わずそれを中村に注意しようと声を上げかけるが、流れてきた情報の中に見知った名前を見つけて意識を向けた。


(―――これは、貴史のカルテ………?)


 そう言えば、彼もこの医者に掛かったことがあると灰村が言っていたのをアズライトは思い出す。最終日付は去年の3月―――丁度、新見が鐘渡教練校に入校する直前で止まっている。それ以降はおそらく教練校での定期検診しか受けていないのだろう。


(いや、これは………)


 個人情報である。あまり眺めていて良いものでないのは理解しているが、それ以上に好奇心をくすぐられる。妙にうずうずする猫の本能には抗えず、遂にアズライトはそのカルテの詳細を見てしまった。


(吾輩は、これを知っている………。いや、これを知っているのはセブンか)


 そこに綴られていた情報の中に、妙に心に引っかかる形状と機能を見つけた。どこかで見覚えがある、と記憶を探るとその深層にあった情報に行き着く。


(ヘリオス………)


 彼の天才科学者、アルベルト・A・ノインリヒカイトが遺した―――太陽の心臓ヘリオスへと。




 ●




(んー………どうにも上手くいかないな………)


 公園のベンチに腰を据えて、両手を眺めながら三上は胸中で独りごちた。


 時刻は夕方。今日は三上も式王子もバイトが休みの日であり、普段の教練を熟して久遠を迎えに行き、帰路に着く予定だった。だが、帰りしなに雑用(力仕事)を山口に申し付けられ、男子組は揃って教練機材の搬入に精を出すことになった。幸い、異能の使用を認めてくれたのでそこまで時間は掛からなかった。特に三上の糸は汎用性が高く、新見と飛崎からべた褒めされ、『実は戦場出るより活躍できたりして』と言われてちょっと複雑な気分になったりもした。


 ともあれ、そんなこんなで式王子に先行して久遠を迎えに行って貰い、三上はこの公園で待ち合わせをしているのである。後十分程度で到着するようなので、それまで暇だからと手慰みにこの間水無瀬にならった技術の練習を行っているのだが、どうにも上手くいかない。


 左手に霊素、右手に異能。


 より正確に言うならば、左手に変換前の霊素と、右手に変換後の霊素だ。それらを維持しつつ、最終的にはどちらかの手でまとめ、拳と共に同時着弾させる。


(生身でインバーター制御って、考えてみれば無茶苦茶だよな。猶予1フレームとか格ゲーならマニアしかやらないぞ………)


 適合者と異能の関係を例えるのに、よく交流電源の電気回路を引き合いに出されるため、三上も一般の学生の例に漏れず一通りの電気理論は習得している。


 細かな理論は長くなるので割愛するが、単相交流や多相交流のように、敢えて位相をずらして効率良く発動させるのが通常の異能なら、これはそれを意図的に位相を一致させ一時的に直流電流のような安定した高出力を得るやり方だ。習得できれば、確かに最大火力に乏しい三上でも格上殺しが実現できるかもしれない。


 だが問題が無い訳ではない。


 まず、実現性というか再現性に乏しい。やってやれないこともないが、非常に繊細な作業を要求される。電気の例えが出たので、それを元に例を出すと、霊素粒子は電気、異能は電気によって仕事をされた後のエネルギー―――例えばモーターの回転力だ。その電気と回転力の周波数を合わせて、ピンポイントに同じ仕事をさせる。つまり生身でコンバート回路の真似事をしろと言っているに等しい。


 次に危険性。適合者は意図して霊素の位相をズラしているわけではない。本能的にか、あるいは変異した遺伝子が自壊しないようにしているのかまでは不明だが、異能が発現した段階でそのように調整している。一種のリミッターのようなもので、敢えて無効霊素を作り出すことで適合者の許容量を超えない調整が行われているのだ。それを無視して無制限に霊素粒子を使うとなるとその大出力に果たして使用者は耐えられるのか。少なくとも水無瀬も調整ミスすると自爆すると言う位には危険が伴う。


 更に、そこまでする必要性が在るか、という疑問もある。水無瀬自身が語ったように、これにリソースを割くのなら単純に異能に集中して発展した方が汎用性もあるだろう。単に拳の威力が倍増するレベルなら、例えば三上が飛ばす鉄拳を二、三連発したのと変わりない。だとしたら、既にある技術を発展させたほうが楽なのである。


(だけど皇竜にも通用する攻撃力ってのは魅力だよな………)


 何故かクラスこそAに上がった三上ではあるが、実は特段攻撃力が上がったわけではないのだ。あの騒ぎの後で訓練でも試してみたのだが、確かに霊糸を用いた拳や鎧の形成速度こそ上がってはいたが、そもそもが攻撃用の異能ではない。精々が強度や構築速度が上がったぐらいで、イコール攻撃力には直結しない。三上が元々、糸を用いた攻撃を補助にしか使っていなかったのも影響してはいるが。


 それを考えると、習得難易度はさておいて格上にも容赦なくダメージを与えられる攻撃手段は、とても魅力的だ。


(はぁ。とにかく、今よりも霊素を上手く扱えるようにならないと………)


 同時に行うと、どうしても気が散って糸へと変換されてしまうのを憂慮した三上は、まずは霊素粒子を上手く扱えるようにと両掌の上で霊素を球形にしてぐるぐると循環させる。粗熱のようにロスが多いためか、チラチラと粉雪のように白い燐光が手から溢れていくが、気にしない。まずは意識しなくても扱えるようにしなければと三上が集中していると。


「何やってんだ?それ」

「え?」


 横合いから、不意に声を掛けられて、三上がそちらの方を見ると、巨躯の外国人男性がいた。見知らぬ男だ。


 三上も身長は190に近いが、その三上よりも一回り大きい。上背で言ったら2mを超えている可能性もある。また、ジャケットの上からでも分かるほど鍛えられた筋肉を持っており、鋭い青の眼光は三上の手に注がれていた。しかも、妙に流暢な日本語で話しかけてくる。


「それだよそれ。何やってんだ?」

「あ、これっすか?ちょっと、霊素制御の練習………?っていうか誰っすか?」

「単なる通りすがりだよ。道端でぐるぐるぐるぐる霊素回してりゃ、良からぬことを考えているのかと警戒もするだろうさ」


 それもそうか、と思いつつ三上は手の霊素を止めて困ったように苦笑した。


「いやぁ、何と言いますか、目的はもう2つ3つ先なんですけど、これが出来ないとそこに至れなくて」

「ふぅん………よっと」


 その男は感心したように頷いた後、三上の隣にどかりと腰を下ろして右掌を見つめる。


 すると白い霊素が球体となって出現し、ひゅんひゅんと公転周期する惑星のように男の掌を回り始めた。


「こうか?」

「すっげ………」


 三上のようにロスがないのだろう。燐光1つ散らないその白い球体は、どんどん加速していく。やがてそれに飽きたのか、男が握りつぶすように拳を作ると音もなく消え去った。


適合者ドライバーなんですか?」

「まぁな。傭兵………みたいなもんだ」


 思わず尋ねてしまった三上に、男は肩を竦めてそう答える。


「傭兵って、皆そんなに凄いんですか?知り合いの元傭兵も結構出鱈目なんですけど」

「強いか弱いかで言えばピンキリだ。だが、淘汰が正規軍より断然速いから必然的に尖ってない奴は珍しいな」

「淘汰っすか?」

「小僧は傭兵がどんな立ち位置で戦場に出されるか知らねえのか」


 今一ピンとこない三上に対し、男は呆れたように眉根を寄せて、しかしまぁいいかと口を開いた。


「極論言えば捨て駒だ。自前の兵士にさせられないような重要度の高くない、だが危険度の高い任務に放り込むか、そうでもなけりゃ肉壁として使うか」

「そんな滅茶苦茶な………」

「勿論傭兵側も唯唯諾諾とは従っちゃいねぇさ。相手は単なる客であって、親でも兄弟でもねぇ。金も払わん癖に文句だけは一丁前の、恩も義理もねぇボンクラに使い潰される謂れはねぇからな」


 男は笑って、自身の鼻先をとんとんと指さした。


「要は嗅覚だ。それが鋭くない傭兵は長続きしねぇ。早晩に大体が死ぬし、運良く生き残っても再起不能リタイア。必然、生き残って尚傭兵やっている奴はそれなりに出来る奴だ。単体戦闘能力が低くても、それを補える一芸があれば重宝されて存外生き残る」

「確かに………そいつもコレ、すぐにやって見せたんですよ」


 元傭兵を名乗る飛崎も一度聞いただけで異能と霊素を同時に使ってみせた。ピアノと同じ、という謎コメントを残しているが、三上にはまるで理解できなかった。


「まぁ、修羅場を潜った経験がある奴は大体できるんじゃねぇか?」

「修羅場」


 言われて思い出すのは、去年の渋谷テロだ。


 あれこそは三上にとっての初陣。敵に囲まれ、味方も無く、優位に立てるものは異能唯一と言うまさしく鉄火場修羅場に相応しい事件だった。結果として生き残ったものの、三上の心に傷跡を残している。最近不本意な相手によって少し改善されたものの、実戦ではどうなるか未だ未知数だ。


「小僧にはねぇのか」

「一応、あるにはあるんですけど」

「ほう、どんなだよ」

「実は―――」


 名前すらまだ聞いていないのに、何でこんな事を話しているんだろうかと三上は僅かに疑問に思いつつ、それでも口にすることにした。


 去年、JUDASのテロに巻き込まれたこと。そこで大立ち回りをしたこと。しかしトラウマを抱えてしまったこと。最近は多少改善したものの、実戦ではどうなるか分からないこと。特に、人の生死に関してはよく語ってしまう。


 だが―――。


「そこまで悩むことか?馬鹿らしい」

「え?」


 男が呆れたように吐き捨てるので、思わずきょとんとしてしまう三上だが、男は構わずに続けた。


人殺しだろう。まして小僧のそれは単なる防衛。死んだほうが弱かった、強かったお前が生き残った。ただそれだけだろ」

「それだけって………人を殺したんですよ?」


 倫理観バグってるのかこの男、とむっと思いながら三上が反論すると、男は自分の足元に視線を向けてやおらダンダン、と何かを踏み潰すように地ならしをした。


「見ろよ。今、アリが死んだぜ」


 そう言って足をどけてみせると、確かに地面を這っていた蟻が数匹ひしゃげて死んでいた。


「虫と人とは違いますよ」

「いや、違わねぇ。。殺せるって意味じゃぁ同じ生命だ。生き死にを語るならな、ダブルスタンダードや差別はあっちゃいけねぇんだ。本質を見なきゃな」


 そう言って男は足を組み、ベンチの背もたれに体を預ける。


「世の中に蔓延っている欺瞞や虚飾、そういった不必要なものを全て取り払って本質だけを見るとな、どんなルートを辿っても最終的には弱肉強食に行き着く。それはどんな高尚な論者が綺麗な言葉を重ねようと屁理屈にもならねぇ、揺るがない事実だ」


 進化論を参照するならば、種が繁栄するのに必要なのは確かに適者生存だ。だが、そうしたマクロではなくミクロな視点を必要とする時、個が栄達するにはまず弱肉強食を生き残る必要がある。


「金、権力、武力―――その全てが本質的に暴力だ。他者を思いやること無くそれを思いのままに振るうのなら、逆に振るわれることを覚悟するべきだし、振るわれて抗えないなら大人しく、潔く死ぬべきだ。もしもアリが俺に反逆して下せるってんなら、俺は潔く食われてやる。無論、負けたと思うまでは抵抗するがな」


 男はそう言って蟻の死体を見下す。それが勝者の特権だ、と言わんばかりに。


「世の中にある暴力ってのはな、もっと気軽に、もっと自由に理不尽に振るっていいんだ。だが同時に、他者に下されるようなことがあるなら潔く気軽に振るわれる暴力に身を委ねろ。後の事は、気ままに暴力を振るった者ではなく、それを下した勝者が決めることだ」

「そ、そんな………」

「極論か?暴力を悪だと宣うか?では小僧が殺した狂信者はどうだ。狂信者に殺された連中は?」


 言っていることが無茶苦茶過ぎる、と思いつつも三上が反論しようとすると男は三上の経験談を引き合いに出した。


「What goes around comes around.因果応報っつーんだっけか、この国では。小僧が殺した狂信者共にも家族がいたかもしれん。それなりの生活はあっただろう。だがそれら全てを棚に上げて、奴らは暴力を振るった。何の罪もない一般市民を理不尽に蹂躙した。なら、自らを上回る相手に力及ばず蹂躙されたとしても文句は言えねぇのさ。何か文句を言うのなら、それは単なる逆恨みだ」


 後先を考えない刹那的な生き方が出来ないのならば、暴力など振るってはならない。相互監視と事後の懲罰があるからこそ、人間社会は秩序を以て成り立つのだから。


 だがもしも、その秩序を超えて自らの意思を貫くというのならば。


「そう、力だ。誰よりも強い力がいる。例え相手が誰であれ、やるからには勝つのは、生きる上での鉄則だからな。まぁ、俺は刹那的な生き方が信条だから相手がどれだけ強かろうが面白ければ挑みに行くがよ」


 男がまるで餓狼のような獰猛な笑みを浮かべ、三上は今更になって背筋を凍らせる。


「だが、小僧はやるやらねぇ以前の問題だな」


 男が、すっと三上を見下すように見据えた。事ここに至って、ようやく三上は気づく。


「生きてねぇ、小僧は。物理的に生きていても、精神的に死んでいる。そこら辺の有象無象と変わらん」


 まるで蛇に睨まれた蛙のように、三上は指1つ動かせなくなった。


 眼の前の男は、単なる傭兵ではない。もっと別の、化け物に近い何かだ。本能が今更警鐘を鳴らす。この男に近づくなと。この男に耳を貸すなと。だが、心が萎縮し男が放つ強烈な気配に屈服する。


「何が大事か、何のために暴力を振るうか、自分が自分であるための土台が貧弱過ぎる、小僧は。だからぐじぐじうじうじ、他人を殺した程度で揺らぐ。自然界を見てみろ。弱い肉を食らった程度でたじろぐ強者などいるものか。堂々と仕留めた獲物を俺のもんだと食らっているだろう?泣きながら他者を血肉にする動物がどこにいる?人間社会だって一緒だ。どんな種類であれ、力を奮って下したなら堂々としていればいいし、力及ばず下されたのなら潔く食い物にされてろ。それに文句があるなら相手より強くなっときゃ良かったんだから。生命生存の本質から目を背けて、戦いもせずに温い言葉遊びに耽った結果がそれなんだ。むしろ食われて本望だろうよ」


 勝てない、と理屈ではなく本能に近い部分で納得する。ガチガチと歯の根が合わなくなり、呼吸が段々浅くなる。隣で、気負いもせずに座って持論を展開しているだけだというのに、三上はこの男に逆らえなくなっていく。


「そこで得た感情はどうあれ、小僧も一時は勝者になったんだ、みっともないままでいるのは、殺した奴らに対する冒涜だろうに」


 まるで三上を憐れむように男が諭していると。


「パパ―――!」


 公園の入口から、久遠の声がした。


 直前までは式王子が手を引いていたのだろうが、久遠は三上を見つけてそれを振りほどいて駆け出していた。この化け物と一緒にいる、自分の元へ。


 駄目だ来るな、と声を出す暇さえあれば。


「まーだ分からねぇか。まぁ、まだガキだしな。―――じゃぁ、『』」

「ぐっ………!」


 その一言で三上は身体に鉛でも入れられたかのように身動きが出来なくなり、しかし視界は強制的に男とこちらに向かって走り来る久遠を捉える。


 すっと音もなく男が立ち上がり、不穏な気配を漂わせたままこちらに来る久遠に向かって悠々と足を向け―――。


(こんの………!)


 何をされるか分からない。分からないが、それを許してはいけないと三上は反射的に身体を縛る何かを振り払って男の腕を掴んだ。


「動いたな?」


 それに満足したのか、男は不穏な気配を消散させた。


「アンタ、今何をしようとした!?」

「決まっている。あのガキを殺そうとした。少なくともその殺気は感じれたんだろう?『見てろ』、と言ったのに小僧は動いた。あれは俺の異能でな。抵抗レス値にもよるが、破る意思がねぇならそのまま動けなかったはずだ」


 男は皮肉げな笑みのまま、しかし獰猛な色を宿した瞳で三上を射抜く。


「だが小僧は動いた。ガキが大事だから動いたんだろう?ガキを守るために、力を振るおうとしたんだろう?なら、それが小僧の土台だ。その本質をちゃんと理解し、人を殺した程度で揺るがないぐらいには固めろ。でねぇといつまでも死んだままだぞ」


 まるで狩人が幼い獲物にもっとデカくなってから出てこいと見逃すような、そんな感覚に近いものを覚えて、三上は戦慄したまま立ち尽くした。


 そんな二人を余所に、久遠がとてとてと走り寄ってきて。


「おじちゃんだぁれ?」

「なぁに、単なる通りすがりだ。ガキが気にしなくてもいい。―――じゃぁな」


 こてんと首を傾げる彼女に、男は思ったよりも優しい手付きで頭をぽむぽむと撫でて去っていく。


「何だってんだ、一体………」


 それを見送って呟く三上に、答える声はなかった。




 ●




 ゆっくりと日が落ちゆく街並みを歩きながら、巨躯の男―――シュガールは先程の邂逅を胸中で反芻する。


(成程成程………守護者、ねぇ………)


 相手はまだ子供。確かに法律に照らし合わせれば大人扱いの区分ではあるし、身体は大分仕上がっていた。同年代の少年と比べれば、数年程成長に差があるのではないだろうか。しかしそれでもまだ精神面での脆弱性が隠せない。


 だが、守護者の名のままに、守るべき者を前にシュガールの言霊を打ち破った。それは評価できる。


(悪くはねぇ。完成していないのは残念だが、その片鱗はある。問題は、こっちの計画の大詰めまでに間に合うか………?)


 流れ次第だが、メティオン枢機卿は後一月の内に実行に移すと見ている。そうなればもう止まらない。悠長に修行している時間や心を定める押し問答などやっている時間など無い。シュガールも立場上はJUDAS。そしてメティオン枢機卿の補佐なので、実働部隊として動き始めたら容赦はしない。


(今のままじゃ満足には程遠い。だが、育ちゃそれなりにはなる。満足するとなるともうひと押しぐらい欲しいんだが………翠の巫女に期待かね)


 もしもあの少年が守護者として因子を譲渡されているのなら、その特性が発露するはず。今はそれに期待するしか無いだろう、とシュガールが胸に宿る獣性を持て余しながら思っていると懐のPITが震えた。手にとって見ると、枢機卿からの着信。こちらも報告があるので、直ぐに通話状態にする。


「俺だ」

『どうかね。進捗は』

「確定だ。例のガキが巫女だな」

『ほう。言い切るぐらいに確信したのか』

「近くで見てそうだとは気づいたが、タイミングが良くてな。接触できた」

『接触?』

「頭に触った」


 そう告げると、電話の向こうの老人はしばし黙った後で。


『―――それは通報される奴なのでは?』

「それはそれで楽しみだな。ここんところフラストレーション溜まっているから、雑魚でも蹴散らしゃ少しは気も晴れるだろうよ」

『計画に支障が出る。やめろ』

「どうでもいい。ともかく、ガキがそうだ。触れた瞬間、と同じ感覚を覚えた。普通のガキに、あんな超越者みたいな気配が潜んでいるもんかよ」


 ともあれ、巫女は見つけた。因子持ちの姫も補足している。状況は整いつつある。後は時期を見て、奪取。用意してある計画に組み込んで実行。この国での活動も、終りが見えてきた。


『奪取計画はこちらで立てる。お前は―――』

「少し暴れてくる。朝には帰るさ」


 シュガールがそう告げると、通話の向こうで唸る声が聞こえた。


『おい、私はやめろと言っただろう』

「俺はどうでもいいと言っただろ?」

『これだから血の気の多い蛮族は』

「研究でオナニーできる変態に言われたかねぇよ」


 売り言葉に買い言葉で互いに罵り合い、はん、とシュガールは笑みを浮かべる。


「そもそも、俺の目的とお前の目的は違う。その上、今回の俺の立場は単なる協力者だ。力を貸してやっているだけで、命令される言われはねぇ」

『教皇猊下から命を下されているだろう?』

「ああ。手伝うように、とな。残念だが、お前の言葉に唯唯諾諾と従えだなんて言われちゃいねぇよ」


 言葉で畳み掛け、そして最後に伝家の宝刀を抜き放つ。


「文句があるならあの方に言え。あの方が言うのなら、従ってやる。―――まぁ、そんな事は天地がひっくり返ってもありえんがね」

『貴様………』


 彼等にとって、それこそシュガールすら例に漏れず教皇は絶対だ。彼の存在が口にした言葉を、信者達が違えることは決して無いが解釈や曲解はするし、それを咎めることは教皇もしない。


 故に、シュガールは手伝えと言われた以上は手伝うが、そのやり方や程度までは彼に一任されているのだ。そしてもしもそれに対して枢機卿が教皇に文句を言ったとしても、『手伝ってくれているのだから上手く使え』としか言わないだろう。


 シュガールから見て、あの存在は自由と本質を愛し、虚飾と腐敗を嫌う。それと同時に責任と義務を重んじる性格をしている。殊更厳格ではないが、甘さと優しさは明確に区分するタイプだ。少なくとも、枢機卿が訴え出ればそれは甘えと見るだろう。


 それでも尚シュガールを従わせたいのなら、直接戦って下すしか無い。


「それとも―――俺と殺し合うか?


 通話の向こうで、息を呑む音が聞こえた。


 シュガールという男は、JUDASの中で最強ではないが、五指に数えられる程度には上位。そして世界的な評価も『歩く天災ウォーキング・ディザスター』に数えられる実力者だ。JUDAS内部の序列は直接的な戦闘能力で決まる訳では無い。故に技術畑であるメティオン枢機卿が彼と直接対決したとして、まるで勝ち目はないだろう。もしもオッズが成立するなら、何秒生き残れるか、という趣旨が変わるレベルで実力差がある。


 それを見越しているからこそ、シュガールも強気に出るのだ。


「別に標的に手を出そうってわけじゃねぇ。世の中には死んだ方が世間様が喜ぶ連中だっているんだぜ?そういう連中が死ぬと、公僕も気張って捜査しねぇものさ。きっと自殺や突然死、それか抗争で片付けてくれる。俺が生まれ育った国じゃそうだったぜ」

『余り、目立つな』

「ああ、今は単に血が見たいだけだからな。―――運が良ければ生きてるだろうさ」


 夕日が沈み切り、闇の帳に包まれながらシュガールは口の端を歪める。

 気晴らしなれど、狩りの時間だと。




 その日、統境圏を3分していた反社会勢力の一つが壊滅した。

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