一つ一つの文章から溢れ出んばかりの描写、情感。読む者に、それは濁流となって押し寄せる。
作中に凝縮された言葉の数々は、底知れぬ密度をもっている。
その全てが生々しく、だからこそどこまでも神秘的で、それはまるでどろりと溶けた蛹の中身を思わせるかのようにすら思える。
蛹はつぶさに観察すれば不気味で、実に生々しい。中身を知るものからすれば、尚更だ。
だが、だからこそ、その後に待つ羽化はどこまでも美しく、生命の神秘を帯びているのであろう。
人の一時をここまで生々しく、神秘的に、そして美しく切り取った作品を私は他に知らない。痛いほどに伝わってくる憂鬱さや押し殺された激情も、作者様の筆致の上には滑らかに揺蕩う。…
これこそまさに純文学だ、と声を大にして言いたい。
ぜひご一読ください。