第384話:後輩
「俺はアリウス・ジルベルト。5人の妻と6人の子供がいる転生者だ」
「5人の妻と6人の子供って……いや、ツッコむところはそこじゃない! あんた今、転生者って言ったよな?」
「ああ。俺はおまえがいた世界で一度死んで、この世界に転生したんだよ。疑うなら前世の知識を話しても構わないけど、その前に言うことがある。
俺は他人がどう思おうと構わないけど。みんなが怒っているから、俺を女たらしと言ったことを訂正しろよ」
「いや、だから! この状況を見れば、あんたは女たらし以外の何者でも――」
みんなの視線の圧力が高まって、冬也が言葉を詰まらせる。
「おまえは女子に弱いようだな。それに悪い奴じゃなさそうだし」
「そ、そんなことは……」
冬也が目を逸らす。女子に弱いのは図星みたいだな。
実力を把握していない相手と会うのに、みんなと子供たちを連れて来たんだから。俺は当然、対策を用意している。だけど警戒し過ぎたようだ。
俺たちの周囲には、透明化した『
透明化したのは相手に余計な警戒をさせないためだ。魔法の魔力構造を理解すれば、こんな風に改良することができる。
「なあ、冬也。一応、おまえも名乗ったらどうだよ?」
「ああ、そうだな。俺は
わざわざ大学のことを言ったのは、俺が本当に転生者なのか探るためだろう。
「なんだよ、おまえって俺の後輩なんだな。1年じゃ知らないかも知れないけど、森本教授って今もいるのか? 講義中に雑談しただけで単位を落とすって有名だったんだけど、俺は森本教授の研究室にいたんだよ」
「え……森本を知っているって。あんた……先輩って本当に転生者なんですか?」
ミリア以外のみんなとキシリアとエルザが不思議そうな顔をしている。
みんなには俺が転生者ってことは話しているけど、前世のことをあまり話したことはない。転生した俺にとって、もう過去のことだし。今さら拘るつもりはないからだ。
ちなみに前世のミリアは俺と大学が違う。
「いや、敬語とか要らないから。俺は堅苦しいのが嫌いなんだよ。名前も呼び捨てにしてくれ」
「そういう訳には……じゃあ、アリウス先輩って呼ばせて貰います」
こいつに先輩って呼ばれるのは変な気がするけど。まあ、構わないか。
「冬也は俺に話があるんだよな?」
「はい、そのつもりだったんですけど……情報量が多過ぎて、整理できないんで。ちょっと時間を貰っても良いですか?」
「ああ、別に構わないよ。だったら、みんなでメシでも食べに行くか。冬也、おまえも食べるだろう?」
「はい。ですが、その前に……」
冬也は俺とみんなが正面に来るように向き直る。
「よく事情も知らないのに、アリウス先輩を勝手に女たらしと決めつけて。本当に済みませんでした!」
俺が女たらしじゃないことを証明した訳じゃない。だけど冬也が勝手に決めつけたことは事実で、そのことを謝っているんだろう。
「解ってくれれば構わないわよ」
「私たちだって、別に喧嘩をしたい訳じゃないから」
みんなと子供たちも納得したみたいだ。
「どうやら話が収まったようですね」
キシリアとエルザがホッと胸を撫でおろす。
「皆さんと冬也様を引き合わせたのは私たちですから安心しました。それでは食事にするのでしたら、こちらで用意しましょう」
「冬也はずっとこの城で暮らしていたんだよな? だったら、たまには街に出てメシを食べないか。キシリアとエルザもどうだよ?」
「アリウス陛下と街で食事ですか? はい! 勿論、行きます!」
「私もご一緒させて頂きます! それでは護衛にその旨を伝えますね」
キシリアは元冒険者だけど。エルザはずっと王族として暮らして来たら、外出するときに護衛が付くのは当然だと思っているようだ。
「いや、俺がいるから護衛は要らないだろう。だけど、その格好じゃ目立ち過ぎるな」
みんなも一応正装だけど、そこまで目立つ服は着ていない。それに対してキシリアとエルザは如何にも王女という感じのドレス姿だ。
「アリウス。だったら、これを使えば良いじゃない」
エリスが2人に指輪を渡す。エリスに勧められて指輪を嵌めると、キシリアとエルザのドレスが少しラフなデザインに変化する。
エリスが渡したのは『
「凄い魔道具ですね……デザインも素敵です……」
キシリアとエルザが驚いている。まあ、気に入ってくれたなら良かったな。
「じゃあ、出掛けるか」
俺は『
「え……ここって……」
キシリアとエルザが再び驚いているのは、俺が転移した先がマバール王国の王都の街中じゃなくて。『
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書籍版『恋愛魔法学院』2巻は今日発売です!コミカライズ企画も進行中!Web版から8割くらい書き直しのレベルで頑張りました!みなさん、よろしくお願いします!
各種情報はX(旧Twitter) で公開しています!
https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA
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