第50-2(3)話:出発
書籍版『恋愛魔法学院』PVをYouTubeで公開中です!
https://youtu.be/DVMU1NtSn30?si=AvBzF5TkPSfMGA0l
その他、書籍版の情報についてはX(旧Twitter)に色々と公開しています。https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA
――――――――――――――――――――
午後の授業も終わって、放課後になると。俺が向かう先は――2つ目の
俺は1つ目の最難関ダンジョン『太古の神々の遺跡』を、ソロで完全攻略したんだから。直ぐに次のダンジョンに挑むのは当然だろう。
『魔神の牢獄』に出現する魔物は、悪魔じゃなくて魔神だ。正確に言えば『
1階層に出現する『
黒い
おまけに獄炎のブレスまで吐いて来るし。炎のブレスなのに『
単純に比較すると『太古の神々の砦』のラスボス『
だけど『究極の騎士』は1体なのに、『焔の偽神』は1,000体以上同時に出現するからな。
まあ、強い敵と戦うのは、堪らなく楽しいけど。ソロだと攻撃も防御も完全に
グレイとセレナと一緒に攻略したときは、普通にクリアしたけど。1人だとスキルと魔法を常に全開するしかないから、どうしても継続戦闘能力が落ちる。つまりMPが足りなくなるってことだ。
まあ、新しい階層に初めて挑むときは、いつもギリギリだから。生き残ることを最優先に考えながら、戦闘に集中する。一度攻略したことのあるダンジョンだから、俺がもっと強くなればクリアできることは解っている。一瞬でも気を抜けば、死に直結する戦いを続けることで。自分が強くなっていくことが実感できる。
自分の限界を見極めて、撤退するタイミングを選択する。判断を間違えれば確実に死ぬし、見極めが甘いと強くなれない。
撤退するのも簡単じゃない。階層全体を俯瞰する感覚と、目の前の敵の動きを同時に捉えながら、攻撃と回避の最適解をコンマ1秒毎に導き出す。それができないと、生き残れないからな。
※ ※ ※ ※
そして金曜日になって。俺たちはエリクと王家の別荘へ旅行に行く。
勿論、それは名目で。本当の目的は、ヨルダン公爵を誘き寄せるためだ。
勿論、こんなイベントはゲームにはなかった。
まあ、本音を言えば、俺は今週末も『魔神の牢獄』を攻略したい。だけどヨルダン公爵の戦力は、決して侮れないからな。さすがに放置するわけにはいかないだろう。
「今回は郊外に行くからね。大型の馬車を用意したよ。荷物用の馬車もあるから、そっちも使ってくれるかな」
エリクが用意したのは、金で装飾された白塗りの馬車。荷物用の馬車も同じデザインだ。
みんなが乗る方の馬車は、大型バスのようなサイズだ。中は二重構造になっていて、外側の廊下の部分が、侍女や護衛が待機するスペースだ。
内側の部屋の部分は、柔らかいカーペットが全面に敷かれている。その上にテーブルを囲んで、5人は座れそうな革張りのソファーが2脚に、肘掛け椅子が4脚。小ぶりな広間が、そのまま移動する感じだ。
派手なのは馬車だけじゃない。馬車を引くのは4頭の白馬だ。
しかも普通の馬じゃない。俺は『
旅行に同行するのは、みんなに事情を全部話した上で。本人が決めることにしたけど。結局、全員参加することになった。
バーンが参加することは事前に聞いていたし。ソフィアはエリクの婚約者で、ジークもロナウディア王国の王子だから、同行するのは解る。ジークの婚約者のサーシャも、ジークが同行するならってことだろう。
「ミリアは、なんで参加するんだよ? ダンジョン実習のときよりも、たぶん強い敵が来るから。俺は同行するのを勧めないって言ったよな」
「それでもアリウスがいるから、問題ないでしょう? 本当に危ないと思うなら、アリウスは止めるわよね」
確かに、この人数なら守り切れると俺は思っているし。エリクが用意した戦力に不足はないけど。だからってミリアが参加する理由にはならないだろう。
「私もヨルダン公爵のやり方が気に入らないし。私1人だけ安全な場所で、待っていたくないのよ。アリウスには迷惑かも知れないけど」
ミリアは申し訳なさそうな顔をする。
「いや、ミリアが1人増えたところで、大差ないからな。ミリアが決めたことなら、俺は構わないよ」
「アリウス……ありがとう」
俺たちと馬車に同乗するのは、ソフィアとサーシャの侍女を兼ねた護衛が2人ずつ。バーンとジークも護衛を2人ずつ連れている。あとはエリクの侍女兼護衛のベラとイーシャの計10人だ。
外の護衛は騎馬を駆る10人の騎士と、御者席に座る2人の騎士の計12人。全員白銀の鎧を纏っていて、騎士が乗る馬も全部ノーコーンだ。
ダンジョン実習で教師として俺たちの引率役をしたオスカーや、最下層に一緒に転移したターナ、ジール、ジェリド、ガイアの4人もちゃっかりいる。
だけど護衛の本命は騎士じゃない。今も『
ノーコーンは普通に時速80km以上出るから、前世の車並みのスピードで街道を走り抜ける。こんな速度で走ると振動が凄そうだけど。そこは魔法がある世界だからな。
馬車自体が一種の魔導具で、僅かに空中に浮かんでいる。だから全く振動がないんだよ。滅茶苦茶目立っているけど。
「えっと……なんでボクが呼ばれたのかな? いや、呼んでくれたこと自体は嬉しいんだけど」
マルスが居心地悪そうに、肘掛け椅子に座っている。ちなみに護衛は連れて来ていない。
「ルイス・パトリエ枢機卿猊下から、話は聞いているよね。マルス卿が望んでいるように、僕は君と親交を深めようと思ってね」
エリクがいつもの爽やかな笑みで応えるけど、絶対に嘘だな。
エリクの交渉相手は、マルスじゃなくて。父親のルイス・パトリエ枢機卿自身だから。
何か取引をしたんだろうけど。俺にはマルスが売られて行く子牛に見えるよ。
――――――――――――――――――――
ここまで読んでくれて、ありとうございます。
少しでも気に入って貰えたり、続きが気になる方は、
下から【★★★】で評価とか【フォロー】して貰えると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます