第50-2(1)話:ソロプレイ
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ダンジョンの中とは思えない蒼い空の下に広がる空間。
ここは
空を埋め尽くすのは、鳥のような白い翼が生えた巨大な竜の群れ。頭上の光の輪が、竜族じゃなく神の使徒だと主張しているんだよな。
この魔物の名前は『
それが1,000体以上も同時に出現したら――戦闘好きなら、血が
俺がソロで『太古の神々の砦』の攻略を始めてから、一ヶ月以上が経つ。
360度全方位からの攻撃に、最初の頃は手こずっていたけど。思考と身体を加速させてることで、対応できるようになった。
高速移動と
天上竜相手に距離を取るのは悪手だ。光のブレスの集中砲火を浴びるからな。
群れの中を駆け抜けながら2本の剣に魔力を込める。魔力によって伸びた刃が、天上竜の巨体を真っ二つにする。
剣が届かない敵には第10階層魔法を、魔力を圧縮して叩き込む。
広範囲に魔法を展開すると、自分も巻き込まれるし。天上竜はHPが高過ぎて、普通に魔法を放つだけじゃ仕留め切れない。
だけど攻撃だけに集中している暇はない。周りは全て敵だからな。
光のブレスは、撃たれてからじゃ避けられないから。予備動作と射角で軌道を予測して回避する。敵を遮蔽物として利用するのは当然だな。
『
俺は毎日放課後と週末のほとんどの時間を、『太古の神々の砦』の攻略に費やして来た。『太古の神々の砦』に挑み続けた理由は、一瞬も気を抜けない戦いを繰り返すことで強くなるためだ。
強くなることで攻略速度も継続戦闘能力も上がる。同じ時間を掛けても初めは辿り着けなかった階層も、戦い続けることでクリアできるようになった。
そしてこの週末。俺は金曜と月曜の授業を全部サボることにして、木曜の放課後から『太古の神々の砦』に挑み続けている。
階層をクリアすれば休めるから、ずっと戦い続けた訳じゃないけど。俺は100時間近く『太古の神々の砦』の攻略を続けた。
最下層の攻略を途中で断念すると、一つ上の階層に戻って魔物を壊滅させてから、休憩することの繰り返しで。この週末のうちに最下層に挑むのは、時間的にこれがラストチャンスだな。
あとは1,000体を超える天上竜を全部倒し切れるかだ。戦闘に集中することで研ぎ澄まされる感覚。俯瞰したように全体の動きが良く見える。
俺が動く軌道に沿って、天上竜がエフェクトを放って魔石に変わっていく。
どれくらい時間が経ったのか、集中し過ぎて良く解らないけど。最後の天上竜がエフェクトと化した。
だけど、これで終わりじゃない。ラスボスを倒さないと『太古の神々の砦』を攻略したことにならないからな。
蒼い空から流星のような光が落ちて来る。
光が轟音と共に床に激突すると、出現したのは6本の光の翼を生やした異形の騎士だ。
まるで死霊の騎士のような、グロテスクな漆黒のフルアーマーは、とても神々の砦の守護者には見えないけど。
こいつが『太古の神々の砦』のラスボス『
6本の光の翼が触手のように伸びて襲い掛かる。1本1本が独立した意志を持っているような不規則な動きだ。
両手に持った2本のフランベルジュでも普通に攻撃して来るし。
同時に8回攻撃って反則だよな。しかも一撃一撃の威力が即死レベルの威力――だけど所詮は1体だからな。
同時8回攻撃って言っても、全方位からの天上竜の攻撃よりマシだ。
装甲は硬いし、HPも天上竜の比じゃないけど。攻撃を躱し続けて、HPを削り切れば良いだけの話だろう。
結局、俺は1時間ほど掛けて『究極の騎士』を倒した。ソロだと火力不足だから、HPが高い敵が相手だと時間が掛かるんだよ。
これで当面の目標だったソロで最難関ダンジョンの攻略は達成できた訳だけど。達成感はあるけど、俺は満足していない。
所謂、『太古の神々の砦』は最難関ダンジョンの中で一番攻略難易度が低いからな。
2番目の最難関ダンジョン『魔神の牢獄』は、1階層から天上竜よりも強い魔物が出現する。最難関ダンジョンは
そして他の最難関ダンジョンには、さらに強い魔物が出現する。
ソロで『太古の神々の砦』を攻略したことで、俺は気づいたんだよ。一瞬でも気を抜けば死に繋がる戦い以上に、面白いことはないって。やっぱり俺は、戦闘狂だよな。だけど何の問題ない。全部自己責任だからな。
俺はもっと強い奴と戦って、もっと強くなりたいんだよ。さらに強い奴と戦うために。
だから、これからも俺はソロで、最難関ダンジョンに挑み続ける。行けるところまで。
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