第46-2(5)話:2回戦と昼休み
ミリアが2年生のカミル・ステファンに圧勝。
まあ、エリクは別格として。ミリアは1年生の中で、学院に入学してから一番レベルを上げているからな。当然の結果だけど。
「アリウス、俺にも魔力操作の仕方を教えてくれるんだろう。約束だからな」
バーンにはミリアの試合を見ることで、戦い方の基本を理解させるつもりだったけど。
魔力操作が上達したミリアはSTRが低くても、余裕で3桁のポイントを連続で叩き出して『
まあ、人間は一度痛い目にあわないと、なかなか考え方を変えないからな。バーンには今回の剣術大会で、現実を知って貰うか。
剣術大会の1回戦が全て終わって。1年生で出場した俺の知り合いたちは、ラグナス以外全員勝ち残った。
2回戦もエリクとミリアは順当に勝ち上がって。バーンも組み合わせが良くて、格下の2年生相手に今回も勝利した。
「ボクだって頑張ったけど。相手は3年生だから、仕方ないよね」
枢機卿の息子マルスは2回戦で敗退。
確かに相手は3年生だけど。エリクの要請で出場した昨年の優勝者キース・ヨルダンは例外で。剣術大会に出る大半の3年生は、2年生までに良い成績を上げられなかった奴だから。そこまで強い訳じゃない。
マルスは言い訳をするから、強くなれないんだよ。
そして次の試合は、キース・ヨルダン対ジークだ。
「ジーク殿下。先に言っておきますが、私は手加減するのが苦手ですので。下手に粘らない方が身のためです」
「キース先輩。俺は精一杯やるだけだ」
2回戦までは4つの試合場で同時に行う。ちょうど俺の試合も始まるところだ。
相手はロイガー・ラウドネス。国王派にも反国王派にも属さない中立派のラウドネス男爵の嫡男だ。
「アリウス。おまえの1回戦の試合を見せて貰ったからな。最初から全力で行かせて貰う」
短く切った髪に、鍛えられた身体。ロイガーは武闘派として知られていて、俺としては好感が持てるけど。
「ロイガー先輩。俺も本気で行くからな」
だからこそ余計に手を抜くつもりはない。
俺は一気に加速して、ロイガーとの距離を詰める。
「な……」
ロイガーが反応する前に、剣を魔力の壁を纏わせて弾き飛ばす。
今回も『特殊結界』はポイントを表示するために消滅した。
そしてキース・ヨルダンとジークの戦いの方は――
キース・ヨルダンのスタイルは、バーンと同じ剣と盾のオーソドックスなスタイルで。だからバーンとの実力の差がハッキリ解る。
無駄な力を使わないキースの正確な剣は、ジークを翻弄して。キースの頭上に立て続けに3桁のポイントが表示される。
「……俺の負けだ」
ジークが悔しそうに奥歯を噛みしめる。だけど実力の差は明確だからな。キース・ヨルダンは確かに強い。ジークがあっさりと負けを認めたのは正解だろう。
「さすがは去年優勝者ね。
ミリアたちには、エリクがキースに剣術大会に出場するように要請したことと、その
ミリアたちはキースと対戦する可能性が高い。もしキースが何か仕掛けて来たら、事情を知らないと対処が遅れるからな。
まあ、俺はキースが剣術大会で、何か仕掛けるようなリスクを負うとは思わないけど。
「ミリア。警戒するのは良いけど、キースだけに注目するなよ。相手がキースとは限らないからな」
「ダンジョン実習のときと同じように、
ミリアは俺と同じ転生者だからか。冷静に状況を分析している。
「その通りだけど、あくまでも可能性の話だよ。何も起こらないかも知れないけど、用心しておくに越したことはないからな」
2回戦が全部終わったところで、昼休みになる。
エリクとジークはアルベルト国王と来賓の貴族たちと会食。バーンはいつも自分のサロンで昼飯を食べるから。俺はミリアと一緒に学食に向かう。
「アリウスもミリアも大活躍だったわね」
学食でソフィアと合流する。ソフィアとミリアは仲が良いからな。
ソフィアと取り巻きの貴族女子たちがいつも使っている、一番奥の広いテーブルで一緒に昼飯を食べることになる。
周りにいるのはビクトリノ公爵家の派閥に所属する貴族の女子たちで。ミリアを平民だと率先して馬鹿にして、トラブルを起こしたイザベラとローラもいる。
だけどミリアは、もうそんなことは忘れたように、2人とも普通に話しているし。同じテーブルに別の平民の生徒も混じっている。
他のテーブルの生徒たちも、今日は特に俺とミリアに注目している。
まあ、俺の場合は派手にやったから、自業自得だけど。他の生徒たちのミリアを見る目が、いつもと明らかに違って。興味本位な奴も多いけど。ミリアを賞賛するような目で見ている生徒がいるのは、悪い気分じゃないな。
「ミリアが頑張っていることは、私も知っているわ。だけど、ごめんなさい。正直に言うと、ミリアが2年生相手に、ここまで活躍するとは思っていなかったわ」
「ソフィア、それは仕方ないわよ。私だって自分で驚いているんだから。アリウスは解っていたみたいだけどね」
ミリアが恥ずかしさと嬉しさが混じったような顔をすると。ソフィアは俺を見てニッコリ笑う。
「アリウスは何でもお見通しなのね」
「いや、そんなことないって。俺はミリアが頑張っているから、応援したいだけだよ」
俺の言葉に周りの女子たちが黄色い声を上げて、ミリアが真っ赤になる。
いや、俺にはおまえたちが考えているような意図はないし。そんなことはミリアだって、解っているだろう。
「ホント、アリウスは無自覚って言うか……まあ、私は誤解しないけどね」
「そうね。アリウスは自分の言葉に、相手がどういう反応するか。そういうことには、意外と無頓着よね」
いや、俺は別に思わせぶりな態度はしていないだろう。ソフィアやミリアには、あくまでも友だちとして接しているだけだらな。
俺が不満に思っていることが顔に出たのか。
「勿論、私もアリウスが友だちのミリアのことを思って、やっていることは解っているわよ。だからみんなもアリウスのことを誤解しないでね」
ソフィアがフォローするけど、そのせいで女子たちが『今度はソフィア様と……』とか、また黄色い声を上げる。
まあ、こういう反応には慣れたし。イチイチ反応したら、切りがないからな。直接、俺に話し掛けたとき以外は
「ところで、アリウス。
ソフィアも今回の事情を知っている1人だからな。小声で俺に訊いて来ると。
何の話をしているのかと、周りの女子たちが再び黄色い声を上げるので、ガン無視する。
「まだ動きはないけど、何があるか解らないからな。ソフィアも警戒しておけよ」
まあ、誰が何を仕掛けて来ても、俺が止めるけどな。
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