第46-2(3)話:バーンの試合
バーンの1回戦は第4試合場で行われる。
俺は1回戦を終えて、ミリアの試合はまだ先だから。一緒に観戦することにした。
バーンの装備は黒鉄色のプレートアーマーに、帝国の紋章が入った盾と幅広の長剣。
大国グランブレイド帝国は質実剛健の国だからな。バーンの装備は全部マジックアイテムだけど派手さはない。
対戦相手は2年生。ロズワルト男爵家の息子、ジェフ・ロズワルト。
ワイルド系イケメンで、長身のバーンと比べると小さく見えるけど。身長は180cm弱で、プレートアーマーに剣と盾というスタイルは、バーンと同じだ。まあ、一番オートゾックなスタイルだからな。
バーンとジェフが、試合場で向かい合う。
「先輩には悪いが、俺が勝たせて貰うぜ!」
「バーン殿下。私は2年生ですから、1年生の殿下に負ける訳にはいきませんよ」
「ねえ、アリウス。相手は2年生だけど、バーン殿下が勝つと思う?」
ミリアが真剣な顔で試合場を見つめる。
「たぶんな。バーンが勝てない相手じゃないと思うけど」
俺は『
『
「思う
ミリアが俺の発言を拾う。ミリアも結構鋭いよな。
「まあ、バーンの試合を見れば解るよ」
試合が始まると、バーンとジェフは同時に駆け寄って。正面からぶつかり合う。
お互いにダメージが入って、『
バーンの方がステータスが高い上に、装備の性能も上だから、バーンの方がポイントを稼いでいるけど。攻撃が当たる回数は、ほとんど互角だ。
「先輩、やるじゃねえか!」
「バーン殿下もですね」
普通の奴が端で見ていると、力と力のぶつかり合い間で。手に汗を握る熱い戦いって感じだろう。観客席もバーンとジェフの戦いに湧いている。
だけどこれはバーンの戦い方の根本的な問題だな。バーンは力任せに正面から戦うだけで。盾や剣で受けることはあっても、躱すことをしない。
しかもステータス頼りで動きが雑だから、相手の攻撃を受け損なうんだよ。
ジェフの方は、それなりに戦闘技術を学んでいるらしく。基本に忠実で卒がない動きだ。
だから的確に攻撃を当てているけど。バーンのステータス任せの強引な動きに、押され気味だ。
つまりバーンが真面な戦い方を憶えれば、もっと楽に勝てる相手なのに。結構な接戦になっている訳だ。
「先輩もやるな。次は全力で行くぜ――『
バーンが片手剣スキルを発動する。『粉砕剣』は魔力で攻撃力を高めるスキルで。第1階層魔法の『
「『
だけどジェフも防御魔法を発動して、バーンの攻撃を受ける。
バーンは『粉砕剣』の連続攻撃で『防壁』を破壊したところで、スキルの発動時間が終わる。
まあ、わざわざ宣言してからスキルを発動したんだから。対策を立てられるのは当然だな。
結局、バーンはポイントの差で押し切った。とても完勝と言える結果じゃないけど。
それでも2年生を相手に勝った訳だし。ゲームだと、熱い戦いをしたように演出をされるだろうけど。現実の戦いを知っている俺には、正直物足りない試合だった。
「アリウス、俺も勝ったぜ!」
だからバーンが思いきりやり切った感で、暑苦しい笑顔を見せると。俺は思わず本音を言ってしまう。
「確かにおまえは勝ったけど。もう少し格上が相手だと、勝つのは難しいからな」
「何だよ、親友。随分と厳しい言い方だな?」
隣りで見ているミリアも戸惑っているけど。
「俺はバーンなら、もっと強くなれると思うから言っているんだよ」
これも本音で。バーンが真面目に鍛錬すれば、学院の剣術大会くらいなら優勝を狙えるようになるだろう。
まあ、エリクがいるからな。本当に優勝するのは難しいけど。
「ああ、そういうことか。アリウスが期待してくれて嬉しいぜ」
「いや、バーン。そういうことじゃなくてさ。俺が言いたいのは、おまえは才能に胡坐を掻いているってことだよ」
こんなことを言っても、バーンはピンと来ないみたいだな。
「とりあえず、バーンはミリアの試合を良く見ておけよ」
「え……私の試合? アリウス、どういうことよ?」
ミリアがさらに戸惑っているけど。
「ミリアの戦い方を見れば、バーンは自分に何が足りないか解る筈だからな」
勝手に私を巻き込まないでと、ミリアに睨まれる。だけど本当のことだからな。
1回戦の試合が次々と消化されて。第1試合場で最後に行われる8戦目が、ミリアの試合だ。
ちなみにエリク、ジーク、キース・ヨルダンは順当に勝ち上がって。枢機卿の息子のマルスも勝った。まあ、マルスも『恋学』の攻略対象で、ハイスペックだからな。
エリクの取り巻きの1人で、クロフォード公爵の息子ラグナスも参加したけど。1回戦で敗北している。
まあ、対戦相手は上級生だからな。普通の1年生じゃ勝てないのは、仕方ないだろう。
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