第288話:シリウスとアリシアのパーティー

「ヘルガさん、ゲイルさん。そろそろ僕たちも、アリウス兄さんと話がしたいんだけど」


「そうよ。いつまでもアリウスお兄ちゃんを独占しないで」


 さっきまで、双子の弟と妹のシリウスとアリシアは、冒険者仲間のグレイスとミーシャと、打ち合わせをしていたけど。2人が近づいて来たことに、勿論、俺は気づいていた。


 だけどゲイルたちとの話が、まだ終わっていなかったからな。ゲイルたちを優先したんだよ。


「解ったよ、仕方ねえな。アリウスさん、ガキどもの相手をしてやれよ」


 ヘルガはカウンターまで、酒のボトルを取りに行くと。そのままカウンターで飲み始める。


「シリウスとアリシアも、アリウスに会うのは久しぶりなんだよな。おっさんたちが邪魔して悪かったな」


 ゲイルも大人の対応で、俺たちのために席を空けてくれる。

 シリウスとアリシアは学院を卒業してから。冒険者として本格的に活動を始めて。カーネルの街を活動拠点にして、宿屋暮らしをしている。


 だから俺がカーネルの街に来たときしか、2人に会う機会はない。だけど久しぶりと言っても、この前来たのは2週間くらい前だ。


「アリウスお兄ちゃんは、私たちがカーネルの街にいるのに。全然会いに来てくれないんだから」


 アリシアが上目遣いで、頬を膨らませる。


「いや、俺はそこまで頻繁に、カーネルの街に来る訳じゃないからな」


「そうだよ、アリシア。アリウス兄さんは忙しいんだから、わがままを言ったらダメだよ」


 シリウスは大人ぶるけど。


「だけどアリウス兄さん、もうゲイルさんたちとの話は終わったんだよね?」


 期待に満ちた目で俺を見る。


「ああ、とりあえずな。だけどシリウスとアリシアも、本格的に冒険者として活動するなら、俺よりも仲間と一緒にいる時間を増やせよ」


 冒険者がパーティーで上手く連携するには、相手のことを良く理解する必要があるからな。普段から一緒に過ごす時間を増やした方が良い。


「アリウス兄さん。勿論、解っているよ。だからグレイスとミーシャも一緒で良いよね?」


「グレイス、ミーシャ!」


 アリシアが手招きすると、グレイスとミーシャがこっちに来る。


「グレイス、ミーシャ。シリウスとアリシアが世話になっているな。おまえたちの方が経験が豊富だから、2人に色々教えてやってくれよ」


「アリウスさん。ミーシャはともかく、俺がシリウスやアリシアに教えられることなんて、ないと思うぜ」


「私だってそうですよ。シリウスとアリシアは飲み込みが早くて、自分で考えて工夫するから。私の方が2人にフォローされているくらいですよ」


「そんなことはないよ。グレイスは色んな魔法を上手く使いこなしているから。すごく参考になるよ」


「ミーシャはパーティーのリーダーとして、常に周りを見てくれるから。安心して戦えるわ」


 シリウスとアリシアが本格的に冒険者として活動を始めてから、まだ1ヶ月くらいだけど。これまでも休みの日限定で、グレイスとミーシャとパーティーを組んでいたし。

 4人とも仲が良いし、相手のことを尊重しているから。パーティーとして、上手く行っているみたいだな。


「ねえ、アリウスお兄ちゃん。私たちがどれくらい成長したか、見て欲しいわ」


「だからアリシア、アリウス兄さんは忙しいんだよ。僕だって時間があるなら、見て欲しいけど」


 最後にシリウスとアリシアの戦いぶりを見たのは、2人の誕生日に模擬戦の相手をしたときで、4ヶ月くらい前だ。

 グレイスとミーシャとパーティーを組んで戦っているところは、見たことがない。


 別に興味がない訳じゃないけど。弟と妹に対して、俺の方からイチイチ口出しするつもりはない。2人も冒険者なんだから、基本的には自己責任だからな。

 だけど2人が俺の意見を聞きたいなら、断る理由はない。


「だったらグレイスとミーシャが問題なければ、明日の午後、ダンジョンに付き合うよ。『伝言メッセージ』で場所を教えてくれれば、そこに行くからな」


「アリウスさん。俺は全然構わないぜ」


「私だってそうですよ。むしろアリウスさんと一緒にダンジョンに行けるなんて光栄です」


 グレイスとミーシャも問題なさそうだな。


「アリウス兄さん(お兄ちゃん)、ありがとう!」


 シリウスとアリシアが嬉しそうに、声を揃える。


 話が決まったことだし。4人が飲み食いした分も俺が払って『自由の国』に帰ろうとすると。


「アリウス兄さん。僕も冒険者者として稼いでいるんだから、自分の分は自分で払うよ」


「そうよ。アリウスお兄ちゃんの気持ちは嬉しいけど、そこは譲れないわ」


 シリウスとアリシアに断られる。


「俺も毎回アリウスさんに奢って貰うこは気が引けるからな」


「みんながこう言っていますので。私も結構です」


 グレイスとミーシャまで。まあ、空気を読んで、断るかもとは思っていたけど。

 ミーシャはマルシアの妹で。マルシアなら、絶対に俺に奢らせるところだけど。姉妹でも全然性格が違うな。


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