第255話:市場(マーケット)
最初に立ち寄った
それぞれの店が扱っている品は、貴金属や宝石類などの宝飾品に、高価な素材を使った服や鞄などの服飾品。あとは魔道具など値が張るモノばかりで。卸売価格で売っているから、金持ちの観光客が数多く訪れるそうだ。
俺たちが店に入ると、他の客たちの視線が集まる。興味本位や、男たちの嫉妬の視線。
ここにいる客の多くは、俺たちが誰か知らないだろうけど。俺は5人の美人と一緒にいるんだから、仕方ないよな。まあ、俺たちは他人がどう思おうと関係ないけど。
「なかなか品質の良い物が揃っているわね。品揃えも悪くないし」
エリスは完全に商売人の目で品物を見ている。
「ねえ、ノエル。この鞄、小さくて可愛いわよ」
「うん。マジックバッグだから、小さくてもたくさん物が入るみたいだね」
他のみんなは服や鞄が気になるみたいで。楽しそうにお喋りしながら眺めている。
「ジェシカには、こういう服も似合うと思いますよ」
「え……そうかな? 私は動きやすい格好ばかりで、こういう服はほとんど着たことがないから。ソフィアの方が似合うんじゃない?」
ソフィアとジェシカが見ているのは、背中が大胆に露出した赤いドレス。スリットも足の付け根まで大胆に入っている。
「ねえ、アリウスもジェシカに似合うと思いますよね?」
「そうだな。動き易そうだし、俺もジェシカに凄く似合うと思うよ。大胆過ぎるから、他の奴には見せたくないけどね」
「そ、そうかな? アリウスがそう言うなら、着てみようかな……」
ジェシカはソフィアと一緒に試着室に入る。しばらくすると、着替えが終わったらしく。俺は試着室に呼ばれる。
「ア、アリウス……ど、どうかな?」
ジェシカが恥ずかしそうに言う。
背中と太腿が大胆に露出した赤いドレスは、ジェシカの身体にフィットして。無駄な肉はないけど、出るところは出ているボディラインがハッキリと解る。
髪型もソフィアが髪型を服に合わせてアレンジしたんだろう。化粧もしていて、今のジェシカは凄く大人っぽく見える。
「うん、凄く良く似合っている。ジェシカ、綺麗だよ」
「アリウス……ありがとう!」
ジェシカは顔を真っ赤にしながら、嬉しそうに笑う。俺はこのドレスをジェシカにプレゼントすることにした。
それから俺は他のみんなとも、一緒に服や鞄を見て回って。それぞれが似合うモノや、気に入ったモノをプレゼントした。
みんなは無題遣いするような性格じゃないから、遠慮したけど。
「俺がみんなにプレゼントしたいんだよ。荷物も俺の『
「「「「アリウス(君)、ありがとう(ございます)!」」」」
女子の買い物好きは、俺も解っているからな。たまに出掛けたときくらいは、じっくり買物を楽しんで貰う。
「エリスには、これが似合うと思うんだけど」
商売人目線で品物を見ていたエリスにも、似合いそうなモノを選んでプレゼントした。 俺が選んだのはピンクゴールドのオープンハートのペンダントだ。
「エリス。気に入らなかったら、他の物に変えても構わないからな」
「アリウス、そんなことはないわ。とても可愛いじゃない。アリウスが私のために選んでくれたことも含めて、物凄く嬉しいわよ」
エリスが思いきり抱きついて来る。
その後はみんなが俺の服も選ぶと言い出して、着せ替え人形にされたり。午前中いっぱい買物してから、昼飯を食べに行くことにする。
俺たち向かったのは海鮮料理のレストラン。新鮮なロブスターや蟹、牡蠣が載った皿がテーブルに並ぶ。
バターとガーリックで炒めたモノや、ソースで味付けしたモノがメインだけど。生魚のカルパッチョもある。転生者の俺とミリアーとしては、刺身は醤油で食べたいところだけど。
「どれも美味しいけど。アリウスが肉料理以外を選ぶなんて、めずらしいわね」
「俺も魚介類が嫌いな訳じゃないし。港市国家モルガンは海鮮料理が美味いと評判だからな。せっかく来たんだから、みんなも美味いモノが食べたいだろう」
昼飯を食べ終わると。午後は別の
午前中に行った高級品を扱う市場とは一変して、雑多な感じで。観光客相手というよりも、現地の人が日常的に使う市場だ。
食材や酒、雑貨から普段着るような服など、様々な品物を売る店が並んでいて。料理や飲み物の屋台もたくさん出ている。
魚介類を売っている店は、さすがは港市国家モルガンって感じで。並べられているモノはどれも新鮮だ。
「ねえ、アリウス君。あのドーナツみたいの美味しそうだね」
「ドラゴンフルーツ? この果物、初めて見るわ。どんな味なんだろう?」
俺たちは店を見て回りながら試食をしたり。露店で飲み物やスイーツを買って食べ歩きする。午後の早い時間だからか、そこまで人通りは多くない。見て回るにはちょうど良いな。
ここでも周りからたくさんの視線を感じる。まあ、みんなと一緒だから目立つのは仕方ないけど。さっきの市場とは違うのは、嫉妬以外の悪意を感じることだ。
買い物客に混じって、俺たちの様子を窺うガラの悪い男たち。港市国家モルガンの治安はそこまで良くないからな。
俺たちはそれなりに金を持っていそうに見えるし。特にエリスとソフィアは、とても平民には見えないだろう。
「アリウス……」
「うん。ちょっと警戒した方が良いわね」
最初に反応したのはジェシカとミリアだ。ジェシカはSS級冒険者で、ミリアも200レベル超えの王国諜報部の主力クラスだからな。
「あら、ジェシカとミリアが警戒するような相手じゃないわよ。相手が仕掛けてきたら、対処すれば良いだけの話だわ」
エリスも最初から気づいていたんだろう。だけどエリスは魔族との取引きのために、自分も魔族の領域に行くから。これくらいの状況は全然余裕みたいだな。
「そうですね。アリウスが一緒ですし、問題ないと思いますよ」
「アリウス君。何かあったら、私も頑張るからね」
みんなの中で、ソフィアとノエルだけレベルが低いけど。それでも50レベルを余裕で超えているからな。相手のレベルを考えれば、警戒するほどじゃないことは解っている。
だけどみんなと一緒に旅行を楽しんでいるときに、邪魔されるのはウザいからな。
突然、市場のそこかしこで騒めきが起きる。いきなり意識を失って倒れる奴が
「ねえ、これってアリウスがやったのよね?」
ミリアの言葉に、みんなが俺を見る。ノエルは驚いているけど。ミリアとジェシカは呆れた感じで。エリスとソフィアはクスクス笑っている。
まあ、その通りで。こっちの様子を窺っていた奴らと、一緒にいたガラの悪そうな連中の意識を刈り取ったんだよ。
方法はシンプルで、順番に手刀を叩き込んだ。
俺は
俺が何をしたのか、他の奴は誰も気づいていないだろう。
「でもさすがに、やり過ぎじゃない?」
「そうだよ、アリウス君。なんか、逆に可哀そうだよ」
ミリアとノエルがガラの悪い男たちの心配をしている。
「まあ、気絶させただけだから問題ないよ。もう少し市場を見て回ろうか」
その後も俺たちが移動する先で、突然意識を失う奴が続出したけど。
誰一人殺していないから、問題ないだろう。
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