第191話:『世界迷宮』攻略の日々
俺とグレイとセレナは魔界に戻って1ヶ月。
俺たちは
「貴様も、なかなかの腕のようだが。この俺に勝てる筈がないだろう!」
世界迷宮第8階層の守護者はヘルメス。6本の腕を持つ獣人だ。
まあ、獣人なのは見た目だけで、そういうレベルの強さじゃないけど。
超高速で不規則に曲がる魔力のレーザーの雨と、鞭のように伸びる6本の魔力を凝縮した剣。全てを躱しながら、攻撃を叩き込む。
『
パワードスーツのような鎧を纏う1,000体を超える8階層の
ヘルメスは速度も
視界を埋め尽くす魔力の雨を躱し続けながら。俺は意識を集中して、魔力を限界まで集約して、攻撃を繰り返す。
どれくらい時間が経ったか解らないけど、俺の魔力の刃が身体を貫いた瞬間。ヘルメスはエフェクトともに消滅して、巨大な魔石とドロップアイテムが残った。
「世界迷宮はアイテムがドロップする確率が高いな」
「それだけ魔物が強いってことよ」
1,000体以上いた魔物も、グレイとセレナがすでに片づけている。
これで8階層まで攻略した訳だけど、世界迷宮が何階層まであるかは解らない。
まあ、この世界の魔神や神よりも強くなるには、この程度で終わって貰ったら困るけどな。
俺たちは一日中、世界迷宮の
俺たちには『
それでも普通の奴なら精神が疲弊しそうだけど。戦闘狂の俺たちにとっては、ギリギリの戦いを続ける日々は堪らなく楽しい時間だ。自分たちが確実に強くなっていくことを、実感できるからな。
「おまえたちは、また強くなったようだな」
魔界の国イスペルダの王宮に行くと。魔神エリザベートが面白がるように笑う。
ハイネルフォード、ガガーラン、ロンダルキアといった魔将たちが、驚愕した顔で俺たちを見ている。
俺たちは週に一度、魔神エリザベートに模擬戦の相手をして貰っている。
今回も俺たち3人掛かりで、無碍もなく惨敗した訳だけど。エリザベートに勝つどころか、一矢報いるビジョンすら見えていない。
それでもエリザベートまでの距離が、少しずつだけど近づいていることは実感できる。
初めは全く捉えることができなかった動きが、見えるようになって来たからな。
「そう言えば、アラニスはどこにいるんだ? あいつも魔界に来ているんじゃないのか?」
この一ヶ月、アラニスの姿を見ていない。
「アラニスも強くなっていくおまえたちに、何か思うところがあるのだろう。自らを研鑽するために、
魔神エリザベートが嗜虐的な笑みを浮かべる。エリザベートがこんな顔をするってことは、相当ヤバいところなんだろうな。
魔王アラニスは俺たちみたいに、延々とダンジョンの攻略を続けて強くなった訳じゃなくて。魔界で300年近く過ごしたことで強くなった。
だけどアラニスが本気で強くなろうと思ったら、どこまで強くなるか。
以前は魔王アラニスの力に対抗するために、強くなろうと思ったけど。アラニスと肩を並べられるようになった今は、アラニスに敗けたくないとか特に思わない。
この世界の魔神や神に対抗するために、魔神や神よりも強くなる必要があるけど。結局のところは、俺は俺自身が強くなりたいだけだからな。
※ ※ ※ ※
「アリウス、お帰りなさい」
アラニスの城を後にすると。俺は『転移魔法』で地上に戻って、ロナウディア王国のマリアーノ公爵領にあるエリスの居城を訪れた。
エリスは王都にいることや、魔族との交易のために魔族の領域に出掛けることも多いけど。公爵領に自分の城を持っていて、領主としての仕事も完璧にこなしている。
俺がエリスに好きだと告げてから。地上に戻ることができる日は、ほとんど毎日エリスと一緒に夜を過ごしている。
エリスが王都にいるときは俺の家で。魔族の領域に出掛けているときは、『転移魔法』で俺がそこに行く。『
エリスのことは、父親のダリウスと母親のレイアにも話して。弟のシリウスと妹のアリシアと6人で一緒に食事をした。
当然だけど、エリクとジークにも伝えて。アルベルト国王に報告した。婚約はまだ考えていないけど。俺が軽い気持ちでエリスと付き合った訳じゃないことは、アルベルト国王にも伝えてある。
エリスは俺のために夕飯を自分で用意してくれる。肉中心で量がある俺好みの料理だけど。エリスが作る料理は、決して嫌味じゃない感じで上品に仕上がっている。
毎回趣向を凝らしたモノだ。
「エリス、美味いよ」
「ありがとう、アリウス。お代わりも沢山用意してあるから、どんどん食べてね」
2人でワインを飲みながら食事を続ける。
貴族が食事をするときは、普通なら侍女や料理人が世話をするけど。エリスが俺に料理を作ってくれるときは、全部エリスが自分でやる。
エリスにもやることがあるから、毎日そこまでしなくて良いと伝えたけど。俺の食事の世話をすることは、エリスには譲れない線らしい。
食事をしながら話すのは、俺は魔界でのことや世界迷宮の攻略状況。エリスは政治や魔族との取引の話もするけど。途中から他愛のないお喋りになる。
俺が女子と付き合うことになるなんて、全然想像もしていなかったけど。今の俺にとって、エリスと一緒にいることが自然に感じるし。ずっとエリスの傍にいたいと思う。
『俺がこの世界の魔神や神よりも強くなれるって、エリスが信じてくれることは本当に嬉しいよ。だけどエリスにも心配させているよな』
エリスと初めて一緒に過ごした夜。エリスに問い掛けると。
『アリウスのことを心配するのは当然でしょう。だけど貴方の気持ちが解るから、そういうことは諦めているわよ。私は貴方を守ることはできないけど。貴方が帰って来る場所を守ることはできるわ。だからアリウスは安心して、魔界で戦って来てね』
優しい笑みを浮かべながら言うエリスに、やっぱり敵わないなと思った。
「今週末、みんながここに遊びに来る話があるんだけど。アリウス、構わないわよね?」
「ああ、勿論だよ。俺は週末も魔界に行くつもりだけど。夜は予定を入れていないから、みんなで一緒に食事をしようか」
俺は他のみんなとも定期的に会っている。だけどみんなの方が気遣って、エリスが同席できるときは一緒に会うことにしている。
エリスの方も他のみんながエリスに遠慮しないで、俺と話せるようにフォローしているから。みんなとの関係に、以前と大きな違いはないと思う。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 18歳
レベル:14,560(+441)
HP:154,398(+4,683)
MP:235,477(+7,138)
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ここまで読んでくれて、ありとうございます。
少しでも気に入って貰えたり、続きが気になる方は
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書籍版の方はマイクロマガジン社様より発売予定。
イラストレーターはParum先生です。
アリウスのデザインは近況ノートとTwitterに載せました。
https://kakuyomu.jp/users/okamura-toyozou/news/16817330660746918394
https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA
アリウスが何故、眼鏡を掛けているかは秘密ですw
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