第181話:扉の向こう
3日後。俺は再び、魔族の国ガーディアルの魔都クリステアを訪れた。アラニスと約束した場所に行くためだ。
「グレイとセレナも一緒に来るんだね」
アラニスには事前に『
「ああ。俺たちも興味があるからな」
「アラニス陛下の迷惑じゃなければ、是非行ってみたいわ」
「私は強者を歓迎するよ。君たちなら、その資格が十分にあるからね」
俺たちはアラニスと一緒に、クリステアから
辿り着いたのは山岳地帯の上空。特に何もない場所だ。
「この世界で唯一、ここだけが
アラニスは空中に、多重魔法陣を出現させる。立体に展開する巨大な魔方陣だ。
魔法陣が完成すると、光の扉が浮かび上がる。光の扉が開くと、中には深い闇が広がっていた。
「おまえたちは、ここまでで良い。今日は私とアリウスたちだけで行くからね」
アラニスは姿が見えない距離にいる側近たちに告げる。
「深い闇が怪しいと思うかも知れないけど。私を信用して貰うしかないね」
アラニスは
「別に疑う必要なんてねえだろう」
「そうね。こんな回りくどいことをしなくても。アリウスはともかく、私たちじゃ、アラニス陛下に勝てないから」
グレイとセレナは
扉を抜けると闇が消えて。俺たちは赤く焼けた大地が広がる場所にいた。
彼方には同じ色の岩山が連なっているのが見える。
「もう少し移動するよ。シュタインヘルトたちが先に来ているから、後で合流するけど。その前に、君たちを招いてくれた相手に挨拶しないとね」
再び飛行魔法で移動を始めると。前方に翼を持つ巨大な生き物が見えた。
体長10mを超えるドラゴン。だけど普通のドラゴンじゃない。首が3本あるからな。
『鑑定』するとドラゴンは1,000レベルを超えている。地上にいる並みの
「多頭種のドラゴンは地上ではめずらしいけど、魔界には多いんだ。イチイチ相手にするのは面倒だから、振り切るよ」
アラニスが加速するのに合わせて、俺たちも加速する。音速の3倍まで加速すると、ドラゴンは直ぐに見えなくなった。
三つ首のドラゴンの後も、全長20m級の巨人や、金属の甲殻に覆われた巨大な蟹。
しばらくすると見えてきたのは、血のように赤い湖の上に浮遊する都市。
巨大な塔のような建物が立ち並んで。中央にはさらに巨大な要塞のような建物が見える。
俺たちが都市に近づくと、突然出現した奴らが行く手を塞ぐ。
蝙蝠ような翼と山羊ような角が生えた姿。如何にも悪魔って感じだな。こいつらも全員、最低でも1,000レベルを超えている。
「アラニス
顎髭を生やした3つ目の男が、恭しく頭を下げる。こいつは5,000レベル超えだ。
アラニスを陛下じゃくて、閣下と呼んでいるのは、王とは認めていないからか。
「ああ。エリザベート
アラニスが敬称を使うところなんて、初めて見たよ。
俺たちは都市の中央にある要塞のような建物に案内された。
建物の中は全部巨大な造りで。さっき見た20m級の巨人も余裕で通ることができる。
天上の高さが50m以上ある広い廻廊を抜けると、正面に両開きの扉。
中はさらに天井が高い巨大なドームのような広間で――
扉から延びる絨毯の左右には、全員1,000レベル超えの悪魔たちが1,000人以上立ち並ぶ。5,000レベルを超えている奴も、10人や20 人じゃない。
広間の中央には、巨大な玉座があって。玉座の大きさに相応しいサイズの女子が片肘をついて座っていた。
血のように赤い髪と金色の瞳の美女。褐色の肌に赤銅色の甲冑を纏う姿は、悪魔というよりも闘神という感じだ。
アラニスは全然警戒する様子もなくて。3つ目の悪魔に続いて、絨毯の上を歩いて行く。
俺たちは表情には出さないけど、警戒しながら進んだ。
「アラニス、待ちわびたぞ。その者たちが、おまえが話していた強者か?」
「そうだよ、エリザベート陛下。今日はアリウスだけを連れて来るつもりだったけど。グレイとセレナも一緒に来ることになってね」
アラニスとエリザベートは親しげに話している。
『鑑定』してもエリザベートのレベルやステータスは見えない。まあ、予想はしていたけど。
「エリザベート陛下。アリウス・ジルベルトです」
俺たちは順番に名乗って、エリザベートに頭を下げる。
エリザベートの力に、気圧された訳じゃなくて。これは招いてくれた相手に対する礼儀だ。
「別に畏まることはない。私は強い者が好きだからな」
エリザベートは値踏みするように俺たちを見ると、ニヤリと笑った。
「なるほど。確かにアラニス以来の強者のようだな。ようこそ、魔界の国イスペルダへ。おまえたちを歓迎しよう。
私が魔神エリザベート・イルシャダークだ」
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 18歳
レベル:14,060(+47)
HP:149,082(+501)
MP:227,375(+763)
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