第165話:粛清の裏側
みんなのことは真剣に考えているけど。悩んでばかりで、何もしないのは俺の性に合わないし。
強くなること以外に、俺が見つけた
「アリウスはん。あのサンタ髭の男が、『東方教会』の教皇ルード・マクラハンやで」
東方教会の本部がある小国アリスト公国。
俺とアリサは『変化の指輪』で姿を変えて、観光客のカップルを装っている。
俺たちは
教皇ルード・マクラハンは、如何にも人の良さそうな感じの老人で。歓声を上げる信者たちに、ニコやかな顔で手を振っている。
今日は
だけど俺たちの目的は、勿論『生誕祭』目当ての観光じゃない。
勇者アベルとSSS級冒険者序列1位シンが、魔王アラニスに敗北したことで
。反魔王、反魔族の動きは急速に衰えた。
だけど『東方教会』が教義に書いた『魔王とは世界を滅ぼす存在であり、魔族は人類の敵』という姿勢を変えることはなかった。
今でも『東方教会』は魔王と魔族、そして魔族の国ガーディアルと同盟を結んだロナウディア王国とグランブレイド帝国を批判している。
だけど批判するだけで、『東方教会』の主導者たちは何も行動を起こしていない。
まあ、本当は今でも『東方教会』はロナウディアとグランブレイドに、テロリストを送り込んでいるけど。エリクとカサンドラが事件を起こす前に、潰しているんだけどな。
でも結果が出ないのは、やってないことと同じだし。『東方教会』も自分たちがテロリストを送っていることなんて、公にできない。
だから主導者たちは口で批判しているだけだと、疑念を持つ信者は多く。弱腰の主導者たちを批判する者たちも出てきた。
そこで『東方教会』の主導者たちが始めたのが、不満を持つ信者たちの粛清だ。
俺が見つけたやりたいこと。それはこの世界に、積極的に関わることだ。
俺は『魔王の代理人』になって、人間と魔族の争いを終わらせようとした。魔王アラニスとエリクたちが協力してくれたことで、2つの種族の争いはある程度収まっている。
だけど、まだ道の途中だし。人間同士や魔族同士の争いだってある。
俺は自分が正義だとか、自分だけが正しいとは思わないけど。この世界で俺にできることと、やりたいことを。俺は使える手段を全部使って、やっていくつもりだ。
「神が誕生したこの晴れやかな日を。皆と祝うことができたことを、私は嬉しく思う」
教皇ルードは『
「しかし悲しいことだが、『東方教会』の教義に背く一部の信者がいる。その者たちは魔族は敵ではないと吹聴し、魔族との取引で利益を得ている!」
俺たちが始めた魔族との交易に、他の国の商人たちも参加するようになった。
国としては今でも魔族を敵と見做していても。商人が個人として、魔族との取引に関わることは多い。
「そのような者たちが増えれば、魔王と魔族が牙を剥いたときに。我々の団結が乱れて、多くの犠牲が出ることになるだろう! だから我々は裏切り者たちを、断固として許すべきではない!」
大聖堂前の広場に、ロープに繋がれた一団が教会関係者たちに引き摺られるように姿を現した。
手首をロープで繋がれて、さるぐつわを嵌めらたことで。喋ることも抵抗することもできない人たち。
年齢も性別もバラバラで、老人や子供もいる。
「この者たちは『東方教会』の教義に背き、魔族と取引した」
取引した本人だけじゃなくて、家族も含まれているけどな。アリサが全部調べてくれたんだよ。
魔族と取引すれば、血縁者全てを罰するということだ。
「我々は決して裏切り者を許すべきではない。彼らを『ウイットレイ牢獄』に投獄し、自ら罪を悔い改めて貰う」
周りの信者たちが罪人たちに罵声を浴びせて、石やゴミを投げる。
完全に晒し者だけど、非武装平和主義を謳う『東方教会』が信者を処刑することはない――表向きはな。
だけど『ウイットレイ牢獄』に投獄された信者が、二度と外に出ることはない。大半の者は半年以内に
「アリウスはん、どう出るつもりや? アリウスはんなら『東方教会』に喧嘩を売って、あそこで捕まっている連中を強奪することなんて簡単やからな」
アリサがわざと煽るように言う。
「直ぐに処刑される訳じゃないし。そんな派手なことをするつもりはないよ」
『東方教会』が粛清の対象として商人を狙い撃ちにするのには、教会の威光を守ること以外に
「こういうことは、
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 18歳
レベル:13,653(+18)
HP:144,752(+192)
MP:220,774(+293)
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