第111話:相変わらず
「アリウスにお願いしたいのは、君独自の人脈からの情報だよ。僕じゃ絶対に知り合いになれない相手と、アリウスは知り合いじゃないかと思ってね。
僕はロナウディア王国とグランブレイド帝国を、勇者と魔王の戦いに巻き込みたくないんだよ。戦いに加担しても、利がないどころかマイナスだからね。僕は
エリクは魔王アラニスの実力を知っているのか? まあ、エリクなら300年前の勇者と魔王の戦いを調べるだけで。魔王の本当の実力に辿り着けそうだけど。
確かに、俺は魔王と勇者パーティーの両方の情報を手に入れることができる。アリサがどこまで本当のことを教えてくれるか解らないけど。
ロナウディア王国とグランブレイド帝国を戦いに巻き込みたくないなら。俺は有効な情報源ってことだ。
「勿論、情報を一方的に提供して欲しいって話じゃないよ。アリウスが冒険者を続ける上でも、情報は重要だよね。僕の個人的な情報網と王国諜報部を使って。君が知りたい情報を最優先で提供するって約束するよ」
諜報部が協力するってことは、ダリウスも絡んでいるってことだよな。
冒険者に関係する情報については、今のところ必要ないけど。俺としても魔王と勇者の戦いについては、状況を掴んでおきたいし。各国の動向とか内情とか。エリクと諜報部から情報を貰えるのはありがたい。
「エリク、解った。俺もできるだけ協力するよ。だけど俺はダンジョン攻略中心の生活をしているからな。エリクが知りたい情報があったら、教えてくれれば俺が動くってスタンスで構わないか?」
「アリウスの方でも、定期的に情報を調べてくれないかな。あとはそのスタンスで問題ないよ」
魔王アラニスとアリサと定期的に連絡を取れってことか。まあ、俺としても生の情報が欲しいし。特に問題はないな。
※ ※ ※ ※
「……アリウス!」
カーネルの街の冒険者ギルドに行くと。いきなりジェシカに抱きつかれた。
他のみんなに会ったのに、ジェシカに会わないのも何だと思って。『
「ジェシカ……悪いけど、放してくれないか」
「嫌……私はあんたを逃がさないって言ったわよね? なのにアリウスは、いつまで私を待たせれば気が済むのよ……」
ジェシカがどういう意味で言っているのか。測りかねて、何も答えられない。
「……私とアリウスが友だちなのは、解っているわよ。だけど友だちでも、ハグくらいして構わないよね……」
ちょっと強引な気もするけど。俺が一方的に距離を置いた訳だからな。
「ああ。ジェシカ、ただいま。待たせて悪かったな」
「そうよ……馬鹿アリウス!」
マルシアがニマニマしているけど。さすがに今は文句を言わなかった。
※ ※ ※ ※
「え……真面目に7ヶ月以上ずっとダンジョンを攻略していたの?」
アランやゲイルたちも加わって、一緒にメシを食べることになった。
「ジェシカたちだって、毎日ダンジョンに行っているだろう?」
「アリウス君のずっととは違うと思うけどね。あたしたちは基本的に夜には冒険者ギルドに戻って来るし。週に1日は休んでるから」
確かに俺は1週間くらいダンジョンにいることが多いし。何か用事があったとしても、丸1日ダンジョンに行かないってことはないからな。まあ、自分が戦闘狂だって自覚しているけど。
「それで、アリウス君は今何レベルなの?」
「マルシア! そんなこと訊いたら駄目に決まっているでしょ!」
ジェシカは俺の隣に座っている。距離が近いと思うけど、さすがにもう抱きついてはいない。
「俺のレベルを知りたいなら、『鑑定』のレベルを上げろって言っただろう」
「アリウス君はそういうけど。幾らあたしが『鑑定』のレベルを上げても。アリウス君がレベルアップする方が早いんじゃないかな?」
「いや、さすがに……まあ、アリウスさんならあり得るか」
アランが納得しているけど。たぶん俺のレベルの上がり方は想像してないよな。
「私もアリウスさんのレベルには興味あるな。勿論、教えてくれるとは思わねえけど」
ツインテール女子のヘルガがニヤリと笑って。俺のグラスに酒を注ぐ。
「まあ、教えるつもりはないけど。情報を知られると不利になるからな」
「アリウスさんなら、そんなの関係ねえだろう」
「ヘルガ。だからおまえは、まだまだ甘いって言うんだよ。レベルが高い冒険者の方がガードが堅いのは当然だぜ。なあ、アリウス」
ゲイルが口を挟む。
「いや、ゲイル。私だってそんくらい解ってるって」
ヘルガが顔をしかめる。ゲイルを呼び捨てにしているのは、ヘルガもパーティーのメンバーとして認められたってことだな。『鑑定』したから、ヘルガが強くなったことは解っている。
「アリウスさんじゃないですか! お久しぶりです!」
声を掛けて来たのはロングウェーブ女子のレイ。ヘルガの元パーティーメンバーだ。
ちょうど今、冒険者ギルドにやって来たようで。レイの後から、他の4人の女子たちが冒険ギルドに入ってくるところだった。
「レイ。おまえたちも頑張ってるみたいだな」
レイたちを『鑑定』すると。ヘルガほどじゃないけど、レベルが上がっている。
「まあ、なんとかやっていますよ。他の冒険者の先輩方に、助けて貰ってばかりですけど」
「レイ、何やってんだよ……お! アリウスさんじゃん!」
ショートボブ女子が俺に気づいて、ニヤリと笑う。こいつはルージュだったよな。
「私も強くなったからさ。今度、リベンジさせてくれよ」
「おい、ルージュ。馬鹿なことを言うな。アリウスさん、済みません。あとでキチンと言い聞かせますので……おい、みんな。腹が減っているだろう。向こうのテーブルでメシにするぞ」
舌打ちするルージュを引きずって、レイは仲間たちを俺たちから離れたテーブルに連れて行く。レイは相変わらず苦労しているな。
「レイが言っていってたみたいに。あいつらの面倒を見てやっているのか?」
「まあ、勝手に死なれても後味が悪いから。ダンジョンで見掛けたら気に掛けるくらいはしてあげるって。みんなで決めたのよ。レイは良いけど、他の4人は生意気でムカつくけどね」
ジェシカはルージュたちを嫌っているみたいだけど。ジェシカは意外と面倒見が良いから。文句を言いながらも面倒を見ているんだろうな。
「そう言えば、ジェシカ。今度グレイとセレナに会うことになったんだけど。おまえも一緒に行くか?」
「勿論、行くわよ!」
ジェシカが食い気味に応える。
6番目の
「じゃあ、決まりだな。今週の金曜日、ここに10時に迎えに来るから。ジェシカ、その日は空けておいてくれよ」
「ところでさ、アリウス君」
マルシアがニマニマ笑う。
「当然今日は、アリウス君の奢りだよね」
ホント、こいつも相変わらずだよな。
まあ、メシを奢るくらい構わないけど。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 16歳
レベル:5,516
HP:58,068
MP:88,722
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2024年9月29日掲載開始の新作も、よろしくお願いします!『竜の姿になれない出来損ないの竜人、昼も夜も無双する。』
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