第34話:戦闘開始
つまりテレポートトラップを鑑定して飛ばされる座標を特定しても、そこを訪れたことがなければ
だけど問題ない。俺は学院のダンジョンを攻略済みだからな。
ダンジョン実習の授業で仕掛けて来る可能性が高いことが解っていたんだから、事前準備として攻略しておくのは当然だろう。潜入するなんて簡単だし、
勿論、最下層の地図は頭に入っている。俺は待ち構えている奴らの背後を狙って転移した。
そこはラスボスがいる広い玄室で、テレポートトラップで飛ばされる場所はラスボスが出現する座標にピンポイントだった。
案の定、ラスボスが出現する筈の場所を取り囲むように、仮面を被った奴らが待ち構えている。テレポートトラップで飛ばされたらラスボスとこいつらを同時に相手にすることになったってことだ。
だけど俺たちは座標をズラして奴らの背後を取る形になった。鑑定で奴らのレベルとステータスを探る……なるほどね。
「「「「……!」」」」
ターナ、ジール、ジェリド、ガイアの4人は即座に状況判断をして、無言のまま仮面の奴らに背後から切りつける。
だけど相手も索敵スキルで反応して攻撃を受け止めた。
「チッ! どういうことだ? こっちの動きがバレてたってことか!」
「おい、喋る暇があるならさっさと始末しろ! 向こうから飛び込んで来たなら、結果的には同じことだろうが!」
実力的にはターナたち4人の方が上だけど、仮面の奴らの方が人数は多い。
そして奴らは状況も良く理解している。4人がターナたちの相手をしている隙に、残りの2人がこっちに向かって来た。エリクたちさえ殺せば、奴らの勝ちだからな。
だけど、そもそも奴らに勝ち目なんてないんだよ。最初から最下層にも諜報部の連中が潜伏していた。こいつらの計画、完全にバレバレじゃないか。
そして俺の転移魔法が発動する寸前に、1階層にいた諜報部の奴も3人飛び込んで来た。諜報部が動けば仮面の奴らくらい制圧するのは簡単だけど、まだ動くつもりはないみたいだな。
エリクたちの安全を第一に考えるなら、とうに動いているべきだ。だけどまだ動かないってことは仮面の奴らの戦力は分析済みで、いつでも制圧できるってところか。
「なあ、エリクはうちの父親と結託している訳じゃないよな」
「ああ、僕は自分の考えで動いているだけだよ。彼らが動かないのはダリウス宰相の指示だと思うけど、ターナたち4人だけだとちょっときついね。僕は君がいるから1階層に4人残して来たんだけど、全員連れて来るべきだったかな?」
鎌を掛けたつもりだったけど、エリクは平然と答える。こいつも諜報部の動きを把握した上で黙っているってことは、つまり俺が働けってことか。
「エリク殿下もアリウスも何を暢気に喋っているのよ。思い切り攻撃されているじゃない!」
ミリアが焦る気持ちは解る。仮面の2人がスキルと魔法で執拗に攻撃しているからな。
魔法は派手さよりも殺傷力を重視したもので、物理攻撃スキルも確実性を重視している。如何にもプロの仕事ぶりだし、やり方としては間違ってないけど。
「チッ! 何なんだ、この結界は!」
「全然効いてないだと!」
俺の『
「ミリア、解ったよ。ちょっと片づけて来る」
俺は自分だけ『絶対防壁』から出ると、仮面の2人の背後に一瞬で移動する。
奴らが反応する前に左右の手刀を叩き込んで意識を刈り取る。こいつらは生きた証拠だからな。殺したりはしない。
「……ねえ、エリク殿下。この人たち、実は弱いんですか?」
「そんなことはないよ。全員100レベルを超えているから、A級冒険者相当ってところかな」
なあ、エリク。わざわざ解説するなよ。やり難いだろう。
ターナたち4人が相手をしている奴らの方は、数が同じなら放っておいても勝てそうだけどな。実力的にそこまで差がないから、殺してしまわないように倒しておくか。
武器を使った方が目立たないと思ったけど、今さらだからな。残りの4人も手刀だけで意識を刈り取った。
「す、全て一撃だと……さすがは噂のアリウス卿ということか」
「ジルベルト宰相の御子息だから……ということですか?」
ターナたちが唖然としてるけど、こいつらはエリクが手配した訳だし。諜報部の連中もダリウスの配下だからな。今回の件で俺が騒がれることはないだろう。
「ねえ……エリク殿下にアリウス。さっきの
ミリアが俺を睨んでいる。他のみんなも俺の方を見てるんだけど。いや、俺は巻き込まれた方だからな。
まあ、みんなを置き去りにして仮面の奴らを無力化することを優先したからな。文句を言われても仕方ないか。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 15歳
レベル:????
HP:?????
MP:?????
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