中国人とは何か
@MasatoHiraguri
第1話 質実剛健
カッコをつけない、いかにもやっているというわざとらしさがない。どんなに困難で苦しいことでも、さりげなく、春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)のごとく・飄々(ひょうひょう)と・淡々とこなしてしまう。
(以下は、中国人というものに関する私の個人的な感想ですが、テレビ中継を通じて、世界が目撃したことです。)
20年位前、家にまだテレビがあった頃。
中国が初の有人ロケットを打ち上げ、地球を何周かした宇宙飛行士が帰還したというニュースがありました。
テレビカメラが、奥深い森へ入っていくと、青い菜っ葉服(工場労働者が着ている、ポケットが沢山ついた厚手の生地の作業服)姿のお兄ちゃんが、藪の中から「ニイハオ」なんて、片腕を上げて出てきた。パラシュートで、予定の地点(森の中}降りてきたらしい。
私はそれを見て、思わず「これが宇宙飛行士か。まるで、そば屋の出前のお兄ちゃんじゃないか。」と呟きました。
私が小学生の時、祖父に連れられて浅草のある商店街を通ると「そば屋の出前持ち選手権」というのをやっていました。浅草中に何百とある、そば屋・すし屋・うなぎ屋といった店(屋物)の出前持ちから選ばれた精鋭30名が、本物のそばが入ったザル(せいろうのような木の枠)を10枚片手に担ぎ、片手で自転車を操作して数十メートルの道を往復し、そのタイムを競うという競技でした。
さすが、数百人の出前持ちの中から勝ち抜いてきただけあって、ざるを落としたり、転ぶなんてのは一人もいません。まるで曲芸師のように、高いザルの束を器用に泳がしてバランスをとりながら、障害物をよけてスイスイ走ります。
優勝したのは雷門○○庵というそば屋の出前持ちさんで、山形から集団就職で出てきた、とインタビューで答えていました。
数百人のトップに立つ、なんていっても、本当にそん所そこらにいる、人の良いお兄さん・ごくごく普通の若者という感じでしたので、私の横にいた着物姿の男が「ちぇっ、あれくらいなら俺でもできるぜ。」なんて言ってました。
すると、その隣にいた兄貴分のような男性から「バカ野郎。そば屋ってのはな、茹でたて・(冷たい水で)曝したてを、食わせるもんだ。ただ、ぼさっとトロトロ自転車漕いでりゃいいってもんじゃねえ。3つも4つも先の信号の変わるのを計算して、無駄に停まらねえように、人や自転車にぶつからねえように、しかも早く届けなきゃなんねえ。頭と感と経験と度胸のいる仕事だ。おめえみてぇに、ただ壷振ってりゃいいって、もんじゃねえんだ。」なんて、窘(たしな)められていました。(彼らは慶応大学出のお医者さんが聞き書きした「浅草博徒一代」のような、バクチ打ちだったんでしょうか。)
アメリカの宇宙飛行士、なんていうと、アームストロング船長とかオルドリン飛行士とか、名前からして「いかにも」という感じでかっこいい。そして、これまた「いかにも」という感じの、かっこいい真っ白な宇宙服をビシッと着こなしている。
ところが、中国人の宇宙飛行士ときたら、着ている宇宙服はあまり高そうに見えないし、サイズもL・M・Sのスリーサイズしかない既製品という感じ。もちろん、知能・運動能力はアメリカの飛行士達と全く同じであるのは当然でしょうが、なんといっても「エリート」ではなく一井の(街のどこにでもいる)お兄さん、という、庶民的で親しみやすいタイプなんですね。
ところが、こういう、なんでもない・ごくごく普通の(感じの)人間が、とんでもない偉業を、さりげなく成し遂げてしまう。これが中国人ではないか、と私は思うのです。
<引用始め>
「サウジアラビアはかつて88ヵ国に「砂漠に高速鉄道を建設する」ことをお願いした。どの国も「不可能だ」として断ったが、中国だけが引き受けて、10年の歳月をかけて完成させた。」
遠藤誉 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
「バイデン「中東への旅」を痛烈に笑い飛ばす台湾のTV」
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220717-00306003/
→ 日本のNHKの名番組であった「プロジェクトX」で取り上げてほしかった位の、素晴らしい実話です。
また、40年前アメリカにいた頃、来米された鹿島建設中央研究所の所長さんから、こんな話をお伺いしました。
「・・・日本で談合が悪いなんてマスコミが言いますが、まんざら悪いことばかりではない。
かつて、東名高速道路を建設するとき、公開入札によってすべての区間が確定した後で、アメリカのベクテル社が「オレ達にもやらせろ」と、強硬に割り込んできた。アメリカに弱い日本の役人は、しかたなく日本の業者に泣いてもらい、一部の区間をベクテルにあてがった。
しかし、3ヶ月ほどしてから、この金額では割に合わないから、もう300億円出せと言ってきた。冗談じゃない、一度決まった金額で請け負った仕事を、途中で金額変更なんてできるはずがない。契約はもちろんそうなっているし、どんな国の商習慣でも、そんなことはあり得ない。なによりも、国の予算が決定しているんだから、金自体ない。
すると、ベクテル社は、そのまま、仕事を放り出してアメリカへ帰ってしまったんです。困ったのは(現在の)国土交通省です。ベクテルというのは世界一の建設会社で、アメリカ国務省からの天下りや、逆に、ベクテルの重役から政府高官になっている人間も多い。日本政府が文句なんか言えないんです。そこで、大手建設会社数社が「談合」して、各社数億円の自腹を切り、その区間を完成させたのです。」
先ほど引用させて頂いた、サウジアラビアの高速鉄道プロジェクトの話の続きですが、この10年間にわたる大工事で、中国は40億米ドルの損失を被った(同、遠藤誉女史の記事)そうです。
初めの契約よりも4千億円も足が出たといって、米国のように、意地汚く、もっと金を出せと要求したり、子供のように仕事を途中で放っぽり投げる、なんてことはしなかった。
そして「サウジアラビアは、その埋め合わせに「5年間の管理権」を中国に与える」ことで、その恩に報いたそうです。管理権というのは、鉄道収入のすべてを、その期間、中国に与えるということでしょうか。イスラム教が義理堅いのか、アラビア人が人の信義を重んじる民族なのか。(まあ、深読みすれば、鉄道事業などやったこともない彼らが、まず中国人に管理させ、そのノウハウを頂戴したかったのかもしれませんが。)
(私は、こういう関係を「友情」とか「友誼」というのであって、台湾客家が頻繁に口にする「台湾人と日本人の友情」なんて、単なる、どろどろしたえげつない利害関係をカモフラージュする為の目くらまし、にしか過ぎないと感じます。)
また、やはりアメリカで、サンフランシスコの日系人から米国の大陸横断鉄道建設の話を聞きました。
サンフランシスコ-ニューヨーク間の鉄道敷設で、もっとも困難で多くの死傷者が出たのが、ロッキー山脈を越えて西海岸へ出る工事でした。崖崩れ、トンネル崩落といった災害・災難によって工事は難航したそうですが、地道で真面目な中国人労働者(苦力:クーリー)達の「汗と血と知恵」によって、ようやく貫通したそうです。アメリカ人技師とアメリカ人の人夫(肉体労働者)だけで完成させることはできなかった。いち肉体労働者であった多くの中国人たちの知恵と努力(沢山の命)によって、幾つもの難関を突破したのだそうです。
どんな困難な仕事でも、諦めたり投げ出したり、弱音を吐くことなく、黙々と淡々と、目的を追求してやまない中国人。
その苦労や苦心や努力や忍耐を、三国人(台湾客家・ユダヤ人・韓国人)のように(誇張して)宣伝しない。
結果を見てくれという意気であり、かつてのNHKの名番組「プロジェクトX」における日本人(縄文人)と同じなのです。
2022年7月24日
V.3.1
平栗雅人
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