第55話
5ー3 金ですか?
わたしは、なぜか、わたしたちの畑作りを手伝ってくれているジェイムズさんに訊ねてみた。
「この世界で人が一番欲しがるものってなんですかね?」
「そうですねぇ」
ジェイムズさんは、しゃがみこんで草取りしながら考えていたが、やがてきっぱりと答えた。
「金でしょうか?」
「金ですか?」
わたしは、ジェイムズさんのまさかの答えに低く呻いた。
やはり、そうなのか?
うん。そうじゃないかなとは思っていたんだがな。
良識派であるジェイムズさんにそれを言い切られるとちょっとショックだ。
「なら、いくらか払えば大金が手に入るとしたらみんな金を払いますかね?」
わたしは、訊ねた。
ジェイムズさんは、しばし黙考していたが頷いた。
「支払う金額にもよるでしょうが、きっと大金が手に入るなら払うものも多いのではないでしょうか」
なるほどな!
リスクとリターンを天秤にかけてリターンが多ければ人は、金を支払うものかも!
わたしは、にやりと笑った。
ジェイムズさんがちらっと横目でわたしをうかがったのでわたしは、ジェイムズさんにそっと耳打ちした。
わたしの考えをきくとジェイムズさんは、しばらく考えていたが答えた。
「なるほど、それは、面白い案かもしれませんな」
わたしは、この案を通すためにジェイムズさんの協力を仰ぐことにした。
この案というのは、もちろん治療院のための資金集めのためのものだ。
わたしは、資金を集めるためにもとの世界で昔から使われてきた方法を試すことにした。
そう。
わたしは、この異世界で宝くじを発売することにしたのだった。
といっても、このフェブリウス領内だけで発売する宝くじだ。
資金集めのための時間が二週間ほどしかなかったのであまり大金を集めることは期待できないかもしれないがな。
わたしとジェイムズさんは、午後からわたしの部屋にこもって話し合った。
もちろん二人っきりではない。
ライザも一緒だしな!
この世界では、若くなくても独身の女ならむやみに男と二人きりにはならないものだからな。
まあ。
どちらかというとライザは、付添人というよりもかわいらしいマスコットキャラクターみたいなもんだがな。
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