第44話
4ー3 彼らを救わなければ!
「ここは、なんなんですか!」
わたしは、声をあげた。
「あれは・・・あの人たちは、なんなんですか!」
わたしは、怒りを抑えられなかった。
ここは、悪夢を閉じ込めた場所だ!
そして、わたしには、何もできない。
「落ち着いて、トガー」
ライナス先生がわたしの背に両手を回して抱き寄せた。
わたしは、彼に抱き締められても、叫ぶのをやめなかった。
「ここは、地獄、だ!」
「そうだ。地獄だ」
ライナス先生は、わたしを抱き締めたまま囁いた。
わたしは、いつの間にか泣いていた。
それでも叫ぶのをやめようとしないわたしにライナス先生は、唇を重ねてきた。
なんですと?
一瞬にしてわたしの頭は真っ白になって、わたしは、黙り込んだ。
信じられない!
こんなときにこんなことするなんて!
「トガー」
ライナス先生は、もう一度わたしに口付けるとわたしを抱いて囁く。
「忘れるんだ。もう、ここに来てはいけない」
「冗談じゃねぇし!」
わたしは、ライナス先生のことを突き放した。
「何、キスでごまかそうとしてんだよ!わたしを舐めるな!もう、こんなので黙るようなガキじゃねぇんだっつうの!」
「トガー」
ライナス先生は、わたしの手をとると優しく告げた。
「どうか、きいてほしい。わたしと結婚を前提に付き合ってほしい」
「はい?」
わたしは、突然の展開にハトマメで彼の顔を見上げる。
ライナス先生は、優しく囁いた。
「君は、優しくて賢い人だ。この世界にはもったいないような聖女だ。わたしは、君のことが好ましい。この世界の全てから守ってあげたくなる人だ」
「はぁっ?」
わたしは、ぽっかんとしていたが、すぐに答えた。
「だから、わたしは、聖女なんかじゃないってば!」
「でも、君は、そう呼ばれるのに相応しい。君の考え出したものは、この世界を変えることだろう」
いや。
わたしは、気まずい思いを味わっていた。
車椅子は、わたしが考えたわけじゃねぇし。
他のことだって。
全ては、もといた世界のものだ。
わたし自身は、まだ何もしていないし!
わたしは、ライナス先生に微笑みかけた。
「お断りします。だって、わたしは、この世界を変えたいから」
「トガー?」
「わたしは、おばさんだし、外見も並みのモブだし、性格は悪いし」
わたしは、ライナス先生に告げた。
「どこもいいとこないですけど、わかることがある」
わたしは、ライナス先生を睨み付けた。
「ここにいる人たちを救わなければ、わたしは、二度と安眠できなくなる。わたしは、普通の人間だから。これからの人生を楽しみたければ彼らを救わなくては!」
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