第15話

 1ー9 明日は、今日より


 わたしは、考えていた。

 この世界を救うためにいったい何をすればいいのか?

 しかし。

 メイド服を着て介護の仕事をしているわたしを見ればもとの世界の連中にはすごくうけるんじゃね?

 わたしは、ご主人様の部屋の窓を開け放ちながら口許が緩んでくるのを感じていた。

 このわたしがメイド服、だよ?

 この年でコスプレだし。

 ふわりと暖かい風が吹いてきて、わたしは、心地よさににっこりと笑った。

 いい天気だし。

 ほんとならこういう日には、利用者様を車イスで外に散歩に連れていきたいな。

 ふとそう思って、わたしは、はっと気づいた。

 そうだ!

 もしかしたらあるかもしれないじゃん!

 だがしかし。

 「くるまいす?」

 わたしにきかれてアエラさんは、キョトンとしていた。

 「何でしょう?それは」

 「そうか、ないのか・・・」

 わたしは、がっくりと肩を落とした。

 「それがあれば、ご主人様を散歩に連れていけるんだけどな」

 「なければ作ればいいんじゃないですか?」

 アエラさんがあっさりといったので、わたしは、ポン、と手を打った。

 「それだ!」

 わたしは、明日の午後から休みをとって工業ギルドへと出掛けることにした。

 「何か、生活で必要なものがあれば工業ギルドで依頼すれば作れますよ。まあ、お金がかかりますけど」

 というアエラさんの入れ知恵をもとにわたしは、車イスを作ることにしたのだ。

 そのための図案をジェイムズさんに貰った紙とペンで描くためにわたしは、夜遅くまで起きていた。

 幸いにももと美術部出身だ。

 絵は、得意な方だ。

 わたしは、車イスの絵を何枚か描くとふぅっと吐息をついた。

 「それは、何なのさ?」

 ルゥがわたしの机の上に寝そべってこちらを覗き込んでいる。

 「いいものだよ」

 わたしは、アクビをすると机を照らしていた灯りを消した。

 カーテンの開いた窓から月明かりが差し込んでいる。

 こんなにも美しい月明かりを見るのは久しぶりのような気がしてわたしは、窓辺に腰かけてしばらく月を眺めていた。

 明日になれば、世界は、今日よりも確実によくなっていく。

 それは、わたしがこの世界からもとの世界へと帰れる可能性を拡げるのだ。

 「がんばらないとな」

 わたしは、呟いた。

 

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