第14話

 1ー8 ずばんと世界を救ってやる!


 「もとの世界じゃ、この仕事は最低底職といわれていて給料も安かったんだがな」

 わたしがため息をつくとルゥが応じた。

 「本当に?まあ、こっちの世界じゃ金持ちしか介護人なんてもの雇わないからね。みんなが嫌がる仕事だし給金がいいのも納得できるよ」

 そういうもんなのか?

 しかし。

 ファンタジー世界は、思ったよりもシビアな世界のようだな。

 魔物と戦い身体障がい者となる人は、多いらしい。

 だから、この世界では、平均寿命は短いのだという。

 ほとんど年よりはいないので、老人問題はないのだとルゥは語った。

 「でも、貧しい人々は、ろくに世話もしてもらえずに放置されてるんだよ。みんながみんな、ここの伯爵様のようにはいかないからね」

 「国の治療院は?」

 わたしがきくと、ルゥがはぁっとため息をついた。

 「必要とする人が多すぎてみんなを救うことなんて無理なんだよ」

 なるほどな。

 わたしは、頷いた。

 「はぁ。魔法の世界でも、夢も希望もないんだなぁ」

 「だから、この世界は、あんたを聖女として呼んだんだよ」

 ルゥがじっとわたしを見つめた。

 「ねぇ、この世界を救ってよ、トガー」

 はい?

 わたしは、慌ていた。

 なんで、そんなことわたしなんぞに可能だと思うわけ?

 「無理だって!そんなもん、助けられないよ」

 「いや、助けられるからこそあんたがこの世界に呼ばれたんだよ」

 ルゥがにっこりと笑った。

 「いい加減にあきらめなよ、トガー」

 「でも」

 わたしは、口ごもった。

 聖女様なんぞといって担ぎ上げられたら後々が大変なんじゃね?

 「・・・もしも、だよ?もしも、この世界をそれなりにでも救ったらもとの世界に帰してくれるかな?」

 「それは、約束はできないけど」

 ルゥは、わたしを真剣な眼差しで見つめて答える。

 「でも、もし本当にこの世界を救ってくれれば、僕たちだってそれに対して誠意を持って答えるよ」

 マジですか?

 わたしは、がばっとベッドの上に立ち上がった。

 「仕方ない!もとの世界に帰るために、すぱんっとこの世界を救ってやろうじゃないの!」

 

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