第3話

 0ー3 ここは、どこですか?


 わたしは、ネットの投稿サイトにBL小説を、それもかなりえぐいやつを投稿していた。

 それをのこしたままじゃ、恥ずかしくて死ねない!

 わたしは、がばっと遥かな頭上を見上げた。

 空がキラキラしている。

 青い光が揺らめいて。

 わたしは、必死に上を目指して手足を動かした。

 「ぷはぁっ!」

 なんとか水面へと浮かび上がったわたしの目の前で誰かが溺れていた。

 マジかよ!

 わたしは、思わずそちらへと手を伸ばしてしまった。

 そして、思い出す。

 素人は、決して溺れている人を自分だけで助けようとしてはいけないということを。

 その子にしがみつかれてわたしは、一緒に水中へと沈んでいった。

 く、苦しい!

 その子は、信じられない力でわたしにしがみついて離れようとしない。

 こ、子泣きジジイ?

 そして、わたしは、今度こそ意識を手放した。

 

 「はっ!」

 わたしは、がばっと体を起こした。

 うん?

 ここ、どこだっけ?

 わたしは、なぜか、天蓋つきのアンティーク感漂う豪華なベッドの上で見たこともないぐらいふかふかで柔らかい布団にくるまれていた。

 しかも肌触りのいいシルクっぽい上品なネグリジェなんて着ちゃってるし。

 こんなの持ってないよ!

 「なんじゃ、これは?」

 「気がつかれましたか?」

 声の方を振り向くとそこにはロマンスグレーの渋い男前の妙齢の紳士が黒っぽいいかにも執事風の服を着て立っている。

 あれ?

 この人なら、わたし、いけるかも。

 わたしが思わずぽけっとその紳士を見上げていると紳士は、頷いた。

 「どうやらご無事だったようですね。よかった」

 「はい?」

 その紳士は、ほげほげしているわたしにこの状況の説明をはじめた。

 「ここは、このフェブリウス領の領主であるマクシミリアン・フォン・フェブリウス伯爵の屋敷でございます。あなたは、屋敷の近くの湖で溺れていた伯爵令嬢を救助しようとされたところ、一緒に溺れてしまわれたのでございます」

 マジですか?

 わたしは、頭を傾げていた。

 ここ、確か、日本でしたよね?

 それも、ただの田舎町だったはず。

 コジャレた伯爵様なんているわけないし。

 どういうこと?

 そこで、わたしは、はっと気がついてその紳士に訊ねた。

 「あの子供は?」

 あの、わたしにしがみついてきて水底へと引きずり込もうとするような海坊主か船幽霊みたいな子は、どうなったの?

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る