錬金術師に不可能はない
くちばしの子
第1話 【錬金】を取得しました
この世界には『スキル』というものがある。
スキルには『一般スキル』と『希少スキル』と呼ばれるものがあり、前者は後天的に取得することが可能だが、後者は生まれ持っていなければ使えず、基本的に後天的に取得できない。
例外として、ダンジョンから手に入るスキルブックという、使用することでスキルを取得できるアイテムもあるが、希少スキルのスキルブックとなると滅多に手に入らない。
過去に希少スキルのスキルブックが、小国の保有資産並の金額で取引されたことがあるほどに。
さて、何故僕がそんなことを考えているのかというと。
『錬金スキルを手に入れなさい。一年以内に出来なかったら私の弟子を破門にするわよ』
と、先ほど師匠から飛び出してきたこの言葉のせいである。
「そんな簡単に手に入るなら、スキルブックがあれだけ高値になるわけがないだろ……!
【錬金】が希少スキルなのをあんたが知らないわけないじゃないか!」
僕は考えた末に、何を無理難題を言ってるんだと、師匠に対して声を荒げてしまう。
「そうね。スキルブックを手に入れるのは現実的じゃないし、希少スキルを後天的に取得したという話も聞いたことがないわ」
「だったら……!」
「それがどうかしたの?」
その言葉はまるで、『その程度の理由で、無理だと言おうとしたんじゃないわよね?』とでも言うかのように圧を放っていた。
師匠は【錬金】という希少スキルを持つ錬金術師の中でも、史上最高峰と名高い人だ。
そして、それまで不可能だとされてきたことをいくつも成し遂げて来た実績を持つ人でもある。
それ故か、師匠は弟子の僕が『無理』と言う事を極端に嫌う。
――いいアルカ。私の弟子なら、端から無理だと諦めてかかるのではなく、どうすれば実現できるかを考えることに全神経を集中しなさい。
というのは、僕が師匠に弟子入りして間もない頃に言われた言葉。
「……分かったよ。現実的じゃないなら、現実的にすればいい。前例がないなら作ればいい……ってことだろ?
僕は必ず【錬金】を手に入れて、師匠に相応しい弟子になる」
僕は考えた末に、師匠に決意を表明する。
「それでこそ私の弟子ね。まあとりあえずは仕事を始めましょうか。工房に私が作ったポーションがあるから種類分けして箱に詰めて行ってくれる?」
師匠はポーションを作るための道具が揃った工房に向かいながらそう言った。
「――いや、ちょっと待ってくれ師匠」
だが、僕は師匠の言葉を拒み、呼び止める。
それは、僕の目の前で起きている驚愕の現象のせいだ。
「【錬金】スキルが手に入ったかもしれない」
僕の目の前には『スキル【錬金】を取得しました』という文字が表示されていた。
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