恥晒しで貴族追放された俺は、『掠奪』で見る物全部奪って報復する。

Leiren Storathijs

プロローグ①

 俺の名はデューク・アーロゲント。アーロゲント公爵家の生まれで、四人家族の内の兄として生きている。

 下には弟のウィットが居り、歳は15歳。俺は6歳離れて、21歳。


 アーロゲント公爵家は、優秀な剣士を輩出する家系で、今まで輩出された者たちは皆、国王の護衛や国の精鋭兵として活躍を見せている。

 だからこの家は周囲貴族の信頼もあってか、毎日の剣の稽古が欠かせず、俺はウィットの剣の稽古を毎日任せられている。


 だが今回の家には一つ問題がある。弟ウィットには剣の才能が無い事だ。

 いや、俺が強すぎるせいか。稽古でウィットは俺に10歳から挑んでいるが、この5年間。一度も俺に勝っていないどころか、まともに剣を打ち合ったことすらない。

 

 ほぼ俺がウィットの攻撃を受け流して、一撃で終了。全く、今回のアーロゲント公爵家は、失敗だな。俺はそう信じている。


「てやぁああっ!」


「遅えんだよ! 一体いつになったら少しでも良い勝負になるんだぁ? もうお前との稽古飽きて来たんだけど」


「やっぱり兄さんには敵わないや……へへっ」


 敵わないだと? いつになったら無理だと分からない? 既に俺はお前を見限っているというのに。


 そう、俺は強い。俺はただ自分の力だけを信じて生きてきた。16歳の神授ギフトの儀の時もだ。

 神を信仰すれば、良いギフトが手に入るなんてものは迷信。そう思ってずっと生きてきた。

 それで神は俺のことをどう思ったのか。とんでもねえギフトを与えやがった。


 誰も、国さえも知らないすげえギフトだ……。


 そう、だから俺は強い。

 だが、今はそうでも神授の儀では全く予想が付かねえ。

 俺は剣の才能が無いウィットなんざ、例えすげえまぐれで剣のギフトの最高位。『剣聖』を手に入れても、全く意味が無えと思っているが……な。


「デューク! 程々にしておけ。明日はウィットの誕生日なんだ。怪我はさせるなよ?」


 俺の親父だ。親父は家の中で最強の称号を持ち、それこそ正にギフトは『剣聖』。

 それもただ剣聖じゃなくて、英雄レベルの剣聖だ。

 ギフトで強くなった俺でさえも、全く勝てる見込みが無い程だ。


 でも、俺はそんな親父を嫌っている。きっと、親父も今すぐ俺を追放したいと思っているに違いない。

 何せ俺のギフトは、この家にとっては恥晒しにしかならねえからな。そう思ってるんなら早く俺を追放してほしいくらいだぜ。

 親父の顔を見る度に反吐が出る。


「はいはい、しゃあねぇなぁ。明日は神授の儀だもんな。

 ま、俺にはどうでも良いことだがなぁ!」


「全く……私も期待していないが、お前はウィットの兄だ。明日はせめて大人しくしてくれよ?」


「あいよー」


 神授の儀は教会で行われる。しかも人生で一度しか受けられない神聖で、超重要な儀式。

 もし冗談でもウィットに怪我なんてさせたら、次はウィットが恥晒しになる。そうなったらもうアーロゲント公爵家はお終いだ。


 別に俺は家をぶっ潰すつもりは無え。潰れるのは俺だけで良い。いつになるか知らんがな……。

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