第263話 発動しないスキル達

「水治療法! 温熱療法!」


 他のスキルも同様にスキルを使うが何も反応がない。


「おい、コロポ! ボス! みんなどこにいるんだ!」


 俺はベッドから降りて辺りを探した。俺の大事な家族達だ。


「わしはここにいるぞ?」


「コロポ!」


 胸ポケットではなく、枕元にいたコロポは俺の方を見ていた。


 しかし、その姿はどことなく薄くなっている。


「なんか薄いけど……?」


「わしは元から髪の毛は薄いのじゃ!」


「いや、そこじゃなくて……」


「ああ、それは魔力が無くなったから仕方ないのじゃ」


「魔力がない?」


 人間であれば少しは魔力を持っているはず。魔力がなければ俺は今頃、死んでいるはずだ。


 もしくは人間ではない生物になっているということだ。


「ラルフはどこにいる?」


「あいつなら今頃異世界病院で治療をしていると思うぞ!」


 俺は急いで異世界病院に向かった。きっとラルフなら今の体の状態がわかるはずだ。


「おい、どこいくんだ!」


「わしも連れて行くのじゃ」


「ああ!」


 俺を追うようにマルクス達は後ろからついてきている。


 俺は立ち止まり大通りに出るとそこには魔物と戦っている騎士や魔法師、そして冒険者達が戦っている。


「なんだよ……これ……」


 想像もしてない魔物の多さに俺は立ち止まっているとマルクスが声をかけてきた。


「三日前ぐらいからこんな状況だ」


「三日前?」


「ああ、三日で王都が半壊したんだ」


 建物が抉れるように削れたり、屋根がなかったりなど半壊でも一部半壊というよりは大規模半壊のレベルだ。


「でも貴族街はなんで綺麗なんだ?」


「あっちは防御魔法がかかっているからな。それでもギリギリの状況だぞ」


 確か魔法師団の副団長が防御魔法を得意としている人物がいた。よく見ると建物が壊れてないところも存在していた。


「冒険者ギルドや異世界病院は?」


「どっちもギルドマスターとハワードさんのおかげで無事だぞ。ケントが寝ていた孤児院も防御魔法の魔道具を使っている」


「そうですか」


 俺は安心して息を吐くと、突然マルクスがハンマーを構えた。


「えっ?」


「寝ていて体が鈍ったのか」


 俺の後ろから魔物が飛び掛かっていたのだ。マルクスはそのままハンマーを振り下ろし魔物を押し潰していた。


「それでどこに行きたいんだ?」


「異世界病院に……ラルフに俺の体を見てもらいたいんだ」


「わかった! きっとケントが目を覚ましたことを知ったら喜ぶぞ」


 俺が目覚めるまでは異世界病院のメンバーやロニーやアニーが交代で目覚めるまでは看病していたらしい。


 俺達は急いで異世界病院に向かうと、なぜか異世界病院周辺に魔物が多く集まっていた。


「しっかりついてこいよ!」


 マルクスがハンマーを振り回しながら近づくとそこにはリチアが立っていた。


「マルクスさんどうし……ケントくん!?」


 リチアの手には何か魔道具が握られていた。きっとリチアが防御魔法の魔道具を発動させていたのだろう。


 俺達はリチアが一瞬魔道具を解除したタイミングで中に入った。


「うぇーん、ケントくんが目を覚ましたよ。もうあの美味しいご飯が食べられないと思ったー」


 リチアは俺を心配して泣いたのかと思ったら、単純に美味しいご飯が食べられないことを気にしていたらしい。


「あれから怪我人はどうだ?」


「避難民も含めてどんどん人が増えてきています」


「そうか……」


「でもケントくんが来たならみんなも安心しますね」


 俺は異世界病院の扉を開けると血の臭いが鼻の奥に突き刺さる。


 そこは医療ドラマさながらの現場に医療組の子ども達や王都にある治療院の人達が走って治療をしていた。


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