第246話 同年代
俺達は料理を作り終えると一気に料理を運んだ。
アルタがまだ外で怒っているため、外に出にくいのと食べられるよりは良いと思ったからだ。
流石にずっと待っているわけにも行かないしね。
「お待たせしま――」
「だからあなた達もロニーさん達を見習いなさいよ!」
「なぜ男が家事をしないといけないんだ!」
「そうだよ! 男は堂々と待っていればいいって親父が言っているじゃないか。男が料理なんて弱いやつのやることだ」
ああ、一瞬にしてこの親からこの子どもが生まれたとわかる感じがした。
しかも今の話で料理関係のスキルを持っている男達を敵に回しただろう。
「もう! 皆さんうちの男どもがすみません」
代わりにアルタが俺達に謝ってくれた。父親の面目が保たれたと言っていたが、それなら家事を手伝ったり、しっかり礼を伝えた方が父親として良い姿になっただろうに……。
「ロニーもいつからそんな男になったんだ?」
「俺ですか? んー、忙しいのはアニーも変わらないだろうしね。そもそも俺の家にはケントという万能なやつがいるからな」
そのタイミングで俺に話を振らないで欲しかった。視線が一気にこっちに向いたのだ。
「とりあえず熱々の方が美味しいので食べましょうよ」
いつまでも言い合いをしていては空気を悪くするだけのためその場話を切ることにした。
「やはりケントくんの方がうわてよね」
アルタは何かを呟いていた。
♢
食べ始めると料理が減るスピードが尋常ではなかった。
山積みになるほど作ったのにすぐになくなってしまう。
「オラのハンバーグが……」
ラルフはハンバーグを食べようと手を伸ばしたのにマロックの息子達に取られてしまったようだ。
育ち盛りなのか知らないが、流石に配慮も出来てないのはどうかと思う。
分け与えるということを知らないのだろうか。
孤児院の小さな子ども達だってみんなで平等に分け与えることができるのに……。
「これだけうまいのが作れるなら冒険者より料理人になればいいんじゃないか?」
「ふふふ、料理人だって」
マロックの言葉に子ども達は笑っていた。
きっとマロック自身は嫌味を言ったつもりはないだろうが、子ども達はどこか馬鹿にしていた。
絶対こいつらとは仲良くなれる気がしない。
「そういえばケントくんとラルフくんは何のスキルで冒険者になったの?」
「あー、それは……」
「俺は理学療法士ですね」
「オラは放射線技師です」
アルタに聞かれた瞬間、ロニーは若干気まずそうにしていたが、俺達はこのスキルに自信と誇りを持っている。
現に前線で治療できるレベルはあると思っている。
「あはは、外れスキルのくせに冒険者なのか! それなら本当に料理人の方がよかったんじゃん!」
「おい、お前ら流石にそれは言い過ぎだ。二人ともすまない」
マロックは俺達に謝ってきた。
「だって事実だろ? 外れスキルなら大人しくしていれば良いくせに――」
「俺も兄ちゃんのいう通りだと思う」
マロックはすぐに子ども達を叱ったが本人達は聞く気もないらしい。
ただなぜこんなに俺達に突っかかってくるのか気になる。
「こいつらはこの辺でも強いと言われているから調子に乗っているようだ」
「俺らは門番のスキルを持っているからな」
平民が自衛団に関係するスキルを持っているとエリートコースと言われているらしい。
単純に自分の力を過信しているのだろう。
「よかったらケント達と手合わせしてみればいいんじゃないか?」
「はぁん?」
俺達の声は重なった。こんなやつと戦うだけ時間の無駄だ。そもそも俺達のスキルは戦闘職でもない。
「ほらほら君達がそんなに強いなら二人指導してあげてよ。だってこの辺の子ども達の中で一番強いんだろう」
「ははは、そこまで言われたら仕方ないですね。あっちでちょっとやろうぜ」
マロックの息子達は自分達が勝つと思っているのか余裕そうに隣にある空き地に向かった。
「お前ら絶対あいつらをぶっとばせよ。これは父親命令だ」
ロニーは俺達の耳元で呟いた。どうやらロニーは怒っていたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます