第245話 家族の役割
俺はラルフとマロックの家のキッチンで準備を始めた。
基本的に作るのは俺だがラルフは一緒にいる時から手伝ってくれていた。
「これミートソースの中に入れるから一口大より小さめに切ってもらっていい?」
「ああ、わかったよ。これはどうする?」
「あー、今から炒めるからここに置いといて」
「ほーい」
俺はハンバーグに使う材料を受け取ると細かく刻んだお肉と混ぜ合わせた。
「ねぇ、アニーさん?」
「どうしました?」
「この子達ってその辺の男よりしっかりしてるわよね?」
「ふふふ、確かにそうかも知れないわね」
「私のところの男達なんか腹減ったとしか言わないし、食べたものも片付けようとしないわ。男は威張って当然かのように座っているのよ」
「うちのロニーも昔はそうだったわ。ただ子どもができると変わったし、ケント達と住むようになってからさらに変わったわ」
確かに外を見るとマロック達家族はただ座って待っている。
一方ロニーはというとアリミアとともにボスと遊んでいた。
「母さんこれできたから持ってて!」
「わかったわ」
俺は焼き上がったハンバーグを渡すと庭に持っていった。
「あとは焼くだけなのでお姉さん手伝ってもらってもいいですか?」
「あら、お姉さんなんて! 私はアルタよ」
名前がわからなかったからとりあえずお姉さんと呼んだがアルタは嬉しそうだった。
「置いてきたわ。私は何をすればいいかしら?」
「母さんはサラダのドレッシングを混ぜてもらってもいい?」
「あー、このドレッシング美味しいわよね」
異世界食堂はメイン料理ばかりだったため、簡単なサラダであれば料理ができない子どもでも作れると思ったのだ。
その試作を家で作っていたため女性の意見としてアニーが試食をしていた。
そんな中ロニーが焦った感じで入ってきた。
「おい、もうあいつら食べているけどいいんか?」
「へっ?」
俺はロニーの言葉に耳を疑った。流石にこの状況で先に食べるってどういうことなんだろうか。
「はぁー、みんなごめんなさいね。私が言ってくるわ」
アルタはため息をつくと外に出ていった。
「昔のあなたもあんな感じだったわよ?」
「えっ? 俺が?」
「そうよ? いつも飯はまだかって言ってたじゃない」
「あー、そうだったかも知れないな」
「ついでだから父さんも手伝ってよ」
「ああ、いいぜ」
前世では共働きなのに家事や育児を手伝わない夫が妻を悩ませているという話を聞いたことがあった。
ただ異世界も前世と同じなんだろう。
確かにケトの記憶でも元の家族が家事を手伝っている姿は記憶にない。
「本当に子どもって親を成長させてくれるわ。きっと二人は良いお父さんになるわね」
俺達はその後も和気藹々と料理をしていたが、外ではアルタの声が響いていた。
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