外れスキルで異世界版リハビリの先生としてスローライフをしたいが、異世界も激務のようです〜チーム医療で様々な問題を解決します〜

第231話 役割

　俺は急いで前線に戻った。正確にいえばバトルホースが勝手に走って行くから落ちないように掴まっておくのが精一杯だった。

「急いでくれてありがとう」

　褒めて欲しそうに見つめてくるバトルホースを撫でると嬉しそうに鳴いていた。

　前線に着くとその場は慌ただしく動いていた。

「こちらに包帯をお願いします」

「ラルフさんこの人はどうしたらいいですか？」

「命に別状はないから治療は後回しだ。まずは魔力不安定症で症状が不安定な人をすぐにテントの中に入れるんだ」

　俺が戻った時にはテントの周囲は戦場となっていた。ピリつく現場と自ら動く孤児達を見ると彼らの成長が一層感じた。

「ラルフ状況はどんな感じだ？」

「おっ、ケント！　お疲れ様！」

「ああ」

「今第一陣が帰ってきたところで、被害に遭って先に離脱した人達だ」

　そこら辺には倒れている騎士や魔法師団、冒険者と様々な人がいた。

「一応魔力不安定症になった人達はテントにつれて、それ以外の人達には外で待機してもらっている」

　全ての人が魔力不安定症になっていると思ったが、攻撃を受けた人でも何か差があるらしい。

「とりあえずラルフは来る人の情報を判断して伝えてくれ」

「わかった」

　俺はすぐにテントの中に入るとそこには倒れている人が数名いた。

　見た目からして傷口は深くはないものの血の気が引いたような青白い顔をしている。

　すでに覚醒状態も悪くなり昏睡状態だった。

　明らかにラルフの能力が必要なのはテントの中だ。それにあの辺な魔力はラルフであればグリッドで破壊することもできる。

「ラルフ！　ガレインのサポートを任せた！」

「私はどうすれば……？」

　わずかにガレインの手は震えていた。

　それでも魔力不安定症の治療経験もある彼なら理学療法士の俺よりは実力は上なはずだ。

「もうお前は立派な医師だ！　外れスキルでもないこの場を救える医師はガレインしかいないんだ。俺達を正しい方に導いてくれ」

　ガレインは手を握り締めると自分の頬叩いた。

――バン！

　ガレインの頬は赤く染まっていた。ただ彼の表情は今までとは違いどこか覚悟を決めたようだ。

「ケントは何かあったら私を呼んでくれ。孤児の子達のサポートを頼む」

「ああ、任せてくれ！」

　ガレインに声をかけられるとどこか魔力が湧き上がるような気がした。

「ケント交代するぞ！」

「ああ」

　俺は変わりにきたラルフにガレインのサポートを任すと、テントの外にいる人達の治療をすることにした。

　止血はしっかりしてあり、看護のスキル持ちの子達は忙しくなく働いていた。

　それをアリミアも遠くから見ている。

「今から治療を始めます」

　包帯の上からスキルを発動させ止血を加速させた。

　俺ができることは傷を塞ぐことと治癒を促進させることしかできないのだ。

　ガレインみたいに医師のようなスキルがあればもう少し役に立つことができる。理学療法士には限度があるのだ。

　だから俺のできることをやるだけだ。

　俺の役割は日常生活に彼らを戻す手伝いをするだけだ。

　その後も俺は治療を続けていると突然脳内に声が響いた。

『新しい患者さん達が来ます』

「えっ？　なんだ？」

　突然の声に驚いた。だって声の主がミイからだったのだ。