第227話 不敬罪
俺はマルクスの元へ向かうと重なり合った本の上に強制進化の首輪が置いてあるのを見つけた。
司書がいないか周囲を確認をした後に俺は異次元医療鞄に首輪を入れた。これで魔物も王都には寄ってこなくなるだろう。
「これでどうにかなりそうですね」
「ああ、とりあえずまだ魔物が王都に向かっているか情報を確認した後に戻るか」
「わかりました」
俺達は図書館から出ようとすると偶然扉を開けて入ってくる人物がいた。
「ああ、ケントくんここにいましたか」
そこにいたのは王様の側近である宰相だった。
「はい。先程はすみませんでした」
「いやいや、ケントくんの意見は現場にいる人達の声だからね。実際に我々は何もせずにここで待っていたのと変わらないですよ」
そう言ってもらえると俺の心は軽くなった。明らかにさっきのあれは不敬罪と言われて罰を下されてもおかしくはないのだ。
「まあ、王様に直談判するとは思わなかったけどね」
「すみません」
「ただ王様や私には今のように接してもらって構わないけど、近衛騎士団や貴族の爵位を重んじる人には注意してね。子ども関係なくその場で首を落とす可能性があるからね」
この世界では地位の違いによる不敬罪はよくある話らしい。
理不尽だがそれを受け止めるか、何か変える方法を考えて動いていくしかないのだろう。
王族であるガレインでさえも貴族は厄介と言っていたぐらいだ。
「まぁ、何かあったら私にも相談してください。これでも王様の従兄弟で公爵家ですからね」
王様に直接会ってから城に来るたびに時折声をかけてくれた宰相は現国王の従兄弟だとは知らなかった。
「それで首輪はみつかりましたか?」
「これで王都にある首輪は回収することができました」
「では一度でも王様のところへ戻りましょうか」
俺達は王様の元へ戻ることになった。ひょっとして何か罰が与えられるのだろうか。
俺はそんなことを思った。
♢
「ケントくんって城に来ると図書館にいることが多かったですよね?」
「はい。ガレインと……あっ、ガレイン様と勉強していました」
「ふふふ、ガレインって呼んでいるのならそれで構わないですよ。私の従甥ですからね」
正直その辺の貴族の事情は難しいところだ。
「それで気になったのですが、図書館にいた司書って見たことある人ですか?」
「あー、いつも見る司書の方とは違うんですが最近人員を増やしたんですかね?」
しばらく宰相は黙り込むといつのまにか王様が待っている部屋の前に着いた。
「では私は気になることがあるので席を外しますね。あと冒険者さんをお借りしてもよろしいですか?」
「俺ですか?」
「はい」
マルクスはどこか焦っているようだ。確かに急に呼ばれれば焦るのは仕方ない。
「ではケントくん頑張ってくださいね」
えっ、頑張ってくださいとはどういうことだろうか。
宰相は来た道をマルクスと共に戻って行った。
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