第226話 禁書
「あんなに言って大丈夫なんか?」
「いや……どうしましょう」
今になって王様やその側近に何を言っているのだろうかと不安になってきた。
だって、俺には貴族達がただ遊んでるだけにしか見えなかったのだ。
実際近くには笑ってはしゃいでる大人がいる。
「まぁ、俺も同じことは思っていたんだがな……。それをまだ子どものケント達に思わせるのは大人としてすまない」
この国の貴族より断然マルクスの方が尊敬できる。
「それで首輪はどこにあるのかわかるのか?」
「なんとなくでしかわからないんですが……たぶんここです」
「わしも同じじゃ」
どうやらコロポと同じところを俺は魔力を感知していた。
「では開けますね」
俺は扉を開けるとそこには大量の本が置いてあった。
「なんだここは?」
「図書室ですね」
強制進化の首輪は膨大な本がある図書館に紛れていた。図書館自体はガレインとも来たことがあるため司書は気にしていないようだ。
「いくらなんでもここから探すって言わないだろうな……」
「いえ、ここから探さないとどうしようもないですからね」
「コロポどこにあるかわかるか?」
「わしも正確には探せないのじゃ」
この国では書物は貴重に扱われている。どの本も綺麗なのはその保存方法にある。
それは本自体が魔力でコーティングされて汚れないようになっているのだ。
魔力も一定になっているわけではなく、本ごとでコーティングに使われている魔力の量が異なる。
そのため、魔力を探って来た俺達にとってはこの魔力の塊から首輪を探す方が大変だ。
「とりあえず細かく見ていくしかないか」
俺達は図書館にある本を取り出しては首輪がないか確認することにした。
コロポはマルクスと共にコロポの指示で魔力量が多いところを探すようだ。
俺も魔力が多く感じるところへ向かうとそこは図書館の奥の部屋だった。
「ここって入ってもいいのか?」
俺が悩んでいると司書が声をかけて来た。
「この先は禁書になるので持ち出しは禁止されています。私達と一緒に出入りすれば閲覧は可能です」
「では一緒に来てもらってもいいですか?」
「わかりました」
俺は司書と一緒に禁書が置かれている人部屋に入ることにした。
中は他の本棚とは違い本がわずかに置いてある程度だ。
俺は本を手に取るとどこか体の力が抜けるような気がした。
その中で特に気になる本を見つけた。
「魔人について?」
その本には魔人について記載されている内容だった。
どの魔人も国に反乱を起こす者達が多いためあまり印象は良くないらしい。
見た目はほとんど人間と変わらないがその特徴が高い魔力量や尖った耳が一般的に知られている。
従来魔人は魔族やエルフ族といった亜人が進化した種族だと認識されていた。
ただ、その中で目を引く文献を見つけた。
「身近な家族、大事な人を殺す……」
過去に魔人になった人の背景に身近な人の死が関係しているということだ。
でもそれがなぜ魔人になるとは書いていなかった。
「おい、ケント見つかったぞ!」
俺はマルクスに呼ばれて部屋から出ることにした。
「司書さんありがとうございました」
「いえいえ、また何かあれば来てくださいね」
俺は本を戻してマルクスの元へ向かった。
「ふふふ、魔人になるには殺せばいいのか……」
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