第222話 外れない強制進化の首輪

「コロポそっちはどうだった?」


「見つけたけど掴めなかったのじゃ」


「えっ、どこにあったの?」


「あそこじゃ……」


 コロポが指差したところは家と家のわずかな隙間だった。


「流石にあそこには入れないのじゃ」


 確かにコロポが入るにはサイズ的には無理そうだ。小さいおっさんだからお腹も出ているしな……。


「何か物を投げてみてらどうだ?」


 マルクスは近くにあった石を拾うとそのまま強制進化の首輪に投げつけた。


 だが石は首輪がなかったかのように通り過ぎてしまう。


「あれ? どういうことだ?」


 さっきの露店の時も思ったが掴めないってどういうことだろうか。


 以前池の中にあったやつはコロポが掴めていた。俺に関しては触れる前に異次元医療鞄に入れるが取り出す時には掴んでいるのだ。


 今まででわかっているのはバイオレンスベアーは魔力がそこまでない熊からの進化。


 魔力が増えれば装着してなければ周囲から魔物を呼び寄せる。


「どういう仕組みなんですかね?」


「一定の魔力量がないと掴めないのか?」


「マルクスさんどうしたんですか?」


「どうしたってなんだ」


 それは一理ありそうだ。マルクスにしては珍しく頭を使った答えに俺は驚いた。


 でもその考えが正しければ動物が王都に近づいてこないのも納得ができる。


 魔物には魔力を持っているやつが多いからな。


「それでどうやって取るんだ?」


「魔力を含んだ物……」


「あの呪いシリーズを使ったらいいのじゃ」


 呪いのシリーズとは俺が指を挟んだ角度計のことを言っているのだろう。


 ただあれは打診器と違って魔道具ではないはずだ。


 実際に大きくなったこともない。


「これでどうにかなるのか?」


 俺は角度計を取り出すといつものように持った。


「さぁ、今こそ呪いシリーズの本領を発揮するのじゃ」


「ああ……」


 俺はそのまま持ち手である可動アームを持つととりあえず振り回した。


「うぇ!?」


「おい、ケントあぶねーだろ!」


「それが呪いの武器なのじゃ」


 角度計の持ち手は如意棒のように伸びて閉じるといつも通りの小ささに戻っていた。


 もはやちゃんとした角度計の役割を果たしていない。そして戻ってきた瞬間に俺自身の手を挟みそうなのだ。


「それで首輪を引っ掛けて取るのじゃ」


「流石にそれは……」


「はやくやるのじゃ!」


 俺の手はこの際無視なんだろう。今度は強制進化の首輪に目掛けて角度計を振り回した。


「届けー!」


 俺の願いが届いたのそのまま伸びた可動アームは首輪に引っ掛かると突然輝き出した。


「えっ?」


――ドォーン!


 そのまま首輪と共に戻ってきた角度計は閉じるタイミングで隣にあった樽に当たると大きく爆発した。


「おい、ケントそれはなんなんだ!?」


「いや、さっぱり……」


「この呪いの武器は魔力を吸収して与えるダメージを強くするのじゃ」


 どうやらコロポの話では魔力を吸収しただけでダメージが強くなる仕組みらしい。


 ええ、何かにぶつかることがなければ俺に返ってくるのだ……。


 正しく角度計は"呪いの武器"だった。

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