第213話 風属性魔法の使い方 ※ハワード視点
俺達は凍ったオークを粉々に砕いていると偵察部隊の一人が声を掛けてきた。
「ハワードさん今いいですか?」
「ああ、どうした?」
「ギルドマスターから言付けを預かって来ました」
俺は頷くと別の人が姿を見せた。
「報告します」
「うおっ!?」
急にもう一人出てきて俺は驚いた。偵察部隊の男はどこか楽しげにニヤリと笑い、そのまま話し始めた。
「北西を担当していたギルドマスターのカタリーナ様からの伝言です。オークは特殊個体で摂取した魔物の能力を一部吸収し自分の力にしたのじゃ」
「じゃ?」
偵察部隊の男を見るが彼は表情を変えず話し続けた。
しっかり教育されているのだろう。
「こっちにはオークジェネラルが出現したのじゃ。だがオークの一部が北へ向かったからさらに上位種がいるのじゃ。残りのオークはそっちに向かったから頼むじゃ」
「頼むのじゃ……って」
「という伝言です」
「ハワードさん! 空にオークが飛んでます」
リチアの話に俺は耳を疑った。確かに北に向かってオークが飛んでいた。
「オークが飛ぶだと!?」
「あっ、言うのを忘れたが北西のオークは飛行能力を吸収しているのじゃ」
「じゃ?」
リチアも偵察部隊の話し方が気になったのだろう。彼は一度話を止めるがその後も話し始めた。
「こっちには負傷者が出たから少し遅れるのじゃ。後始末は頼んだのじゃ。だそうです」
偵察部隊の男は最後までカタリーナの語り口調で乗り切っていた。
それにしても言い忘れた感じはカタリーナなのか目の前にいる男の演出なのか気になるところ。
「偵察部隊も大変なんだな。それで――」
「あっ、私は次の依頼がありますので」
すぐにいなくなった男を俺とリチアは見つめていた。
「じゃあ、オークを蹴散らすか」
俺達は北に向かったオークを倒しに行くことにした
♢
俺は飛んでいるオークを眺めていた。
「生きてるうちに飛ぶオークを目にするとはな……」
「ほんとですね……」
隣にいたリチアもハワードとともに見ていた。
「いやいや、はやく倒しましょうよ!」
ゆったりとした時間を過ごしていたのにリモンに邪魔された。
「ウィンドウォール」
俺は風属性魔法でオーク達を中心に風の壁を作った。
基本的に身を守る魔法だが俺は魔法の使い方が違う。昔から異端児と言われているからな。
「ブモォーー!」
「あっ、なんかあいつはオークぽいな」
ウィンドウォールに突っ込んだオークは細切れになって空から降ってきた。
「……」
隣にいたリチアは口を大きく開けて見ていた。
そもそも風属性ってこうやって使うもんだからな。
「じゃあ、片付けるか」
俺はそのまま両手を広げて勢いよく閉じた。そう、魔法を具現化しやすくするためだ。
――パン!
手を叩いたと同時にウィンドウォールはオークに迫り最終的には全てのオークが細切れとなって降ってきた。
空から降る肉と血の雨に吐き出す冒険者もいたが、冒険者がこれぐらいで吐いていてはだめだ。
「いやー、さすがじゃ」
誰かが近づいて来ていると思ったらカタリーナだった。
「他の奴らは大丈夫なのか?」
「頼りない奴らじゃのう。鍛えるためについて来いって行ったのに全然追いついていないのじゃ」
カタリーナの後ろをよく見ると遅れながらも必死に付いてきていた冒険者達がいた。
その姿は全員疲れており顔から疲労が滲み出ていた。
お気の毒に……。
確かにこの人は魔法もすごいが機動力も高かったはずだ。
「ん? どうしたのじゃ?」
「あっ、いや何もない。それにしてもあのオーク達はなんなんだ?」
「あれはオーク達の変異種だろう。みんな同じスキルを使っておるのじゃ」
「スキルってあの見た目が変わってるやつか?」
「たぶんそうなのじゃ! 詳しいことは調べて見ないとわからないが過去にあった出来事に似てるのじゃ」
カタリーナの話では以前変異種の魔物を見たことがあると話していた。
「そうか。それなら一回救護施設に戻ってラルフに見てもらえばいいんじゃねーか?」
ラルフならリチアが言っていたようにスキルを見ることができるはずだ。
「そうか、奴の力であればある程度の能力はわかるかも知らないな。でもなぜラルフのスキルを知っているのじゃ?」
「いや、ちょっと色々あってだな! とりあえずあいつらがいるところに戻るか」
「貧弱なやつばかりで頼りないのじゃ」
「えっ、またすぐに戻るんですか!?」
カタリーナが後方を見ると、やっと冒険者達は追いついてきた。
全員口には出さないが"お前のせいだろ"と思っているような顔をしている。
少しオークを逃すことになったが特に大きな被害はなく冒険者側のオーク討伐は終わったのだった。
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