第211話 西 【side:ハワード】
ハワードは西側の地形に詳しい破滅のトラッセンと共に向かっていた。
「この辺は何の魔物が多いんだ?」
「トラッセン街は虫型の魔物が主です」
緊張しながらも破滅のトラッセンのメンバーであるリモンが答えていた。
それもそのはずSランク冒険者と一緒に依頼を受けることなんて緊急依頼以外ないからだ。
「火属性魔法が……この環境がダメだな……」
ハワード達が移動しているのは森の中だった。
「せっかくの私の魔法も使えないわ」
同じく魔法が使えなくて困っている人がいた。破滅のトラッセンに所属するリチアだ。
「でもケント達のおかげでダブルウィッチになったんだろ?」
「そうだけど……せっかく覚えた火属性魔法使いたいじゃない」
「まぁまぁ、森の中では風属性魔法も便利だからいいだろ?」
カルロとリチアが話していると、ハワードは少しずつ移動速度を緩めて話に入ってきた。
「ちょっといいか?」
「はい、なんでしょうか!」
急に話しかけられたリチアからは、いつもの口調はどこかへ消えていた。
「ケント達のおかげでダブルウィッチになったってのは本当か?」
「あっ、はい! 元々私は風属性魔法のみのシングルウィッチでした。ある日突然、あの二人に火属性魔法が使えるからやってみてと言われて半信半疑でやったらまさか使えたんです」
リチアの話を聞いてハワードは何か考えていた。
「ハワードさん、どうかされましたか?」
「いやそれが聞けてよかった。風属性魔法での援助頼りにしているぞ」
「死ぬ気でがんばります!」
「いや、そんなに力まなくていい」
「はい!」
ハワードは先頭にいる偵察部隊のところまで戻った。
「ふぅー」
「あはは、さっきのはなんなんだよ」
リチアの話し方の変化に笑いを堪えていたカルロは噴き出した。
「仕方ないじゃない!? ハワードさんはあの有名なSランク冒険者で魔法使いなのよ」
ハワードは魔法使いのリチアにとってはSランク冒険者だけではなく、魔法使いとしても尊敬できる存在だった。
♢
しばらく森の中を移動すると敵がいると報告を受けた目的地に到着した。
「ハワードさん止まってください」
「なんだ」
偵察部隊から停止の指示で止まると辺りは静まり返っていた。
「この辺だろ? 敵の姿が――」
「下からです!」
偵察部隊の声と共に地面から黒光りした魔物が飛び出てきた。
冒険者達は咄嗟に避けるが、それでも急な襲撃に避けられず傷を負う者もいた。
「あいつらはなんだ!」
「アント種……じゃないのか?」
トラッセン街に住んでたリモンでもその魔物を見たのは初めてだった。
見た目は、虫型魔物のアント種に似ているがサイズは倍以上あり、黒い攻殻から短かな体毛で覆われていた。
そして特徴的なのは顔がオークに似て豚鼻でアント特有の牙が無くなっていた。
そう、地面から出てきたのは見た目が変わったオークだった。
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