第210話 上位種 【side:カタリーナ】
カタリーナの魔法である程度のオークを倒すことはできても、やはり魔法から逃げ切るものもいた。
「なるべく西側に向かうように矢を放つのじゃ」
カタリーナの指示通りに冒険者達は矢を放つがなぜかオーク達は矢が当たっても北へ向かおうとしていた。
その時オークの死体の山から突然ガサガサと動きがあった。死んだはずのオークが動くはずがない。
そこに視線を向けると突然オークの死体は周囲に飛び散っていた。
「グオー!!」
「なんじゃ!」
そこには他のオーク達より一回り大きなオークが立っていた。
「オークジェネラルじゃ」
オークジェネラルは、オークの上位種でオーク達の指揮を握っていることが多い。
オークジェネラルの咆哮に冒険者達は気を取られていた。
そのため生き残っていたオーク達は北へ飛び立っていた。
「皆一度下がるのじゃ」
「グオオオオォォォ!」
オークジェネラルは仲間のオークを投げつけていた。咄嗟に避けようとしたがあまりの数に冒険者達は飛ばされていた。
「グオオオオォォォ!」
オークジェネラルが叫ぶとわずかに生き残っていたオーク達は集まってきていた。
「オマエラコロス!」
片言で何かを話すと近場にいたオークを手に取り捕食しだした。
「やつはなんなのじゃ」
言葉を話す魔物に驚くと同時にオークジェネラルの能力に驚いた。
捕食することでオークジェネラル自身の傷が癒えていたのだ。
「グォー!」
オークジェネラルの咆哮で冒険者達の体が竦むと目の前にいたオークジェネラルは消えていた。
冒険者達が辺りを見渡しているとカタリーナの声が聞こえた。
「上なのじゃ!」
上空には腕を大きく振り上げたオークジェネラルがいた。
「ぐわぁ!?」
カタリーナの声に反応出来たものはすぐに避け切れたが、ランクが低く実力がない冒険者達は反応することが出来ないでいた。
「アースウォール」
カタリーナは飛ばされた冒険者達とオークジェネラルを隔てるために魔法を唱えた。
「マスター大丈夫ですか?」
偵察部隊のリーダーは片膝を立てカタリーナに声をかけた。
「ガリックは偵察部隊全員に伝えるのじゃ。各々ハワード、王子二人、マルクスに奴らの能力と親玉は北にいると!」
「はぁ!」
ガリックは自身のやることを理解するとすぐに消えた。さすが冒険者ギルドで偵察部隊を任されているだけの手腕だ。
「さぁ、続きを始めるのじゃ」
カタリーナは飛ぶとそのまま姿を消した。
「ナッ!? ドコダ!」
「あはは、このスピードについて来れないならまだまだなのじゃ」
「ハッ!?」
カタリーナの声はオークジェネラルの背後にあった。
しかし、オークジェネラルが振り返る頃にはカタリーナの姿はなかった。
「遅いのじゃ!」
カタリーナが火属性魔法の呪文を唱えるとオークジェネラルを中心にファイヤーボールが数十発出現した。
「コンナモノ」
オークジェネラルはその場でしゃがみ込み、背中にある翼を使い勢いよく上空に大きく飛んだ。
さっきの突然姿を消し上空から攻撃してきたのも、翼を利用して急上昇したのだろう。
「ハハハ、コレデワタシハ――」
そのまま羽ばたいて北に逃げようとしていた。
「あっ、そういえばこの魔法追尾式なのじゃ」
それでもカタリーナに焦る姿はなかった。
ファイヤーボールは飛び上がるオークジェネラルを追尾していた。
逃げ切れたと思ったオークジェネラルは止まり、下に目線を向けるとそこにはさっきよりも大きく膨れ上がったファイヤーボールが目の前まで来ていた。
――ドゴオォーン!
オークジェネラルに当たったファイヤーボールは重々しい響きとともに爆風で辺りの木々は飛ばされていた。
そのまま地面に向かって落ちていくとカタリーナはさらに畳み掛けた。
「アースウォールからのアースニードル!」
オークジェネラルが地面に落ちた瞬間に、土属性魔法発動させた。
回りに土壁が出現し敵を閉じ込めたのだ。
「グォー!!」
「アースニードル! アースニードル! アースニードルー!!」
はじめはオークジェネラルの叫び声が聞こえていたが、次第に声は弱まり壁を叩く音も無くなっていた。
「えっ……えげつねぇ……」
「ふぅ! これでいいじゃろ!」
魔法を解除すると他の冒険者達は引いていた。
「あの……マスター……」
冒険者ギルドで働いているスタッフが声をかけた。
「ん? なんじゃ?」
「せっかくの素材が台無しでは……」
「あー、そういうこともあるのじゃ」
カタリーナは消え去った土壁の方を見ると、そこには身体中に穴が空いたオークジェネラルの姿があった。
「さぁ、ハワード達がいる西に向かうのじゃ! 怪我をしている者は先に救護施設に向かってケント達に治療してもらうのじゃ」
オークジェネラルに飛ばされて、戦えなくなった冒険者は数人いた。
その場で怪我人を救護施設まで運ぶ人を数人選び、カタリーナ達はハワードがいる西側に向かう班と救護施設に向かう班と分かれた。
「では、向かうのじゃ」
敵を倒したカタリーナ達は西側に向かった。
「はぁー、残された私達の方が大変じゃんか……」
今回のオークは特殊なためどうしてもギルドに持って帰りたかったのだろう。
救護施設に向かうように指示された、冒険者ギルドのスタッフは魔法を発動させてオークとオークジェネラルは別空間に仕舞い込んでいた。
「では、私達もケントくん達のところに戻りましょうか」
動けない冒険者はいなかったため、彼女を先頭に救護施設に戻って行くのだった。
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