第206話 どいつも同じなのか?
元々森と馬車が通るために舗装された道の間に野営地があり、今回はそこを待機場所として使う予定になっている。
俺達は馬車から降りると、そこにはお馴染みのメンバーである破滅のトラッセン達もいた。
基本的に仮冒険者以外は強制参加の依頼になっているようだ。
「ケント達は子供達を見ててくれ。少し救護施設の場所を確認してくる」
今回俺達以外の仮冒険者達も参加しているが基本的に関わろうとする人はいないようだ。
まぁ、俺達異質だからな……。
マルクスは他の冒険者に救護施設のテントの場所を聞きに行った。
「わしをこんなところで治療させるつもりなのか!」
「いや、これでもしっかりした作りに――」
俺は声がする方に向かうとそこには王城で働いている貴族より煌びやかな格好をしたふくよかな男がいた。
この間の男と同様、聖教ギルドに所属している人達はみんな似たような見た目をしているのだろうか。
その男は大きく手を振り上げた。
――パチン!
説明をしていた男におもいっきり手を振り下ろしていた。
「私を侮辱するつもりか!」
叩かれていたのは冒険者ギルドで働いている職員だった。
それでも職員は説明し続けると怒りながらどこかへ行ってしまった。
「おい、どこに行ってたんだ」
マルクスに声をかけられ俺はビクッと驚いてしまった。
「マルクスさん……」
「あっ、あそこは近づかないほうがいい。聖教ギルドの持ち場だ」
その後横暴な男は聖教ギルドから派遣された人で、今回協力してもらう予定の人だと説明された。
「俺達の救護施設はあっちだ」
マルクスに言われるがまま付いていくと先程あった救護施設より小さいテントがあった。
それでも大人が何人も寝れる場所は確保できている。
「さっきのところよりは小さいがよほどのことがない限りは大丈夫だと思うぞ」
今回は前回のことも踏まえて過剰に戦力を用意している。
よほどのことが起こらない限りは俺達が最前線に出ることはないだろう。
「じゃあ、俺は話し合いに行ってくる」
マルクスはこれから始まる話し合いに向かった。
「ひとまずみんな呼んで一通り準備でもしておくか」
俺も異世界病院のメンバーを迎えに戻った。
♢
俺は異次元医療鞄から薬や包帯などを全て取り出した。
薬は事前にメリルに頼んでいくつか用意してもらった。
「お兄ちゃんこれはここでいい?」
「そこで大丈夫だよ」
「わかった! 私でも大丈夫かな……」
今回はアリミアも仮冒険者ではないがついて来ている。
アリミアは今までスキル【看護】を使う機会がなく、スキルの表記を偽ることができるが看護らしいスキルが発動できていなかった。
「きっと大丈夫だよ! あれだけ包帯を巻く練習もしたんだし」
俺はアリスに包帯の巻き方を事前に教えていた。
異世界病院に所属している同じ看護スキル持ちの子ども達は、包帯を使わせるとスキルが発動するようになっていた。
しかし、アリミアのスキルは特殊なのかステータス表記がラルフとガレインの力を使っても表示されなかった。
スキル発動に何かしら心意的なところも関係しているのだろうか。
確認できたのは医療ポイントが常に0のままということだけだ。
「まぁ、気楽にやっていこう」
「ラルフ兄ちゃん……」
「そうだよ! 今回は誰も傷つかない方が良いだろうしね」
ラルフとガレインもアリミアのことを心配している。
「おーい、準備できたか?」
「あっ、終わりました! 会議はどうなりましたか?」
「出発は明日の明朝に決まった。なぜか今魔物達の進軍が止まっているらしいからな」
魔物達の進軍はあれから止まり、今はその場で止まっているらしい。
「今のうちにゆっくりしておこうぜ。あっ、他の冒険者達がケントのご飯を楽しみにしていたぞ」
笑いながらマルクスは救護施設から出て行った。
「さすが冒険者達だよね」
「緊張感がないというのかそれだけケントのご飯がすごいのか……」
「きっと両方ですね。マルヴェイン兄さんもケントのご飯食べたかっただろうな……」
ガレインの一言で俺の背筋は一瞬ひんやりした。ここまで来てゴリラの食事係は遠慮したい。
「ある意味こっちでよかったよ。ご飯でも作りにいこうか」
俺は忘れていた。こっちにはマルヴェインとは違うタイプの大食いがいたことを……。
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